『薔薇を拒む』近藤史恵

薔薇を拒む

薔薇を拒む

 今年三冊目の新刊!


 施設で育った少年、博人は、似た境遇である孤独な少年・薫と共に、富豪の持つ屋敷で働き始める。外界から閉ざされた屋敷に住むのは、療養中の妻と、美しい娘・小夜。謎めいた母子に仕える二人は、やがて小夜に恋心を抱く。だが、血なまぐさい殺人とともに、屋敷に秘められた過去が暴かれる時、さらなる悲劇の幕が上がる……!


 ちょっと『ガーデン』を彷彿とさせる? 古くからのファンには懐かしさも感じる作品。だが、いかにも若くして書いた作品だった『ガーデン』よりも数段まとまり、整理された佳品に仕上がっている。
 登場人物の心理に秘められた謎の鋭利さは類を見ず、仕組まれた仕掛けは、解決にあたって細密にその闇を浮かび上がらせる。この異様な心理描写、『サクリファイス』に続き、そろそろ「近藤史恵節」とでも言えそうな領域に達しつつあるな。
 なよなよと弱そうな主人公だが、本気になったら恐ろしいというのも、作者の描くパターンだ。これもしびれる。


 ファンなら充分楽しめる一本。初めて読む人には、もう少しマイルドな口当たりのものをオススメするが……(笑)。

ガーデン (創元推理文庫)

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サクリファイス (新潮文庫)

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