『イップ・マン』のサントラ

 残念ながら公開は延期になっているが、『イップ・マン 完結』の楽曲を含むシリーズ四作のサウンドトラックが発売された。

THE BEST OF “IP MAN" ORIGINAL SOUNDTRACK

THE BEST OF “IP MAN" ORIGINAL SOUNDTRACK

  • アーティスト:川井憲次
  • 発売日: 2020/05/06
  • メディア: CD

 『序章』から3曲、『葉問』から6曲、『継承』から8曲、そして『完結』から5曲という構成である。


 以前、香港のドニー・イェンファンクラブに『葉問』のサウンドトラックの在庫があったことがあり、そちらは購入済み。

葉問2香港映画OST

葉問2香港映画OST

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『葉問』サントラコレクション

 また、iTunesspotifyなどに『継承』『完結』のサウンドトラックはすでにフルラインナップで上がっている。

 そういう意味では、必ずしもお買い得なCDではないかもしれないが、まあこういう企画が実現するだけでもありがたいことだし、『序章』の楽曲を手に入れられる機会も珍しいので、やはりファンには必須のアイテムである。

 あ〜、しかし映画本編を観ないと、サントラは聴けないよねえ、やっぱり。聴いても観た時には忘れてるかもだが、やっぱり初見の感動を重視するためには避けておくべきであろう。


 昨日のトイレ掃除の話、妻から「そんな冷たくないよ」とクレームがついた。誠に申し訳ございません。まあ仕事はいつ決まるかわからんが、変わらず暖かく見守っていただきたい。

トイレ掃除

 まあこんなご時世なので、なかなか仕事は見つからない。月に100時間ほど働いて10万ほど稼ぐのも、それなりに大変である。選り好みしなければまああるのかもしれないが、選り好みしないと待っているのは「密」であり、他人との接触である。大丈夫かな、と思って受けた面接先でも従業員が密集した感を目の当たりにし、いささか引いてしまうこともあった。
 喫煙者の母は「正直、仕事行かず引きこもってくれていた方がありがたい」と思っているようだが、そういう事情や就職戦線の状況を配慮しつつも、今なおフルタイム労働している妻の視線は、家でだらけているオレに対していささか冷たい……。

 「せめて日記でも書くか」の次は、「せめてトイレ掃除でもするか」の巻である。毎週土曜に妻がしていたトイレ掃除を強奪し、毎週金曜日に自分が担当することにした。道具は揃えてあるし、先週までちゃんとやっていてくれたから綺麗なものである。綺麗なものを綺麗にし続ければいいのだから、非常にハードルは低い。

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『無垢の祈り』より

 最近、別件で二箇所ほど、夢に見そうなほどとてつもなく汚くなったトイレを見たので、それに比べれば天国である。
 『無垢の祈り』という映画のトイレシーンはやばかったですね。

 そんなわけで、とりあえず先々週、先週と担当した。その前の週に妻がやっているところを背後から貼り付いて観察し、やり方も盗んでいる。
 さらに、意識改革をして、今まで立ってしていたところを座ってするようにした。これだけで飛び散りが大幅に緩和されているはずだ(朝一など寝ぼけて癖が抜けず、立ってしてしまうこともあったが……)。この自分がするようになったら、途端に座ってやるとか、何というかすごく嫌らしいなあ、と思う。人にやらせているうちは平然と立ってしてて何とも思ってなかったくせに! まことに申し訳ありません。

 今のところダメ出しも出ておらず、評判は上々である。せっかくなので、仮に仕事が見つかってもちょっと曜日は前後するかもだが続けてみたい、と思っている。


 その妻と、『ゲーム・オブ・スローンズ』をずっと見ている。自分は2周目、妻は初見。やっとシーズン6まで来た。見返すと様々な伏線がきっちりキャッチできて、超面白い。ただシーズン6からはかなり駆け足感が出てくる。

