ゾイド小説『戦場の突風』中央大陸編

 第三部は中央大陸編となりまして、ここからはゴジュラスギガから凱龍輝までのキットに付属していたバトルストーリーを元にしたお話となっております。
 資料もガクッと少なくなってなかなか苦労しましたが、暗黒大陸編までいわゆる本編とちょっと距離のあるところにいた主人公たちが、いよいよ歴史の渦中に飛び込み、その転換点に立ち会うことになります。
 ブロックスの扱いに関しては、おそらく発売当初は本編と絡めていいのか迷っていたところがメーカーにもあり、公式ストーリーに出てくるのが遅かったのですが、そこを補完するつもりで、初期型からがっつり登場させました。
 そして、もちろんあの超大型ゾイドも登場します。
 暗黒大陸編より短めですが、ずっと前から考えていたこの章の最終話に向けて、すべてが動いています。いよいよテーマも浮き彫りになり、「ゾイド乗り」、そしてそのパートナーの生き方にも注目していただければ、嬉しく思います。
 それでは、どうぞ。

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#21 中央大陸編1 夏を前にして&第三部「中央大陸編」目次 | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー - pixiv

#22 中央大陸編2 帰郷 | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シリーズ - pixiv

#23 中央大陸編3 続・通じ合うもの | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小 - pixiv

#24 中央大陸編4 隠密作戦 | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シリー - pixiv

#25 中央大陸編5 紅の竜騎兵団 | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シ - pixiv

#26 中央大陸編6 若き戦士 | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シリー - pixiv

#27 中央大陸編7 城砦攻略戦 | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シリ - pixiv

#28 中央大陸編8 キメラ | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シリーズ - pixiv

#29 中央大陸編9 巨竜砲撃 | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シリー - pixiv

#30 中央大陸編10 渚にて | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シリー - pixiv

ゾイド小説『戦場の突風』暗黒大陸編

 第二部となる暗黒大陸編では、公式ファンブック3〜4に当たる話を描いています。
 本編はガイロス帝国摂政ギュンター・プロイツェンがほぼ主人公で、彼の反乱と遠大な計画が軸に描かれていますが、今作の主人公たち、共和国側の一兵士にしてみれば、さぞ寝耳に水な話であったろうと思います。ただ、その中でも、事態が自分たちの預かり知らぬところで不気味に進行していっている感覚を、どこかで味わっていたのではないか。そう考えながら書き進めました。
 物語は起承転結の「承」に当たる部分に入ります。立ちはだかる宿敵、喪失、新たな仲間……お話はいよいよ本格的に動き出し、にぎやかになってきます。ガイロス帝国側のゲストキャラも登場させ、とにかく楽しんで書きました。中でも第五話は、ここを書きたくてずっと進めてきた感があって、気に入っています。このあたりから、キャラが立ってきて、もう自分ではあまり深く考えなくても、勝手に動いてくれるようになりました。九話は重要なシーンで色々なパターンを考えていたのですが、すんなりと着地してくれて、ちょっと驚きました。
 一方で対デスザウラー、ヴァルハラ戦など、本編の裏側を書いた部分では、「リライト」的なことをするのが恐れ多く、ダイジェスト的にまとめたのが果たして正解だったか、と言うとちょっと自信のないところでもあります。
 書いている間は、まだ本当に完結させられるのか半信半疑でしたが、キャラクターたちのおかげで自信が出てきました。それでは、お楽しみいただけましたら幸いです。

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#8 暗黒大陸編1 名誉を受けて&第二部「暗黒大陸編」目次 | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異 - pixiv

#9 暗黒大陸編2 再び戦場へ | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シリー - pixiv

#10 暗黒大陸編3 紅い悪夢 | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シリー - pixiv

#11 暗黒大陸編4 戦い敗れて | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シリ - pixiv

#12 暗黒大陸編5 心を捧げて | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シリ - pixiv

#13 暗黒大陸編6 伝えたいこと | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シ - pixiv

#14 暗黒大陸編7 ゾイド乗りたち | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説 - pixiv

#15 暗黒大陸編8 月下の決闘 | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シリ - pixiv

