旅日記第三日目 紀伊大島誤算編

 崩れていたお天気だが、三日目にしてようやく快晴となった。出発前の天気予報のチェックにより、この展開は完全に予想済みであった。そして、天候に合わせてオレは完璧なるプランニングを行っていたのである。

 初日……雨or曇り。移動日。しんどいから出歩かない。
二日目……曇り。休息日。天気も悪いし、疲れが残っているので出歩かない。
三日目……晴れ。観光日。天気も回復、体力も回復、そろそろ旅行らしいことをしてみよう。

 満を持して三日目がやってきた。いよいよ紀伊大島を散策してみるのだ。
 またもきっちり四膳のご飯をいただき、部屋に戻ってさあ準備……と思ったのだが……あ……ねむ……。
 いかん、もしかして、全然体力が回復していないのでは……? だめだ、眠ってはだめだ、また昼を過ぎてしまうぞ……と思いつつも、手が勝手にコンタクトを外し、すでに寝る気満々なオレ……。

 ま、いっか……。

 気が付くと、一時を過ぎていた。うん、まあ昨日ほどは寝なかったから、いいか(よくないよ!)。過ぎ去った時間は帰らないが、そうは言いつつも観光なんてものに大した価値はない。どうせ、どこへ行っても地球上には変わりないし……。しかしこういう時、一人旅で良かったなあ、とつくづく思う。眠いのに無理に観光なんて信じられない。もし連れがいて、そんなことに駆り立てられでもしたらと思うと、ぞっとするのだ。
 裏へ行って、犬と遊んでると、その思いはより強さを増す。ふん、嫌いだね、人間なんて。とはいえ、犬というのもうるさい生き物だな……。
 またセルフサービスのウーロン茶をいれて、ひたすら読書。裏で薫製などやっていて、ウーロン茶も自家製であった。変わった香りだが、うまい。
 さて、まもなく夕食……こういう食っちゃ寝るだけの生活は、三日目ともなると流石に飽きるんじゃないかと思っていたのだが、いや、まったく飽きない。このままずーっと、ネットもつながず仕事のことも忘れどこにも出かけず、あと十日ぐらい過ごせそうである。三泊の旅行は、今の仕事を始めてから初だったが、実にいいものだ。しかしまだまだ足りない! もっと、もっと休まねば!
 生ビールは、しかし三日連続で飲むとちょっと飽きていた。あまり酒は好きじゃないんで、やはりビールというのは一週間ぐらい我慢して渇いたところで、くわっといただくのが最高であるな。それにひきかえ、ご飯というのは全然飽きないなあ。また四膳食っているよ。
 愚にもつかないバラエティ番組など見て、さらにぼーっとして……。
 奥さんが、風呂の用意ができたと知らせにくる。
「あの〜、シーツとか、取りかえましょうか?」
 ん? ああ、そう言えば、普通は旅館とかでは毎日取り替えるものなんですかね。
「ああ、いいっすよ、別に」
 家じゃ普通に何日も敷きっぱなしだったりするわけだし……。
「枕カバーだけでも」
「いや、枕使ってないんで」
 これは本当だった。高いから首が疲れるのだ。

 あ〜、明日はもう帰らないといかんのか。寂しいなあ……。と思いつつ、寝た。