『カムイ外伝』が映画化ですってね。
- 作者: 白土三平
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/04/15
- メディア: コミック
- クリック: 8回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
『忍者武芸帳』『サスケ』『カムイ伝』『カムイ外伝』なんですよ。
あんだけ山田風太郎の忍法帖が好きだ好きだ、と言ってる僕なんですけれど、でもやっぱり忍者は白土三平。
なんでかっつうと、山風さんの忍者は特異体質な人ばっかりでね。身体の水分を出してナメクジみたいに縮む忍法、って聞くと、うわスゲエ!とは思いますけど、まあ自分がやろうと思っても無理ですわね(笑)。
その点、白土三平の作品に出てくる忍者は、自分でもなれそうなイメージがある。『サスケ』にある台詞なんですけど、「忍術の基本は「練活」だ」というのがあります。練って活かす……日々の修練、これに尽きるという意味なんですね。鍛え、技を磨けば忍者になれる、というコンセプトで、どの作品も一貫してるんですね。
で、『カムイ伝』において、主人公のカムイは非人部落出身の自分の出生を疎み、強さに憧れて忍びの世界に入るわけです。鍛え、技を磨き、強くなれば認められるという、シンプルな理論。それがあるからこそ、彼は忍者になったわけです。
日常における閉塞感からの脱却、その目標としての「忍者」。それは幼少の僕にとってもわかりやすい価値観でした。
しかし、カムイは抜け忍となった兄弟子や師匠との戦いを経て、親しんだ者をも殺さなければならない忍びの世界に、やがて幻滅を覚えるようになります。掟で人を縛り、命や意志を軽んじる……彼が嫌って出て来た世界の身分制度と何が違うのか?
「これが忍びか……俺の憧れた、忍びの世界だったのか……」
そこで彼は、己を殺し、その日常に埋没することではなく、自らも抜け忍となって過酷な逃避行へ向かうことを選択するのです。
その彼の追忍との戦いを描いたのが『カムイ外伝』。で、これが映画化されれて、この秋に公開されるんですね。
下がそのキャスト。
カムイ/松山ケンイチ
少年時代のカムイ/森田直幸
スガル/小雪
不動/伊藤英明
水谷軍兵衛/佐藤浩市
半兵衛/小林薫
サヤカ/大後寿々花
大頭/鄭伊健(イーキン・チェン)
ツグミ/春名風花
ゲンタ/荒井健太郎
……やめろおおおおおーっ! なんだこのキャストはああああーっ!
カムイと言えば、物凄い美形でしてね、変装の定番はオカマというぐらいの人で。で、少年期から青年期前半にかけて、常に生脚を放り出してるキャラなんですよ。で、サービスなのかなんなのか、折りあらば褌一丁になる。
マツケンは、メイクで何とでもなる顔をしとりますが……生脚出せんのか?
映画は、原作が劇画になってから最初のエピソード「スガルの島」が原案。
漁師の妻となり、小島の漁村に身を隠した抜けくのいちスガルが、偶然に同じ抜け忍であるカムイと出会い、彼を追忍と思い死闘を繰り広げる、というお話。
で、そのスガル役は小雪さん。漫画でもすでに子供が三人いる、という設定で、熟女ですな。年齢的には丁度いいかな……という感じ。
しかしまあ、漁村を舞台に水中戦やったりする関係上、登場シーンはほぼ、腰巻のみで上半身裸だったりするんですよ。小雪さんが乳を出すのかというと……ありえんわなあ……。
キーキャラクターの不動は、荒くれ者の抜け忍集団のリーダー格という設定。豪放かつ残忍な性格で、恐るべき忍びである……って待てよ! なんでこれが伊藤英明なんだよ! あんなつぶらな瞳の奴に、こんなキャラ出来るわけねえだろ!?
いやあ、もうすでにこの時点でイタタタタタタ……というキャスト。
さて、この『カムイ外伝』という作品の魅力は、そのハードかつシリアスな世界観だけでなく、主人公の格好良さを含めたアクション演出なんですよ。
忍び同士の、樹上を飛び回り一瞬たりとも止まる事のない超高速戦闘の表現、そのスピード感と疾走感たるや素晴らしいものがある。その中で秘技「変移抜刀霞斬り」と「飯綱落とし」でもって敵を葬る主人公の天才性、実力の違いの表現……。
ああ……ちょっと今、コミックス引っ張り出してチラ見しただけでしびれる!
これを映像化しようだなんて、普通に考えれば大変な挑戦なんですよ! やる価値のあることだ。……だが……ちゃんとやってるの?……という危惧がどうしても拭えない。なんか……普通の殺陣でお茶を濁してませんか……?
マツケンとか、いくらでもワイヤーで吊るせばいいんですが、果たして小雪さんが乳まで出して吊られてくれたかというと、うーむ、ありえないなあ。
当初スガル役だった菊池”バベル”凛子が、靭帯断裂で降板してるので、それなりにハードな撮影がされていることは間違いないようだが……。
で、脚本はなんとクドカンですよ。
あ〜あ、最近、舞妓やらパンクを題材にして、そのスピリットに切り込まぬファッションだけの映画を撮ってる奴がねえ……。彼にとっては、忍びの世界もファッションなんじゃないですか?
キャスト、アクション、世界観に不安いっぱいな現在、希望を持てるのは……やっぱりストーリーかな……。
スガルの夫の漁師に拾われたカムイはそこに居着き、スガルの三人の子供にも懐かれるわけですよ。で、一番上の娘は作中で初潮を迎え(当時は初潮年齢やや上のはずですから、14歳ぐらい?)、カムイの事を好きになるんですね。
「あたいはカムイのお嫁さんになるんだもん……」
明日をも知れぬ抜け忍の、翳りある横顔に惹かれていく少女……。忍びの宿命を知るが故にそれを恐れる母……。少女はカムイに月日貝と呼ばれる貝を手渡すんですね。太陽と月を別々にして持っていれば、いつか一つになろうとする。
でも、月と日は顔を合わせることはあっても、手を取り合う事は永遠にない……。彼らを待ち受ける残酷な運命とは……。
……泣ける! 痛いぐらいシビアな展開! キャストがあれでも、アクションが鈍臭くても、この重いストーリーを真っ向から描けば、それなりに価値は生まれるんじゃないか?
……でもなあ……まともに映像化したら、余裕でRー15指定だよな、この展開……。とくに子供がムニャムニャなとことか……。
考えれば考えるほど希望が消えて行く『カムイ外伝』映画化!
唯一の希望は、原作ではちょい役だった忍びの頭領「大頭」役がイーキン・チェンなとこか。これはもう、原作にもない超絶アクションを期待するしかない! ……ねえだろうなあ……。
あ〜、オレの大好きなカムイが……忍者が……いったいどんな映画にされてしまうのか……。
なんつうんですかねえ。昔付き合ってたちょっといい女が、目の前でものすごくセンスのない、女なんて金儲けの道具かファッションとしか思ってない奴に犯されてるのを見るような気分?
馬鹿野郎! もう別れたけど、一時の事とは言え大好きで、今でも大切な思い出なんだよ! それを……それを〜っ!
あ〜、ひさびさにキモいぐらいに熱く語ってしまった。
とりあえず、壮絶に失敗して、この「原作レイプ」とでも言うべき流れを断ち切ってくれることを切に願うばかりだ。下手に成功して「柳生編」まで映画化されでもしたら、目も当てられんぞ!