『チャイルド44』T・R・スミス
- 作者: トム・ロブスミス,Tom Rob Smith,田口俊樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/08/28
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べ、別に「このミス」で一位になったからって読んだわけじゃないんだからねっ!? その前から借りてたんだから! 勘違いしないでよね!?
スターリン圧政下で捜査官として働いてきたレオは、モスクワで起きた少年の死を、遺族の殺人であるとの訴えを無視し、事故として握りつぶす。だが、狡猾な部下によって陥れられた彼は、身分を剥奪され僻地へと送られる。そこで彼は、かつて握りつぶした少年の事件と酷似した、新たな遺体に遭遇する……。
スターリン時代、国家と個という関係性を最重視する価値観の中、国家の秩序を乱す「殺人」という行為は、すべて早期に解決され処理される。捜査の遅延、犯罪の拡大などは、そもそもこの社会では起こりえない……起こってはならない。多くの地域で起きた同一犯による事件は、それぞれが個別の事件として、個別の「犯人」を逮捕し、結審していく。
当時のソ連の体制と、その盲点をくぐるようにして展開される連続殺人、その矛盾を目の当たりにすることによって、自らの価値観を崩壊させ、マインドコントロールから脱出する捜査官の姿を描く。
題材、テーマ、舞台設定、人物像、それらすべてががっちり噛み合った快作。リアリティというよりも、作品内で起きるシナリオに沿って、すべてが有機的に融合しているという意味で。
後半のどんでん返しなど、作品内でのみ筋が通り過ぎてややサービス過剰に感じられるくらいだが、一応そのあたりもテーマ的にはつながっているし、問題というほどでもないか。
とにかく、新人のデビュー作として、娯楽作品としても出来過ぎなぐらいの作品。オレよりも年下じゃん(笑)。