習慣

 一昨日の日記で、色々と習慣になっていたことがなくなった、と書いた。映画館やジムが復活するのか、という問題はもちろんなのだが、一方で、その習慣が途切れてしまった自分自身は復活できるのかな、という心配もある。

 最たるものは仕事である。習慣であってもまあまあしんどいのに、すでに二ヶ月休んでいて、新しい人間関係や慣れない業務に飛び込む気力が果たしてあるのだろうか、と心配になる。

 トレーニングもそうだ。楽しいけど、それなりに疲れることもやっている。ブランクが空いたら、今までこなせていたこともできなくなっていたりする。年齢的にも衰えが早くなって行くはずだ。

 映画はどうだろう。ホームシアターを持っているので、家で観るのもそれなりに楽しい。配信を見続ける限り、大して金もかからない。映画館で新作を観る喜びはもちろんあるはずなのだが、しばらく離れてしまうと、もはや自分がそこにこだわりを持ち続けるのかどうか、わからなくなってくる。

 「まあ、いいか」だ。そこまでしなくてもいいか、情熱をなくしてしまってもまあいいか。よくはないんだが、今現在、このやりたくてもできないこの状況に適応するために、心のどこかで「まあ、いいか」と思うようにしてしまっている面がある。「本当はやりたくてたまらないけど我慢してる! 早く! 早く!」と思っているより「まあなくてもいいか」と思う方が、精神衛生上、ずっと楽だからだ。それは単に心の持ちようであり、処世術みたいなものなんだが、いつか世の中が元通りになっても、ふっつりと切れてしまったものはもう戻らないんじゃないか。戻すモチベーションがもう自分にはないのではないか、とも思う。

 自分という人間の大半は習慣で出来ていて、その習慣をこなしていることで他人からも認知されているのではないかな、とも思う。Twitterにこの時間に現れて大体こんなことを書いて、その繰り返しでぼんやりとしたイメージが形作られているのじゃないかな、と思う。習慣がなくなれば、段々と呟くこともなくなり、薄っぺらくなって消えていくばかりなんではなかろうか。これが老いであり、死か。

 ……なんか無気力なようで、むしろ殊勝なことを書いてしまったな、という気がする。

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そんなタマじゃねーよな

 こんなこと言っといて、何ヶ月か後には平然と復活して、また遊び呆けてるのかもしれない。それならそれでいい。今、この時の気分をこうして残しておいて、いつか読んで笑えたらいいと思う。


 昨日から読んでる本。これはすごい地味なタイトルだな、と思ってたがもうシリーズ4冊も出ている……!

巡査長 真行寺弘道 (中公文庫)

巡査長 真行寺弘道 (中公文庫)

肩車

 自分は結婚していて子供はいないのだが、甥っ子と同居している(以下、甥ぞう)。同居家族は、妻、母、妹、甥ぞう、あとは猫2匹である。

 妹は仕事を持っていて、帰宅が間に合わないことも多々あるので、代わりによく保育園のお迎えに行く。今年、5歳になるので、あと2年弱はこのお迎えが続くはずだ。4歳児の成長たるや、日々言うこともやることも変わっていってすごいもので、これからどういう風になっていくのか全く先が見えない。おじさんというのは、まあ実に気楽な立場で、教育方針とかに特に口を出すこともない代わりに、お母さんが絶対教えないような遊びを色々と教えていってあげたいと思っている。

 保育園の帰り際、自転車でお迎えに来ているご家族が多いので、甥ぞうはそれが羨ましいようである。仲良しの子の自転車に一緒に乗ろうとしたりしがみついたりがなかなかしぶとく、お母さんはそれに辟易して、自分がいる日でもおじさんにお迎えを頼んだりする。
 もちろん、力でひっぺがすのは簡単なのだが、「バカー!」と泣かれたりして後味が悪い思いをしたりするので、なんとか円満に帰ってきたい。