#16 暗黒大陸編9 初めて会った日から | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の - pixiv

#17 暗黒大陸編10 雷神とともに | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説 - pixiv

#18 暗黒大陸編11 帝都へ…… | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シ - pixiv

#19 暗黒大陸編12 慟哭 | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シリーズ - pixiv

#20 暗黒大陸編13 友からの手向け | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小 - pixiv

ゾイド小説『戦場の突風』西方大陸編

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 ゾイドの小説を書いています。
 え〜、ゾイドとは何か、というところから話を始めると面倒なのですが、80年代に始まり、今も玩具展開やアニメの放映など、メディアミックスが続くシリーズです。
 20世紀に一度、終了しましたが、2000年代に初のアニメ化とともに復活。今作はその頃の展開を下敷きにしたストーリーになります。
 『ゾイドバトルストーリー』と呼ばれる公式のストーリーと年表があり、それに即したお話の展開になります。正直言いまして、原典を知らないとチンプンカンプンかもしれない。原典である『ゾイドバトルストーリー』『ゾイド公式ファンブック』は紙媒体で出ていましたが絶版となっています。まあググれば出てこないこともないですが……。

 拙作はその中でもZAC2099年から始まった西方大陸戦争を皮切りに、暗黒大陸、中央大陸を舞台に繰り広げられた戦いを、名も無き兵士たちの視点から描いています。こう書くと硬派な感じがしますが、まったくそんなことはありません。
 当時のオフィシャルなストーリーが、いささか煮え切らない感をもって終了したのですが、まあそれ自体はしようがないことかな、と思っておりました。で、10年ほど前に書いたのが第一話に当たる「砂漠に吹く突風」の回です。元々はこれ一本だけ、砂漠に取り残された二人の兵士を描いた、ワンシチュエーションの短編のつもりでした。ただ、何せ年表と後のストーリーは存在しているので、さて、拙作の登場人物たちはその後、どんな道を歩むのかな、と言うことを考え出したら色々と出来てきて、8年に渡る物語の大筋がぼんやりと生まれました。ただまあ、なかなかの分量になるし、壮大すぎてとても書ききれないのがわかりきっていたので、頭の中で彷徨うに任せ、10年の間、寝る前に布団の中で筋を反芻するだけに止まっていました。

 しかし、昨年末、形になることはなかろうと思っていたものが、急に出口を求めて自己主張を始めました。まあちょっとだけ続きを書いてみるか、ざざっとダイジェスト程度でもいいしな、と軽い気持ちで書き始めたらなぜか止まらなくなり、新しい展開はどんどん出てくるわ、キャラクターは勝手にしゃべりだすわで、ほとんど自動手記人形のような勢いで書き続け、四ヶ月を過ぎる頃には、文庫で900ページ近い分量になっておりました。若い頃に書いては投げ出しを繰り返していたのが嘘のようで、まさか完成するとは思いませんでした。これがおそらく「物語が降りてくる」という現象なのだと思います。

 小学生の頃から続いてきた自分のゾイド熱の集大成に、結果としてなったと思います。公式ストーリーやアニメへのオマージュなども含め、自分の好きなもののごった煮のようで、クオリティはともかくとして、自分以外誰も書かないものであることは間違いないので、公開してみることにしました。なんとなくネットの海に流せば「なんかこれ好き!」「あのゾイドの活躍を見たかった」という人のアンテナに、いつか引っ掛かるかもしれません。

 物語は、レッドラストの砂漠から幕を開けます。それでは、はじまりはじまり。

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#1 プロローグ&第一部「西方大陸編」目次 | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様 - pixiv

#2 西方大陸編1 砂漠に吹く突風 | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シ - pixiv

#3 西方大陸編2 人事異動は突然に | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説 - pixiv

#4 西方大陸編3 森の中で | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シリーズ - pixiv

#5 西方大陸編4 通じ合うもの | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シリ - pixiv

#6 西方大陸編5 巨砲、轟く | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シリー - pixiv

