2009/08/11 K-1WGP世界最終予選 試合感想

 世界戦略の第一歩は厳しい船出に!
 ベールを脱いだ未知強たちとは……!?

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▼第1試合 FINAL16 QUALIFYING GP リザーブファイト 3分3R延長1R

プリンス・アリ(イラン/イラン大誠塾)

VS

悠羽輝(和術慧舟會DURO)

 一時期、シング・心とプリンス・アリを勘違いしていたのは内緒である。
 ……腹が出てる方がアリ! リーチの長さを利してパンチを当てるアリ。フックも当たるし、一歩入られたタイミングでのアッパーも意外に小器用。しかし悠羽輝もローで食い下がる。
 徐々にローの効いて来たアリはパンチも手打ちになり、棒立ちに。しかしあれだけパンチが当たってたのに、倒せるような気配はなかった。この展開は必然か。完全に止まってしまい、こちらも息切れした悠羽輝のラッシュを浴びてKO。しかしスタンディングダウンというところがしょっぱい。
 いや〜つまらなかったな……。


▼第2試合 FINAL16 QUALIFYING GP 1回戦 3分3R延長1R

メルヴィン・マヌーフ(オランダ/マイクス)
VS
ラマザン・ラマザノフ(ロシア/チーム・ミスター・パーフェクト)



 ローで距離を取ってダメージを蓄積させ、接近されたら潜ってクリンチのラマザノフ。まあ当然の作戦か。ここであせって飛び込むとマヌーフもカウンターをもらうかもしれない。速いと言ってもフックだからな。しかし、微妙にだが距離が縮まり、マヌーフラッシュ! ラマザノフもきっちりディフェンス……ディフェンスできなかった。テンプル辺りに入った一発でラマザノフは腰砕け。さらにラッシュを浴びてあえなくKO!
 うーん、相手が悪かったのと、作戦を徹底するだけの精神力と忍耐力に欠けたか。あのクリンチはそのうち注意が出たと思うし、時間の問題だったかもしれないが……。それなりに切れはありそうだっただけに惜しい。


▼第3試合 FINAL16 QUALIFYING GP 1回戦 3分3R延長1R
ダニエル・ギタルーマニア
VS
ジョン・ラブ(イギリス/タズ)

 右ロー連発でラブ悶絶! 止めは左フック一発! ラブよえ〜! こんな奴呼んでんじゃね〜よ! あ〜ギタはバランスは良かったね。えらく実力差があったなあ。ロバーツならもう少し食い下がっただろうか?


▼第4試合 FINAL16 QUALIFYING GP 1回戦 3分3R延長1R

セルゲイ・ラシェンコウクライナ/キャプテン)
VS
セバスチャン・チオバヌルーマニア/ローカルコンバットチーム)

 チオバヌは接近してフックとアッパーを振るい、ラシェンコは蹴りで距離を取る……。いやいや、ミドル重いけど、ラシェンコの決め手はフックとボディブローでしょう。おかしいな、ポーランドじゃもっと切れのあるパンチを出してなかったか? 後で魔裟斗さんが「練習してないよ」と言ってたが、確かにコンビネーションが試合向けに練り上げた感じがしない。雑だ……。いや、ポーランドじゃもっと良かったって。
 お互いキレがなく、倒せる気配もないままに技の出し疲れで消耗していく感じ。つまらない時のヘビー級の試合の典型。
 蹴りでダメージを与えたラシェンコが取ったが、その蹴りも重いことは重いが、ミドルなんかは後半、いつ左ジャブを合わせられるかわからんぐらいスローになってしまっていた。
 おかしいな、ラシェンコは今回は昨日5試合ぐらいやってきたんじゃないの? 時差ボケか?

▼第5試合 FINAL16 QUALIFYING GP 1回戦 3分3R延長1R
リコ・ヴァーホーベン(オランダ/チーム・リコ)
VS
ブリース・ギドン(フランス/メジロ/Le Banner X tream Team)


 おおおおおおお、これが20代の活きのいい選手の試合なのか? なんというスピードのなさ……(涙)。イケメンと言われたリコだが、動きが全然冴えない。ギドンは自分の距離をキープしてローから前蹴りで突き放す。お互い単調なコンビネーションを出す展開が続く。ん〜、なんつうかね、MAXだったらこの攻防でもそれなりに映えるスピード感があるけど、ヘビー級で、しかも中途半端な技術でこれやられてもね……。
 大きな山もないままギドンの判定勝ち。こっちのブロックは欠場者いないのに、壮絶につまらないぞ……?