 こちらも自転車を投入するというのは一案だったが、他の園児と違い、うちは歩いて50mの距離である。何処かからの帰りに直接まわり、クロスバイクのフレームにまたがらせて帰ってきたことはあったが、毎回出すのも面倒だ。妹は時々、子供用の席を取り付けて乗せてあげたら、というのだが、常時つけておくならまだしも、自分の外出用クロスバイクだから付け外しが必要だし、安全面で不安なのでそのアイディアは棚上げになっている。

 ではどうするか、と思って最近やり始めたのが肩車である。2歳ぐらいの頃に一度試したが、その頃は頭に捕まるということがわからなかったので、不安定だった。体重は増えているが、今の方がやりやすい。これは世のお母さん方の自転車と比べてもなかなかレア感があったようで、甥ぞうも喜び、現在ブーム中である。

 肩車というと、亡父は肩車した時にオレの顔面を鴨居に直撃させて母に非難されたそうで、当の本人としても、あまり記憶がない。代わりに思い出すのは、いつもこれである。

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機動戦士ガンダムSEED』より

 この父アル・ダ・フラガ、と、息子ムウ・ラ・フラガは、後に親子仲がものすごく悪くなり、父親は自分のクローンを作って後継者にしようと企むという設定。息子は父親について「ひどい親でいい思い出はない」と語る。が、こんな写真も一方では残っていて、大富豪という設定だが肩車なんて庶民的なこともするのか、と思ったりと、後の話とイマイチつながらない、すっきりしない違和感のせいでかえって印象深かったりする。

 今、だいたい体重16キロで、「おれ4歳やから重いで」「なんで赤ちゃんのおれは肩車危なかったん?」と言いながら乗っかっている甥ぞうは、いつかこの頃のことを思い出すのかな、と考える。いつか彼自身子供を持って、その時、オレがいなくても、ふと思い出してくれたらいいな。


 あまり本は読めていないが、読書メーターにちびちびと記録をつけている。近頃は、月に2〜4冊か。一番読んだ年は主にミステリーやホラー小説を確か248冊読んだのだが、あれは98年か99年だったか。若かったとしか言いようがない。

bookmeter.com

日常

 早いもので、前職である某映画館を閉館に伴い退職してから、二ヶ月が経過した。1997年末に入社し、2008年以降は副業として月に15日ほど通い続けていた職場がなくなり、長年の習慣であった通勤をする必要もなくなった。
 それと時を同じくし、現在も世界中を巻き込んでいる新型コロナウイルス問題が勃発し、日頃楽しんでいた自分の趣味的なことも休業に追い込まれ、大打撃を受けている。

 映画館だった職場通いと並行して、映画館で映画を観ることが趣味だった。が、今や大手、ミニシアター、どこも軒並み休館し、ホームであった某映画館以外でも映画が観られなくなってしまっている。
 一方、15年ほど、週に1〜2回通っていたキックボクシングも、これを書いている現在、ジムが休館中である。緊急事態宣言が解除されるのか見通しは立たず、いつから通えるのか、かつてのようなトレーニングが再びできるかは定かではない。

 今は外出を控えて引きこもり、映画は配信や積みソフトを消化。運動はロードバイクで河川敷を50キロほど流す……。そんな日々を繰り返している。4月はそれに終始し、5月もこのままだとそうなるのか……全く先は見えない。

 3月から、新しい副業を探そうと4社ほど面接を受けてみたが、結果は芳しくなかった。選んだ業種が良くなかったか、中年男性のWワークに対する眼差しはあまり暖かいとは言えないし、募集を眺めていても業種は絞られていて、人気のあるところには生活難の人が殺到しているのではないか……そんな見えないところへの想像も湧いてくる。

 ……そんなこんなで趣味は制限され、仕事も決まらず、目減りした収入と変わらない納税額を眺めてため息をつく毎日を過ごしている。

 怠惰な毎日の中で考えたのが、「せめて日記でも書くか」という、典型的なダメ人間の思考だっ!

