『正義のゆくえ』
移民局の捜査官を主人公にした、社会派映画。
ハリソン・フォードを主役に据えているが、彼の登場部分は1パートに過ぎない。移民局の捜査官、それによって逮捕されるメキシコ人の不法入国者、イラン系の一家、韓国系の一家、オーストラリアからの不法就労者と、それに関わるグリーンカードの審査官、移民や不法滞在の外国人全てに関わるソーシャルワーカー……。
多くの登場人物が錯綜し、身近なところでつながっていく。『そんな彼なら捨てちゃえば?』でも見られた構成だが、多様なテーマを抱えたキャラクター達が実は知り合いの知り合いだった……という展開は、ややリアリティを欠いて感じられる。ただ、これはこのテーマを、2時間という時間組みの映画と言う媒体で成立させるための苦肉の策なのだ。
少々盛りだくさん過ぎる感もあるものの、どのキャラクターのエピソードも重要なものとして感じられるのは、それだけアメリカの移民、不法就労者の問題が多様な問題を孕んでいることの証左である。作者としても、どのエピソードも削りたくなかったのであろう。
最近、在特会による秋葉原のデモの動画を見て、その際に行われた暴力行為の被害者である人の書いた「日の丸の暴力」という言葉を読んだ。正直、その時はぴんとこなかった。だが、この映画で描かれている、国籍を盾に取って行われている数々の差別と暴力、「持てる者」による搾取と偏見を見て、いくつかの場面で象徴的に掲げられた星条旗を見て、日の丸もまた同じ機能を果たしているということが感じられた。
この映画は、単に「”自由の国アメリカ”の移民、不法就労者の問題」を描いただけのものではない。”平和国家日本”と日本人にとっても、決して他国の問題などではないのだ。