#7 西方大陸編6 猛虎再来 | 『戦場の突風』 ゾイドバトルストーリー異聞 - ルシフ様の小説シリーズ - pixiv


ルシフ様の2020年読了本

2020年の読書メーター
読んだ本の数:30
読んだページ数:9305
ナイス数:73

白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)
読了日:01月09日 著者:小野 不由美
白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記 (新潮文庫)白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記 (新潮文庫)
読了日:01月19日 著者:小野 不由美
白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記 (新潮文庫)白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記 (新潮文庫)
読了日:01月24日 著者:小野 不由美
白銀の墟 玄の月 第四巻 十二国記 (新潮文庫)白銀の墟 玄の月 第四巻 十二国記 (新潮文庫)感想
ここまで積み上げてきた逆転フラグをボキッとへし折るような展開にハラハラさせられるが、設定と伏線の回収ぶり、これだけの大長編なのも納得の完成度でありました。阿選との決着に関しても、これはシリーズの味かな……。
読了日:01月26日 著者:小野 不由美
アルスラーン戦記15戦旗不倒 (らいとすたっふ文庫)アルスラーン戦記15戦旗不倒 (らいとすたっふ文庫)
読了日:02月02日 著者:田中芳樹
ロードス島戦記 誓約の宝冠1 (角川スニーカー文庫)ロードス島戦記 誓約の宝冠1 (角川スニーカー文庫)
読了日:02月17日 著者:水野 良
ごろごろ、神戸。ごろごろ、神戸。感想
神戸に住んでるわけじゃない同僚の本を、神戸生まれの妻が借り、それをオレがまた借りた本。筆者のことを知っているのは、はてな民だからだ……。読んだら神戸を走りたくなるし、見かけた店にも入りたくなる。
読了日:02月25日 著者:平民金子
ライムスター宇多丸の映画カウンセリングライムスター宇多丸の映画カウンセリング
読了日:03月27日 著者:宇多丸
私の男 (文春文庫)私の男 (文春文庫)感想
全編ぬめるような文体、「腐野」というネーミングセンス、不自然なポージングをした漫画キャラのような「おとうさん」の身体描写など、引っかかる要素満載なのにリーダビリティが高く、あっという間に読み終わってしまう。もちろん、再読させる仕掛けもあり。この作者の本を読むのは2冊目だが、さすがは代表作であるな。
読了日:03月28日 著者:桜庭 一樹
USムービー・ホットサンド ──2010年代アメリカ映画ガイドUSムービー・ホットサンド ──2010年代アメリカ映画ガイド
読了日:03月31日 著者:グッチーズ・フリースクール,降矢聡,山崎まどか,篠儀直子,結城秀勇,鍵和田啓介,村山章,樋口泰人,真魚八重子,西田博至,長谷川町蔵,川口敦子,入江哲朗,ジャッキー・ゴルベール,松井宏,金原瑞人,岡村詩野,中川大地,吉川悠,三浦哲哉,鈴木透,aggiiiiiii,鈴木了二,土田環,中西香南子,ケリー・ライヒャルト,ボー・バーナム,カイル・マーティン,クリストファー・ブローヴェルト
より速く、より遠くへ!ロードバイク完全レッスン 現役トップアスリートが教える市民サイクリストのトレーニング法 (SB新書)より速く、より遠くへ!ロードバイク完全レッスン 現役トップアスリートが教える市民サイクリストのトレーニング法 (SB新書)
読了日:04月15日 著者:西 加南子
三体三体
読了日:04月30日 著者:劉 慈欣
巡査長 真行寺弘道 (中公文庫)巡査長 真行寺弘道 (中公文庫)感想
地味な肩書きがついている地味そうな小説なんだが、全然関係ないと思っていたことが、読み進める内により大きな問題へと繋がり、それがひいては読者である自分自身にも降りかかってくる、そんなうそ寒い気分にさせられる。
作者の前作『エアー2.0』を衣替えして、違う面から語りなおしたようで、これがシリーズを通していかに深まっていくかも楽しみ。
読了日:05月04日 著者:榎本憲男
「日本スゴイ」のディストピア 戦時下自画自賛の系譜 (朝日文庫)「日本スゴイ」のディストピア 戦時下自画自賛の系譜 (朝日文庫)感想
胡散臭いカルトに始まり、国家ぐるみの敗戦に終わった太平洋戦争だが、その背景には自身を省みず安直な自賛に溺れた姿があった。「臣民」をコントロールする数々の言説に、肝が冷える思いだ。
読了日:05月19日 著者:早川タダノリ
ドクター・スリープ 上 (文春文庫)ドクター・スリープ 上 (文春文庫)
読了日:05月25日 著者:スティーヴン・キング
ドクター・スリープ 下 (文春文庫)ドクター・スリープ 下 (文春文庫)感想
前半はチマチマと読んでいたが、後半は1日で一気読み。映画ではない原作『シャイニング』の素晴らしい続編。もうあのホテルはないからな……。もう全編優しさしかなくて、亡き父のことを思い出して泣けた。
読了日:05月25日 著者:スティーヴン・キング
スター・ウォーズ 禁断の真実(ダークサイド) (新書y)スター・ウォーズ 禁断の真実(ダークサイド) (新書y)
読了日:06月19日 著者:高橋 ヨシキ
DV(ドメスティック・バイオレンス)――殴らずにはいられない男たち (光文社新書)DV(ドメスティック・バイオレンス)――殴らずにはいられない男たち (光文社新書)
読了日:07月03日 著者:豊田 正義
ドロレス・クレイボーン (文春文庫)ドロレス・クレイボーン (文春文庫)
読了日:07月24日 著者:スティーヴン キング
甘やかな牢獄~奴隷商人サラサ~ 「女奴隷」シリーズ (光文社文庫)甘やかな牢獄~奴隷商人サラサ~ 「女奴隷」シリーズ (光文社文庫)感想
大石圭初のシリーズものも、ついに三作目。しかし、ここに来て「ふりだしにもどる」をさらっと書いてしまうこの作家、マンネリを通り越して稀有な作家性を獲得しているのではないか……! 珍独裁国家描写には、どことなく大藪春彦感もあるな。
読了日:07月25日 著者:大石 圭
三体Ⅱ 黒暗森林 上三体Ⅱ 黒暗森林 上
読了日:08月13日 著者:劉 慈欣
三体Ⅱ 黒暗森林(下)三体Ⅱ 黒暗森林(下)感想
何でもいいからやりながら「これは計画の一部だ」とうそぶくやつ、これ、中国で絶対流行っただろ……。二転三転する展開と、第一作を巻き込んで着地する結末、全てが痛烈なまでにずばりはまり、ラストの感動をもたらす。途中、「これはもはや○が勝つしかないだろ」と思ったのだが、すぐに絶対無理だな、打ち消した。それがまさかこんな幕切れをもたらすとはな……。また一作目から読み返したくなるし、続きも楽しみ。