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怠惰な日々

 それでも今のこの気持ち、この新型コロナの時代の空気みたいなものを記録することに、何か意味があるのではないか、と半信半疑ながら、Twitterよりは多少長いこの文章を残しておくこととする。しばらく続く予定である。


 4月は妹に『三体』を借りて読んでいた。あまりSFを読まないのだが、過去にソウヤーの『ターミナル・エクスペリメント』を読んだ時のような知的興奮を覚え、痺れる思いだった。宇宙を旅する話もあり450年後、とか気が遠くなるような単位も出てくるが、中国ではこの三部作が2010年に完結していたそうで、10年経ってやっと本邦に届いたのも、宇宙旅行のスパンみたいなもんなんじゃないかと思われ、年月にクラクラする思いだ。

三体

三体

  • 作者:劉 慈欣
  • 発売日: 2019/07/04
  • メディア: ハードカバー
三体

三体

ルシフ様の2019年読了本

2019年の読書メーター
読んだ本の数:45
読んだページ数:10699
ナイス数:17

月の骨 (創元推理文庫)月の骨 (創元推理文庫)感想
デビュー作ほどのインパクトはなかったが、イマジネーションと現実を混在させたような世界観は健在。夫婦の会話や互いの関係を書いたシーンだけずっと読んでおれそうな筆致も素晴らしいし、そこから繋がるラストも号泣ものなんですが……。
三部作の一本目ということで、続きにも期待。
読了日:01月03日 著者:ジョナサン・キャロル
ブラック校則ブラック校則
読了日:01月06日 著者:荻上チキ,内田良
炎の眠り (創元推理文庫 (547‐3))炎の眠り (創元推理文庫 (547‐3))感想
読んでて突然「ストロー」の下りで泣いてしまった。相変わらずこういうところがいいんだ……。
オチにも関連するが、クライマックスでは主人公のやることが確かに怖くて、『ジョジョ』のボヘミアン・ラプソディ回も思い出したところ。
読了日:01月06日 著者:ジョナサン・キャロル
空に浮かぶ子供 (創元推理文庫)空に浮かぶ子供 (創元推理文庫)感想
創作にまつわる狂気、というと簡単すぎるのだが、ラストの一歩手前で知らず知らず毒され切っていることに気づいた時は、我知らず鼓動が大きくなりましたわ。映画ネタも面白い。
読了日:01月17日 著者:ジョナサン・キャロル
作家の収支 (幻冬舎新書)作家の収支 (幻冬舎新書)感想
淡々と、サラッと書いてあるがゆえに「自慢かよ!」と言いたくなるが、書ける人、稼げる人というのはこういうものなのだろうな。この人ならではの稼ぎ方も面白いが、一般的データも参考になる。
読了日:01月18日 著者:森博嗣
友達以上探偵未満 (角川書店単行本)友達以上探偵未満 (角川書店単行本)
読了日:02月09日 著者:麻耶 雄嵩
ババァ、ノックしろよ!ババァ、ノックしろよ!
読了日:02月09日 著者:
フランス人ママ記者、東京で子育てするフランス人ママ記者、東京で子育てする
読了日:03月02日 著者:西村・プペ・カリン
エデン(新潮文庫)エデン(新潮文庫)感想
数年ぶり、2回目に読んだわけだが、その間に『弱虫ペダル』を全巻読み、ツール・ド・フランスも総集編を通して見るようになったおかげで(笑)、入り込み方が全く変わったわ。楽園を駆け抜ける勝負師どもへの賛歌。
読了日:03月06日 著者:近藤史恵
殺人鬼にまつわる備忘録 (幻冬舎文庫)殺人鬼にまつわる備忘録 (幻冬舎文庫)
読了日:04月06日 著者:小林泰三
我らが影の声 (創元推理文庫)我らが影の声 (創元推理文庫)感想
過去が追いかけてきて、自分の凡庸さ、卑劣さをバッサリと断罪していく恐怖。誰だってそんな高潔ではいられないのだが、卑近さゆえの罪は必ず代償を求める。
