「アメリカン・ギャングスター」
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デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウの競演というと、アカデミー賞主演男優賞を争った二人ということもさることながら、「バーチュオシティ」以来、12年ぶりということの方が、個人的には感慨深い。
イタリアンマフィア全盛の時代を打ち破り、ハーレム出身の黒人として暗黒街を牛耳った麻薬王と、その暗黒街と通じて腐敗しきったNYPDにおいて唯一わいろを受け取らずにその体制を破壊した刑事。犯罪者と警察官という、一見対照的な立場にいるようでいて、どこか似通ったメンタルを持つ二人を軸に、70年代アメリカの暗黒面を描き出す。
描こうと思えば、双方いくらでもヒロイズム溢れる存在に仕立て上げられただろうが、リドリー・スコットの乾いた目線は、一歩も二歩も引いた場所から、膿み腐れた組織はもとより、ともすれば独善という落とし穴に陥りそうになる二人の主人公の、赤裸々な姿さえも暴いていく。とりわけ、「好き好んで」麻薬を常習する者たちへの、まるで興味がないといわんばかりの突き放した描写は印象的である。二人の主人公は、彼らに対して何も悩まない。麻薬王にとっては「顧客」だが、刑事にとっても彼らはやはり「犯罪者」という「顧客」に過ぎない。
世界はすでにどうしようもない存在であり、彼等はそれを変革しようとするよりも、単に自らの「筋を通す」ことのみに腐心しているようにも見える。そして、映画は最後までそれらを肯定することはない。なぜならばこれは実話であり、人の人生や歴史を「評価」すること自体は映画の仕事ではないからだ。
「職人」リドリー・スコットのこだわりが透けて見える秀作。個々の描写自体や、この時代に寄せる情念に関しては、とりわけブラックムービーなどにこれを上回る作品があるのではないか、とも思うのだが……。
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