読了日:08月14日 著者:劉 慈欣
皆殺し映画通信 御意見無用皆殺し映画通信 御意見無用
読了日:09月11日 著者:柳下 毅一郎
歌舞伎座の怪紳士歌舞伎座の怪紳士感想
「見立て殺人」ではないが、歌舞伎の演目になぞらえて展開していく、日常と地続きの物語。現代の生きづらさ、危機的状況にある舞台劇など様々なことを想起させるが、ラストは読者を懐かしくも美しい場所へと連れて行ってくれる。素晴らしい。
読了日:09月17日 著者:近藤史恵
アルスラーン戦記16天涯無限 (らいとすたっふ文庫)アルスラーン戦記16天涯無限 (らいとすたっふ文庫)感想
最終巻。改めて買ってちゃんと読むと……やっぱりすげえやっつけ感がある! 結末自体はこれでいいと思うが、風呂敷の畳み方に問題があったか。本来なら、ラストに近づくにつれて分厚くなる大作並の構想だったが、もはや書き込む体力がなかったか。やっぱり若いうちに完結させとくべきものであった。
読了日:09月25日 著者:田中芳樹
北の愛人 (河出文庫)北の愛人 (河出文庫)
読了日:10月31日 著者:マルグリット デュラス
日本軍兵士の真実 (中央公論 Digital Digest)日本軍兵士の真実 (中央公論 Digital Digest)
読了日:10月31日 著者:五木寛之,鴻上尚史,戸部良一,吉田裕,河野仁,佐藤卓己,武田一義,松山巖,都甲幸治,桜庭一樹
フィフティ・ピープル となりの国のものがたりフィフティ・ピープル となりの国のものがたり感想
連作短編、群像劇と呼ぶには淡い、病院を中心にした人々の物語。執筆当時の韓国の社会的状況をさりげなく盛り込んでいて、知識があればより深く読めるはず。となりの国のものがたり、というサブタイトルだが、本邦にも似た状況はあり、さまざまな隣人との間で揺れ動く心の動きは、どんな人間にも通じる普遍的なものだ。
読了日:11月25日 著者:チョン・セラン
わざわざゾンビを殺す人間なんていない。わざわざゾンビを殺す人間なんていない。感想
ゾンビミステリと言えば『生ける屍の死』だが、SF仕立てでそれを見事に継承してみせた感。「悪役を演じる」主人公の造形がいいですね。
読了日:12月25日 著者:小林 泰三
夜の向こうの蛹たち夜の向こうの蛹たち感想
女性を取り巻くルッキズムに鋭く切り込む一本で、美化されない三者三様の心理と立場を描くことで、今ここにあるものを浮き彫りにする。やるせなさも残る読後感の中にこそ、救いの片鱗がある。
読了日:12月27日 著者:近藤史恵

