『ウォッチメン』

 アラン・ムーア原作のアメコミの映画化。


 『V・フォー・ヴェンデッタ』『フロム・ヘル』などがこれまで映画化されたものの、どうも原作者はお気に召さなかったようで。それもそのはず、救いなどなくシニカルに社会を風刺するスタイルが、ハリウッド映画のお天気な方法論に合うはずもない。
 が、この『ウォッチメン』は例外中の例外とも言える傑作に。コミック大好きオタクのザック・スナイダー監督に、ビッグバジェットでコミックのシナリオと描写をほぼ完コピさせるという荒技に出た結果、原作ファンも納得の代物に仕上がった。


 時折あるはっとするような映像も、「ああ、これは原作にあるんだね」と思うと、監督の力量については疑念を抱きたくなるんだけど、まあそれは置いとこう。


 冷戦まっただ中の時代、実際にスーパーヒーローが実在したら、という思考実験によって生み出された本作。覆面を被り犯罪者を抹殺していくも、その行為そのものを違法と判断されて法的に活動を禁止されてしまう彼ら。だが、唯一の超人的能力の持ち主であるDr.マンハッタンだけは、その力を軍事的に利用され、ベトナム戦争をも勝利に導いてしまう。
 正義であろうとも国家に益なき行為は排除され、強大過ぎる力は利用される。その中で、ある者は己の意志を貫こうとし、ある者は闇に身を潜める。そして、やがて起きる彼ら「ウォッチメン」狩りの真相とは?


 これ単品ではちょっとわかりにくいんだが、『スーパーマン』でも『スパイダーマン』でも、他のヒーローものの「公式」を「代入」すればテーマが見えてくる。この歪んだ世で、ヒーローはいかに生きるか、その存在意義を問うた作品。『ダークナイト』を見たら、次はぜひこれを見て欲しいなあ。