『その男、ヴァン・ダム』

 今や47歳を迎えたジャン・クロード・ヴァン・ダムが、自らの役を演じるメタフィクション


 新作では監督と意思が疎通できず、次回作はセガールに取られ、娘の養育権は奪われそうで、おまけに金もない……。そんな笑えない状況にあるヴァン・ダムが、ついに郵便局で強盗を!?


 全編を貫いた自虐的ネタの数々が素晴らしい。あの股割りと己の肉体を常に誇示し続けてきたヴァン・ダムが、そのナルシシズムを捨て……いや、別次元に昇華させたと言うべきか……自らを笑いのめす。


 映画スターに対する人々のイメージ、ファン心理を的確に描きつつ、過ちを犯したスターが社会的信用を失う過程も合わせて表現する。その渦中において、セットの中で浮き上がったヴァン・ダムが、自らの俳優としての原点であった「カラテ」と、ハリウッド、幾度もの結婚、そして薬物中毒までを赤裸々に語る。
 クライマックス後のやや強引な展開からも、明白な意図が見て取れる。それは……贖罪だ。


 肉体の限界を迎えたヴァン・ダムが、ついに到達した新境地。
 ファンは……今でもまだファンな人は……必見な一本。