読書メーター

『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』エキストラ体験記

 さる2018年1月30日、東京は豊洲近くの港にて、谷垣健治監督、ドニー・イェン主演作『Enter of the Fat Dragon』のエキストラに参加してきました。
 長らく日本公開を待っていましたが、コロナ禍の最中の本国公開を経て、2021年1月1日(金)、TOHOシネマズ他で全国一斉公開されます。


映画『燃えよデブゴン/TOKYO MISSION』予告編

 自分のドニー・イェンのファン歴も20年ぐらいになるのかな……。『COOL』公開時にも来日されていて、友人に誘われていたのだが、あいにく忙しくて東京まで行けなかったのだった。時は流れSNS時代、プライベートで京都を旅行していたり、新宿でラーメンを食べてたり、堺市でテレビ番組の撮影をしていたり、ちょいちょい日本にも来ているドニーさん。こりゃあそのうち会う機会も訪れるんじゃないかな、と思っていましたが、意外な機会がやってきました。

 Twitterでは早々とボランティアの募集がかけられていて、特に在住場所などの制限はなかったため、大阪住まいの小生でも簡単に登録できました。最低一泊はしないといかんだろうし、仕事の都合で多分無理だろうと思っていましたが、この30日はぽっかりと予定が空いたため、酔った勢いで写真を送ったところ、即採用。

 前日に東京入りし、別日に参加予定であるドニー・イェンファンの同志とらねこ(https://twitter.com/chatoraneko)氏とタイ料理屋で決起集会。大飯を食らい、意気軒昂と現地に。出来立てのホテルで一泊し、翌朝、メールに従って撮影場所を目指します。

 募集要項では、刑事、警官、救急隊員、鑑識官、野次馬役のどれか現地で割り振りとのことで、一応、刑事役になっても大丈夫なようにスーツで行きましたが、割り当ては鑑識官でした。刑事役は僕より年配の人が中心だったようで、まあ、わしは貫禄がないけんのう……。

 衣装の制服を受け取り、鑑識官に成り切ります。青の上下に「鑑識」の腕章を巻き、髪が落ちないようネットをかぶってさらに帽子、マスクに手袋、ゴム靴……。おやおや、これでは全く顔が映らないではないですか。

 撮影場所は港の浮橋の上。朝8時集合ということで、めちゃめちゃ寒い! ヒートテック着用でなんとか凌げるか……? 港に登場人物の水死体が上がり、警察が周辺を取り調べ中という設定のようです。鑑識官は7人いましたが、海をさらう係、メジャーで距離を測る係など割り振られる中、僕はボードに見取り図を描く係に……。これはちょっと目立つかもしれないな。
 午前中はドローンで遠景の撮影がされる中、エキストラも演技がつけられます。死体(人形)周辺を歩きまわりつつ記録をつけ、救急隊員と話し合ったり、メジャーで測定された距離をまた記録したりする小芝居を何度も繰り返します。実際のところ、エキストラはこの同じ芝居を繰り返すだけで、それを遠景だったり役者越しに撮ったりして、編集しつなぎ合わせるのでしょうね。

