『インビクタス』


 イーストウッド監督、最新作。


 二十数年に渡る投獄生活から解放されたネルソン・マンデラは、南アフリカ初の全人種選挙によって大統領に選ばれた。今だアパルトヘイトの爪痕の残る国を一つにするため、開催予定のラグビー・ワールドカップに目を付けるマンデラ。解体寸前の自国代表チームを救ったマンデラは、彼らに優勝を託す……。


 イーストウッドにとっても初演出だった大群衆シーンだそうだが、そこへ出て行くマンデラモーガン・フリーマン)の満面の笑みが印象的。まさに超笑顔。最初はモーガン・フリーマン大統領にしか見えなかったのが、段々とマンデラ大統領に見えて来るから不思議だ。
 ベタな笑いまで盛り込み、実に正統派の娯楽映画。アパルトヘイトに関してはかなりあっさりした描き方なので、事前に基礎知識ぐらいは予習しておいた方が背景が理解しやすいかも。アメリカ人ならば、ある程度自分に引き寄せてわかるんだろうが。しかし、近年、どこかやるせない後味を残す作品を作ってきたイーストウッドのフィルモグラフィの中では、少々薄味の部類。もう少し居心地の悪い気分が残っても良かったと思うんだが、なんせ本当に優勝しちゃってるし、実際にマンデラは名言連発だからなあ。


 黒人出てね〜じゃん、と『父親達の星条旗』をスパイク・リーにディスられたイーストウッドだったが、今回はそれへの意趣返しか? そんな差別意識なぞ微塵も感じられない生き生きとした演出が素晴らしい。

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