▼第6試合 FINAL16 QUALIFYING GP準決勝戦 3分3R延長1R
悠羽輝
VS
ギタ


 マヌーフがスネを痛めて欠場。代役は悠羽輝……。ギタはこれで二戦続けてリザーバー相手。しかも今度はヨロヨロ……。いや〜普通に一番強い選手に運まで転がり込んでは手のつけようがないね……。右ロー、左ミドル、ハイで滅多打ち。悠羽輝は最初のローからもう立ってるのがやっと。
 あ〜あ、ロバーツとマヌーフがやってれば……。


▼第7試合 FINAL16 QUALIFYING GP準決勝戦 3分3R延長1R

ラシェンコ
VS
ギドン


 ちょっとパンチの出始めるラシェンコ、ようやく本領発揮……ボディを直撃させダウンを奪う。これはちょっとカウンター気味になったか。しかし追撃で攻め切れずバテバテ! 体力ね〜と笑われる……。
 2ラウンド、ギドンのハイキックの直後にラシェンコの振り回すフックが直撃。ダウン後に今度はワンツーで決めた。
 いやしかし、バテ過ぎだろ……。決勝に上がったが、反対のギタが圧勝ペースなので、もう優勝の望みなんてまるでなし。と言うか、運命がどう転ぼうと優勝してはいけない選手、予選突破に相応しくない選手というのがいて(例えば金さんに雑魚扱いされた藤本……)、今日のラシェンコはまさにそれ。ポーランドの勢いがまるでないよ。やっぱり前日三試合ぐらいして、車で日本に来るべきだったな。早く北海道←北方領土←ロシアに橋を架けよう。


▼第8試合 スーパーファイト 3分3R延長1R
京太郎(チームドラゴン/第2代K-1ヘビー級王者)※前田慶次郎から改名

VS
ヤン・ソウクップチェコ/極真会館/第9回全世界空手道選手権大会準優勝)


 トーナメントが大コケムードで、こうなると期待できる試合はこれぐらい。
 ソウクップが短いフックとローを空振りしまくる……という最悪の展開を予想してたが……いや、前田が距離を大きく取ってるぞ。蹴りもパンチも思い切って踏み込んでくる。これはいいかも。ソウクップはワンツーとフックを振るい、距離が詰まると組んでしまう。テイシェイラ、アーツも多用したが、ややかけ逃げに近いクリンチワークだな。これ、押し返した方が被弾しやすくて不利だよね。つかんで膝が手っ取り早いのだが、こう上体を起こしたままくっつかれるとなあ。
 しかし前に出るタイミングに合わせ、京太郎もカウンター狙い。なんどか顎をあげさせる。しかしソウクップもフックをヒット。
 2ラウンド、前に出た京太郎は被弾も増えるもののカウンターのタイミングは合ってきた。相変わらず組まれるが、ペースは変えない。やや根比べになるかと思ったが、京太郎の右フックがカウンターでズバリ。ソウクップはダウン!
 最終も逆転を狙って飛び込んだソウクップに右クロスを打ち込み、京太郎がKO勝利。いや、なかなか良かった。初参戦の相手と言えど、武蔵なら間違いなく微妙な判定に持ち込まれて、納得いかなげに首を振ってたとこだろう(試合内容に納得いかないんじゃなくて、なんでもっとポイント大差じゃないんだよ、という納得のいかなさ)。


▼セミファイナル(第9試合) 特別試合 特別ルール 3分3R延長1R

西島洋介(AK/元ボクシングWBF世界クルーザー級王者)
VS
ピーター・アーツ(オランダ/チームアーツ)

 アーツはきっちりジャブで距離を計って右ロー。最初から3発ヒットし、これで終わってしまうんじゃないかとヒヤヒヤしたぜ(笑)。しかし西島はタフで倒れない。確かにカットしてないが、来るのは見えてるから反応して踏ん張ってるので、いくらか威力を殺してるのかな。
 が、こうやって序盤見てる時点で、もう西島の勝ちはあり得なくなった。コヒさんは「自分がやられたら一番イヤな対策」は授けなかったと見える……そんなもん、最初からラッシュに決まってるだろ!
 アーツは安全な距離をキープしてるな……。こないだUFCでアンデウソンさんがすご過ぎたけど、アーツも近い事をやってるよね。ローもハイも距離が絶妙で、近づかれたら膝で迎撃。自分でワンツー打って入ったら、そのまま身体ごとロープにもたれてしまう。体重差もあるし、西島に押し返すだけのパワーはなし。