 さて、この早朝から日本と中国のスタッフがすでにごちゃ混ぜで参加しており、谷垣健治監督も早々と登場。ケンジ〜! ケンジ〜! しかし、ドニーさんはまだいません。延々と寒空の下でドローンに撮影されていると、もしかして今日はこれで終わるんじゃないか。俳優はこない日なんじゃないかと心配になってきます。いや、スタッフの方に聞いてみたら教えてくれたかもしれないんですが、「こいつ、変なことするかもしれない狂信的ファンかも……」と目をつけられても嫌だしなあ……。
 10時過ぎ、女優さんがきて現場に参加。「マギー」と呼ばれてましたが、マギー・チャンでもマギーQでもなかった。観た事ない人だと思うが……? さらにスタントの人が衣装を着て「竹中さん」のダブルとして浮橋に。えっ、共演は竹中直人なの? 『マンハント』にも出てるよな。これは知らなかったわ。

 だいたい1カットを4テイクぐらい撮ったらOKが出るぐらいのペースで、遠景撮影が終わった後は「ドニーが乗ってくる車」が到着するカットの撮影。多分、ほとんど映ってないけど、ここでも同じ芝居をするエキストラ。
 撮影中は寒かったですが、5分以上間が開く時は必ずスタッフの人がそれぞれのコートを持ってきてくれたので助かりました。さすがはスタントの安全管理も徹底していると言われるドニー・谷垣組だよ……! そして、「ドニーの車」を撮った以上、当然、この後はドニーさんもくるということになるぞ、と期待が高まります。そうでなくては困るぜ……。

 国際的現場ということで、カルチャー・ギャップをどう埋めているのかも気になりますが、割ともう呼吸がわかっているのか、なあなあと言うか、日本人スタッフが並べた小道具を、中国人スタッフが別のに並び替えてしまい、「えっ? これ、替えちゃったの? ……まあいいか、こっちでもいいし」とスルーする……みたいな状況も散見。慣れかな……。

 11時を回り、ここで一旦昼食。昼は弁当、お茶、コンロで温めたスープ。これがロケ弁か……。ところで、朝は「朝食を済ませてくること」とメールに書いてあったのでおにぎりを食べて来たんですが、現場着いてすぐやっぱりおにぎりの朝食が出たので、これは置いてあったのでした。結局、この昼に朝食のおにぎりとロケ弁の二食を食すことに……。スープをもらおうとしたら、コンロの火が弁当のダンボールに燃え移り、危うく火事になるところだったのが本日のハイライト。食べてウロウロしてたら、スタッフの会話で「あっちのチーム、もうホテルを出たから」というのが聞こえる。では、ついに……?


 午後、待望のドニー・イェン登場! 正直、実際来るまではめっちゃ心配してましたが、ほっとした。まあこの人は多分コントロール・フリークっぽいところがあるだろうし、なんだかんだで現場には来るだろうと思っていたが……。
 ああ……良かった……東京まできた甲斐があったぜ……これでもう悔いはない……あとはほんの一瞬でもいいから映画に映ってたらそれでいい……できればドニーさんと同じカットに収まれたらもう思い残すことはない……アクションシーンならなおいいな……と、どんどん願望が膨らんでいきますよ。
 ところで今回のドニーさんは「デブゴン」役なので、当然ながら……太いな……。顔は特殊メイクでめちゃめちゃ頰の肉付きがよくなり、肉襦袢を着込んで下半身にも詰め物を入れています。この姿のドニーさんを見れるのは相当レアだと思いつつ、いつか普通の姿の時にも会いたいな、と思ったのでした。
 ちなみにスタントの人が全く同じ衣装でスタンバッてましたが、この日は出番なし。しかしこちらは本当に太った人のようだった。

