『人造救世主』小林泰三

人造救世主 (角川ホラー文庫)

人造救世主 (角川ホラー文庫)

 角川ホラーから、久々の新刊。


 古都の寺院を襲う謎の集団……。拝観にきていたひとみとジーンは、発火能力を持つその集団に発見され、襲われてしまう。間一髪のところを助けたのは、カウボーイハットの謎の男・ヴォルフ。かつてはその集団の一人だったと言われるヴォルフは、なぜ彼らと戦うのか? そして集団の目的とは? 巨大な陰謀が動きだし、ひとみとジーンもそれに巻き込まれて行く……。


 文庫書き下ろしか〜、内容も薄めかな? 表紙もラノベみたいだし……。同じく漫画家が表紙書いた牧野修『無魘祓い』も、ややラノベ風味だった。最近のホラー文庫の路線か……?


 とまあ、一見した印象は良くないんだが、当然内容はひと味違う。mixi日記でも特撮やスーパーヒーローものについて脈絡なく語っていたように見えた作者だが、それらのエッセンスはすべてこの作品に取り込まれていたのだ!
 組織に「失敗作」のレッテルを貼られた改造人間が主人公、という出発点からもうコテコテ! これは『AΩ』の系譜につながる作品か?と思いきや、内容はパロディ的な設定を逆手に取って突っ走って行く。
 戦況の説明とか……いちいちフルネームを呼ぶとことか……最初は「説明台詞多過ぎで辟易」と思いかけたが、これはすべて特撮作品、あるいはジャンプのバトルものマンガにありがちな説明台詞のパロディなのだ。後半はまるでゲームの攻略プレイのような状況も加味され(オレは『バイオハザード』かと思ったが、あの川みたいな状況をああいうやり方で攻略するゲームは、色々あるかな?)
 他にもあれやこれや、さらにオレが知らんだけで、「あ、これはアレだろ」みたいなネタは相当入ってるんじゃないか。
 敵の怪人が、過去の偉人の遺伝子を持っている、という設定も「厨二臭くて」特撮番組みたいで大変良いのだが、それと同じく偉人の遺伝子を持った主人公の正体には、びっくり仰天。さすが小林泰三、こんなことを思いつくのはアンタしかいねえ! ましてそれがインディ・ジョーンズ風とかありえんだろ!


 そんなこんなでオチが可哀想すぎるのだが、帯にはシリーズ開幕と書いてあるので、続きにまた期待したい。まあこの大風呂敷を畳まないのも、それはそれで小林泰三らしいが……。


 あ〜、面白かった……。
 読み終わって気づく。ところで、この表紙絵……誰? え、メリー?

ΑΩ(アルファ・オメガ)―超空想科学怪奇譚 (角川ホラー文庫)

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