旅日記最終日 黒潮鉄道望郷編

 起きて新聞を読みつつ、最終日の予定を練る……といいながらも、毎回のことだがオレの旅行の最終日は、帰るだけである。
 8時朝食、8時半タクシーに乗る、9時20分の特急に乗って帰阪、というプランがすでにたっており、車も手配してもらっている。
 しかし、ものすごくのんびりした旅行であった。のんびりもここに極まれり。とかく時間に追われがちな現代人の中で、かくもリラックスした時間を過ごせた人間が、果たしてそうそういるであろうか。よく寝た……。
 旅行と言うよりも、むしろホームステイのような内容であったなあ、と朝飯を食いながら考える。4日間で24杯のご飯がオレの胃袋へと消えたわけだが、さすがにこういうことをもう一週間も続けたら、デブデブとなってしまうことは間違いない。名残惜しいが、そろそろ帰るべきなのだろう。

「お世話になりました〜」
「いえいえ、なんか食事のお世話しかさせてもらわなかったような感じで。お昼とかお腹空きませんでしたか?」
「いやあ、寝てたんで……」

 しかしまあ、ものの見事に出歩かなかったが、やはりちょっと変な客だと思われていたのだろうか。面倒がなくていいだろう。
 タクシーが来たので、名残惜しいが出発。外に出て犬軍団にも手を振ると、激しく吠えて尻尾を振ってくれた。なかなかいい奴らであった。
 行きははしょったタクシーだったが、なんと駅まで1800円もかかった。三日分のビール代ではないか! 
 おみやげを買って、さらば紀伊大島、さらば串本。いつかまた来る日もあろう。

 リフレッシュを終えて再び大阪へと舞い戻ったオレを待つのは、さらなる戦いの日々か。終わることのない旅路なのか……。