『転生』篠田節子

転生 (講談社ノベルス)

転生 (講談社ノベルス)

 宇山日出臣氏の急逝に伴い、デビューのきっかけを作ってもらった篠田節子が16年ぶりにノベルスで出した作品。


 中国政府による弾圧が続くチベットで、ミイラとなっていたパンチェンラマ十世が突如復活。インドへの亡命か、衆生の救済か、かくして不死身のミイラの珍道中が始まる。


 ノベルスということで「軽め」を意識しているらしく、充分に重いテーマを扱いながらも軽妙な作品に仕上がっている。ただ、能天気なミイラのキャラクターをそのままに、もっと重厚な内容にもできただろうに、フォーマットだけでそれを断念してしまったのはちょっと物足りない。チベットというテーマは、軽く消費してしまうには重過ぎる。
 ただ、リーダビリティはさすがで、ほぼ一気読み。『アクアリウム』『斉藤家の核弾頭』と同じく、悩んだら爆弾を持ち出すメンタリティも相変わらずで、この破壊精神こそが篠田節子なのだ。