無限の肯定に満ちた女性讃歌『JUNO』
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エレン・ペイジを一躍スターダムに押し上げた、アカデミー脚本賞受賞作品。
ボーイフレンドとのたった一度のセックスで、望まぬ妊娠をしてしまった16歳の高校生ジュノ。堕胎に抵抗のあった彼女は、里親制度を利用して生まれてくる赤ん坊を里子に出そうとする。やがて理想的に見えるカップルを見つけたジュノ。やむを得ず協力する両親と友人に囲まれて、出産までの8ヶ月が始まった……。
『ローラーガールズ・ダイアリー』を先に観てしまった僕ですが、
http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100626/1277479237
ここでのエレン・ペイジ絶賛は、ほぼこの映画にも当てはまる。んぐぐぐぐ、何という……。脚本の軽妙さもさることながら、二言目には「ク〜ル」と口にする主人公の才気と軽さを表現するマシンガンのようなトーク。何分でも独演会ができそうだ。パイプをくわえるふてぶてしい表情、似合わないグラサンをかけタウンページをめくる手つき、そこに表現された「ク〜ル」志向(それは変わり者扱いされながらも独立独歩する、不恭の精神だ)。その裏側にある思春期の弱さと無知さを乗り越え、少しずつ成長して行く姿が素晴らしい。
『ローラーガールズ・ダイアリー』でもあった、ポリボトルからがぶ飲みするシーンと、ファッキューのサインが今作にもあった。いや、今作でこの絵面の圧倒的な魅力を観てしまったら、そりゃあドリュー・バリモアも自分の映画に使いたくなるよね。あと、フード付きパーカーをかぶった姿が異常に似合うんだけど、これも『ハード・キャンディ』で発見されたものだろうか? また遡らねばなるまい。
う〜む……しかしもう……なんか存在そのものがずるいね! 画面に現れただけで、その場にあるものを全部持って行ってしまう。逆に言うとこの煌めきを活かせないのは演出がダメというしかないね……。
テーマ的には「十代での妊娠」を「悪い環境」とする声を、バッサリと「偏見」と切って捨てるシーンですっぱり片がついてるね。里親制度に出して何が悪い? つべこべ言わずに協力しろ、関係ねえ奴は口を出すな。「説教」は結構!
状況設定はぬるい目と言っていいだろうが、「困難」としてヒロインの前に立ちはだかる人物を配置し、これが「現実」だとしたり顔で言ってのけることの欺瞞に、作り手は気づいているのだろう。その「困難」も「現実」も、生み出してるのは、そこで観てるおまえの偏見だ!
さて、妊娠させた相手の男の顔がなかなか出ないので、このまま「非在」の人物として登場しないのかと思ったのだが、ちゃんと出てきました。
……出た! マイケル・セラ! っていうか、スコット・ピルグリム……! 信じられないぐらいのボンクラフェイス、全身から漂う圧倒的なまでのヘタレオーラ……! 弱そう過ぎる……! いや、このキャラクターにちょっとでもマッチョイズムが感じられ、少しでも頼れそうな風貌であったりしたら、「男は何をやってるんだ!」という方向へ話が流れてしまう。「いや、出産に男なんて関係ないんだよ」ということを堂々と言ってのけた今作において、このテーマを語るためには、彼はこのどうしようもなく頼りなく力もないただの高校生でなければならない……。
でも、それでいいのだ。これは男性にとっても解放だ。オタクでも弱くても甲斐性なしでもいいんだ。いい歳して夢を追ってホラー映画見てマンガ読んで音楽作っても、それでいいんだ。ここにあるのは「肯定」だ。
出産は女性のもので、産む女性に選択権がある。それらは結婚とも相手の男性とも、何ら関係がない。これは、そのことを認めようという話だ。僕のような男性も、女性も、ひいては社会全体が、だ。そういうライフスタイルを「肯定」しよう、ということだ。
それで「父親」は無価値になるのか? いいや、これは「排除」ではない。関わりたければ関わればいいのだ。ただし、義務や役割としてではなく、だ。普通に観れば、この作品が「結婚」も「セックス」も「堕胎」も、何一つ否定や排除をしていないのがわかるはずだ。
シンプルなストーリーだが、登場人物がいとも容易く「肯定」してみせる一つ一つが、それを肯定し切れない我々一人一人の偏見を暴きだす。「何がいけない?」「どうしてダメなの?」と考えて見る良い機会になるだろう。
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