『ラブリーボーン』


 ピーター・ジャクソンがベストセラー小説を映画化。


 スージー・サーモンは14歳の時に殺された。悲嘆にくれる家族を、あの世とこの世の狭間で見守るスージー。スージーを殺した男は、家族の側に今もいる。抑え切れない衝動を抱えながら……!


 『キングコング』以来のピーター・ジャクソン。いや〜、ちょっと期待してたんだけどな。死者は生者と交感できない、というのが大前提であり、作品のテーマであるのだが、そのせいで同時進行するあの世のスージーとこの世の家族のパートが、一向に絡まない。その絡まなさがもどかしく物悲しい……のではあるのだが、ストーリーが転がって行かない。サイコ・スリラーの要素がどうも生きていないのだ。
 「恨みを晴らすぜ」という展開に転がっていかない一方で、死者にはさらに先の天国へ行くべきだ、という目的が示唆される。このあの世の映像が……陳腐だ……。なんじゃこりゃ? CGの嘘くさい自然が天国?
 かように散漫ながら、個々のシーンの演出は、ピージャクらしいダイナミックさ。本来、どんなジャンルでも撮れる監督なのだ。が、何が言いたいのか突き詰め方が足りないストーリーに、退屈だけが募る。凡作であった……。


 しかし、


 お父さん……マーク・ウォールバーグ
 お母さん……レイチェル・ワイズ
お婆ちゃん……スーザン・サランドン


 ……最強だね、この家族……。まとまりには欠けるが、個々の人選は最高。スーザン・サランドンは、今までずっと「アメリカのマミー」として君臨し続けてきたが、年をとっても「アメリカのグランマ」なんだね……!

ラブリー・ボーン (ヴィレッジブックス)

ラブリー・ボーン (ヴィレッジブックス)