 ここからは、「ガンバルマンコンテスト」の時間だ。このコンテストは、打たれても耐えれば耐える程、評価が上がる仕組みになっている。途中で挑発を入れて「もっと打て!」と要求するとさらに高得点が入る(笑)。判定まで行けば満点だ! 頑張れ西島! 残念ながら3ラウンドで力尽きたが、あの悔しそうな頭ぶつけるアクションの芸術性とかを考慮しても、80点ぐらいは固いな。ここまで頑張れば立派な「ガンバルマン」の一員だ。
 格闘家に、このガンバルマン要素は不可欠ではあるんだけど、しかし立ってるだけで本当にコンテスト化してしまっては、それは格闘技でもなんでもなくなってしまうんだよなあ。あの白々しいパフォーマンスがウケるのも今回限りだと思うけど。


▼メインイベント(第10試合) FINAL16 QUALIFYING GP決勝戦 3分3R延長2R

ギタ
VS
ラシェンコ


 ギタが淡々とローキックを叩き込んで終了〜。ラシェンコも抵抗したが、まるで通用せず。万全であっても、大して結果に変わりはなかったろう。あのロー蹴られてたら、とてもボディ打てる距離に入れそうにないし、その「万全」にしてもヨーロッパ予選の時ならともかく、今日の開始時点ぐらいの調子では……。

 いや〜、ギタが圧倒的に強かったおかげで、なんとか格好のついた形のトーナメント。Bブロックの低調ぶりには大きく期待を裏切られた。

 K-1が世界戦略、WGPの隔年化を掲げた。それは世界には多くの未知の強豪がいて、それを絞り込むのには1年以上は予選に費やさないといけない……というような理由だったが……ほんとなのか? 若手の未知の強豪を引っ張って来て、ほぼ全員が見事にコケた。ギタを除いて迫力も期待感もまるでない選手ばかり。マヌーフ除外、アリを入れて8人、その中で「当たり」は一人だけ……これが実態じゃないのか? ヨーロッパ全域に、プロの資格を持ってるヘビー級キックボクサーは何人いるんだ? 100人? 200人? 海外大会を調べてる人には、ぜひ統計してもらいたいが……今回出てる面子は、だいたい8人トーナメントで優勝か準優勝するレベルなわけで、ざっと全キックボクサーを4〜8で割れば出る数字。で、ギタクラスはさらに8分の1……。
 そんな大規模な予選やる意味があるのか? 開幕戦にヨーロッパ枠を増やして、8人トーナメントを2〜4やれば、あっという間に実力者は絞り込まれてしまうぐらいの層しかないんではないか? 実際、そうしろという意見は何年もK-1ファンから出ていたと思うが、それは、マニア筋が出て欲しい選手を並べた結果、実はその程度で充分、という裏の計算があったのではないか。

 K-1の競技者人口を広めるために、門戸開放と予選の大規模化は必須……一見、筋は通っているが、中途半端な兼業選手を集めてダラダラしたトーナメントをやる以前に、もうちょっとやることがあるんじゃないかな。選手を淘汰し、底上げと均質化を計り、「これがK-1のプロの試合です」というものを予選から見せてくれるようにならないと、意味がない。枠をただ広げても、人数合わせが増えるだけだろう。その「人数」、そこにまつわる人、物、金を稼ぐのが目的だと言うならば、もう末期だ。世界戦略も絵に描いた餅に終わるだろう。そうではなく、本当にハイレベルなスポーツとして根付かせるのが目的だというならば、まずピラミッドの中間ライン、プロとセミプロの区別をきっちりしていかないと、頂点であるはずのトッププロ、王者の価値までも下がってしまう。
 今回の大会を一つの教訓に、来年以降は整備していってほしいものだ。

 あ、念のために付け加えますと、上で書いた「プロ」ってのは、「ガンバルマンコンテスト」の高得点者とは何の関係もないですから(笑)。

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