 現場はほぼドニー・谷垣組ということで、ドニーさんもわりとしれっと気がついたら来ていた、という感じでしたね。一時間ほど後に竹中直人氏が来た時は「撮影に参加される竹中直人さんです」とその場で紹介があり、そこで拍手したんですが、もうドニーさんはチーム内の人なんだなあ。谷垣さんが「ドニー」、スタッフの人は「ドニーさんがこう歩いて来るので……」とか、さんづけで呼んでいた印象。

 この日はどうやらアクションシーンはなさそうで、ドニーさんも特にキレキレの動きを披露することなく、桟橋と浮橋の間もよっこいしょという感じでまたいでましたね。

 撮影はこの後も順調に進み、打ち上げられた死体をドニーさんが桟橋の向こうからカメラで撮影するシーン、死体のアップ、そこから走って来て竹中直人刑事とコミカルな掛け合いをするシーンなどが続きました。ドニーさんがカメラ構えてるシーンでは、野次馬役の人がすぐ隣で同じショットに収まってて、あれはなかなか美味しいな……。ここも3テイクほど撮ったけれど、ちょっとずつ違うセリフやポーズをドニーさんがしてて、さあどのパターンが採用されるのか楽しみだ。

 その後でドニーさんがこちらに走って来て死体の側に来るシーン、ここが本日の目玉ですね。ここで後ろをウロウロしている鑑識官の本領発揮ですよ。
 やはりガチガチの台本はないのか、竹中直人氏も入念にセリフを繰り返してリハーサル。死体が海にあった時間を六時間と言ってたり七時間と言ってたりしましたが、細かい内容はもう適当でいいらしい。竹中直人が日本語でしゃべったのを、マギーさんが中国語に通訳し、ドニーさんが返す、という流れ。ただ、通訳するマギーさんは実は全然日本語ができないので、撮影ではウンウンとうなずいたり耳打ちして誤魔化しています。なかなか呼吸が合わないのか、竹中氏も合間に「君が日本語出来たら簡単だったのになあ〜」と冗談めかして言っていました。

 これはちょっと長く回したシーンで、今までやってきた鑑識官小芝居の集大成でしたね。多分、最終的にはいくつかに割るんだろうけど、『七小福』の先生の「カットまで続けろ」という教えを胸に集中力を切らさないように頑張りました。ドニーさんと竹中氏が言い争ってる後ろを、多分何回かは横切ってるはずだが、映ってるかな……?

 ドニーさんは自分が来て以降は、ワンカットが終わったら必ずビデオを見て、谷垣監督と共にOKを出さないと次には進みません。このチームはこういう体制なんだな。暑くなってきたようで、ドニーさんは合間にダウンを脱ぎ捨ててタンクトップ姿に……! まあ肉襦袢着てるから筋肉は拝めなかったけど。その格好で歩き回り、谷垣監督と細かい打ち合わせ。その後ろ、特殊メイクの継ぎ目が見える30センチの距離まで接近し、いかにも話に混じっているかのようにウンウンとうなずいていた鑑識官の衣装を着たエキストラは、他ならぬワタクシです。ああ……このシーン、メイキングとかに入ってないかな……。
 しかしこの日はマスクしていて良かった。いくらでもニヤニヤできたもんな……。

 昼間のシーンだから、日没までには終わる、という話でしたが、11~3時までは日も照って暖かかったけれど、まあやっぱりラスト2時間半は冷え切ってて寒かった。
 薄暗くなってきてほぼ終了でスタッフも片付けに入りかけてましたが、ドニーさんが納得いかないらしく急遽もうワンカット。同じシーンで役者の足元だけを撮ります。ここでカメラ前を横切った鑑識官の足もオレだ!
 なるほど、これが谷垣さんが本に書いてた「いかようにも使えるカットをつなぎに撮っておく」という奴なのかもね。

 こうして9時間半かけた撮影は無事に終わりました。エキストラ班も衣装を返し、また弁当をもらって解散。もちろんノーギャラですが、三食出たし記念品ももらえたし、食い詰めた役者がとりあえず三食食えるからということで方々のエキストラに参加する、というのはこういうことなのだな……。

 最初に来ていた撮影スタッフに加え、マギーさん付き、ドニーさん付き、竹中さん付きのスタッフやマネージャーも続々と加わって、さらに我々エキストラもぞろぞろといるので現場はすごい人出だったのだが、これだけ人が集まって1日潰してできるのは、多分映画の中では3分ぐらいなんだよな。本当に映画って、手間ばかりかかって割に合わないなあ……これはよっぽど好きじゃないと出来ないですよ。オレはやっぱり観るだけで好き勝手なこと言ってる方がいいな……。

 記念品としてくれたトートバッグ。

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コロナ禍に威力を発揮するお役立ち品

 その日のうちに新幹線に飛び乗り、ロケ弁当を食べながら帰路についたのでありました。
 エキストラの仕切りやってたスタッフの人も感じ良かったし、いい現場だったなあ……。丸一日貴重な体験ができた……。さあ、あとはどれだけ映画に映ってるかだな。もちろん、シーンごとカットという可能性もありますが!

 さあみんな、ドニー・イェン映画を観よう!


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布施東劇の思い出

 昔々、布施東劇という映画館がありまして、もう二十年ぐらい前に閉館しました。最後の三年ほど、まあラインナップ的にもほんとうに暇だったせいか、もう人手など割かずにぎりぎりで回しておけばいいや、という時期がありまして、要はモギリに一人、映写と電話番に一人置いておけばそれでいいや、ということになっていた。
 ……で、そこで朝から夕方、あるいは昼から夜までずーっと入ってたのが……オレだああああ! まだ社員になる前だったけど、さぼらないし悪いことしないし、とりあえず一人でやらしといても安心だ、ということで便利に放置されていた。若くして「東劇の主(ぬし)」と呼ばれ、時々映写機を回しに行きながら、あとはずーっとミステリとかホラー小説とか読んでいたな。
 その後、そこが潰れて別の劇場に移って、まあそれ以降はまずまず忙しくなったわけだが、あの東劇でずーっと本読んでた時期は二十二年の映画館で働いてた時期の、半分ぐらいを占めていたような気がする。実際は三年ぐらいだったわけだけど、僕の原点ですな。

 まあ一人でやってたせいで、ここにはとても書けないような様々な映写トラブルなんかもあり、まったくもってあいすみません、バイトを一人で放置した会社が悪いんですよ、と責任逃れを決め込んでしまったりするのであった。しかしまあ、一人で勝手にやってあちこちいじってたあの時代、誰も助けに来ないから自分でなんとかしてたあの時代があったからこそ、後の社員時代の大活躍もあるわけである。

 さてまあ月日も流れ、四十代になった今、新しい仕事をするべえ、と色々探していたが、コロナショックのせいかまともな求人もなく、三ヶ月ほどブラブラ過ごす羽目になった。まあ他に収入もあるし、一応ギリギリやっていけるな……とは思っていたが、今月よりやっと新しい仕事も決定。何をしているかというと……留守番! 電話番!
 うーん、そして誰も来ない……これでは東劇と変わらんではないか。ある意味、原点回帰であるなあ、と思う。変に不真面目な大学生とか雇うより、それなりに常識、社会人経験のある人間を採用して無難にやってもらおう、ということらしい。まあまあ全くその通りですね。謹んで、暇させていただきます……。

 しかし、二十年前と同じようなことを改めてやってみて、大きく変わったのは、全然落ち着きが違うなあ、ということ。昔は本、今ならスマホか、何かないと時間を過ごせなかったものだが、今はただぼーっと座ってるだけでも、それなりに時間が経って、まったく平気である。これが加齢か……。この調子で老人になったら、もっと何時間も座ってても平気になるんだろうな。認知症にならんように気をつけないとな。

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どっこいしょ

 さあ、この平和さが後の大活躍の端緒となるのか? どうもそんな気はまったくしないけど、とりあえず留守居役のスペシャリストを目指して頑張りたいと思います。

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 Twitterでやってた企画に、5月いっぱいかけて参加。何某か、自分でも思い入れの深い映画を集めました。

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