キャロル版『IT』とでも言うべきストーリーだが、読後感はおなじみのアレ……。
読了日:04月16日 著者:ジョナサン・キャロル
夢を見続けておわる人、妥協を余儀なくされる人、「最高の相手」を手に入れる人。 “私"がプロポーズされない5つの理由夢を見続けておわる人、妥協を余儀なくされる人、「最高の相手」を手に入れる人。 “私"がプロポーズされない5つの理由
読了日:04月22日 著者:仲人T
奴隷商人サラサ~生き人形が見た夢~ (光文社文庫)奴隷商人サラサ~生き人形が見た夢~ (光文社文庫)感想
作者初のシリーズものということだが、印象としては上中下巻の中巻? エログロな題材を生真面目に描き切る筆致は、一冊で終わらずこうしてストーリーを展開させるとより生きるのかもしれない。今作では完結しないが、この引きこそが明日もしれない奴隷の運命そのものか、とも思わせられた。
読了日:05月24日 著者:大石 圭
ソード・ワールドRPGリプレイ集スチャラカ編1 盗賊たちの狂詩曲 (富士見ドラゴンブック)ソード・ワールドRPGリプレイ集スチャラカ編1 盗賊たちの狂詩曲 (富士見ドラゴンブック)
読了日:05月25日 著者:山本 弘,グループSNE
ソード・ワールドRPGリプレイ集スチャラカ編2 モンスターたちの交響曲 (富士見ドラゴンブック)ソード・ワールドRPGリプレイ集スチャラカ編2 モンスターたちの交響曲 (富士見ドラゴンブック)
読了日:05月25日 著者:山本 弘,グループSNE
ソード・ワールドRPGリプレイ集スチャラカ編3 終わりなき即興曲 (富士見ドラゴンブック)ソード・ワールドRPGリプレイ集スチャラカ編3 終わりなき即興曲 (富士見ドラゴンブック)
読了日:05月25日 著者:山本 弘,グループSNE
二重生活 (角川文庫)二重生活 (角川文庫)
読了日:06月17日 著者:小池 真理子
お砂糖とスパイスと爆発的な何か—不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門お砂糖とスパイスと爆発的な何か—不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門
読了日:06月23日 著者:北村紗衣
因業探偵~新藤礼都の事件簿~ (光文社文庫)因業探偵~新藤礼都の事件簿~ (光文社文庫)
読了日:07月16日 著者:小林 泰三
愛は、こぼれるqの音色 (TH Literature Series)愛は、こぼれるqの音色 (TH Literature Series)感想
 「欠落を抱えたイケメン」というこの世で最も美味しい者を主人公に、「女性向け」を謳うSFでありながら、大藪春彦ばりのキレッキレのノワールが展開される表題作に悶絶!
 一方で中編『密室回路』で示された救いも心地よい。確かにこれは著者の現時点での到達点なのかも……。

読了日:07月18日 著者:図子 慧
スティグマータ(新潮文庫)スティグマータ(新潮文庫)感想
文庫で再読。ツール・ド・フランス真っ盛りのこの時期に読むのが、やっぱり最高ですね。『エデン』再読の際にも思ったが、この期間の読み手である自分の変化が大きく、ロードレース部分への没入度が桁違いになった。
読了日:07月19日 著者:近藤史恵
みかんとひよどり (角川書店単行本)みかんとひよどり (角川書店単行本)感想
山の寒々とした舞台で幕を開けながらも、そこに秘められた豊饒さを都会と対比しながら描き、それぞれ違う人生を浮き彫りにさせる。シンプルながら、近年ますます冴え渡る作者の眼差しと筆致に酔う一本。猟師の人は、ちょっとかつての整体師さんを思い起こさせるな。
読了日:08月10日 著者:近藤 史恵
嘘は罪 (文春文庫)嘘は罪 (文春文庫)感想
不倫浮気不倫浮気不倫浮気不倫浮気不倫浮気不倫浮気の十二本からなる短編集。お題固定で十本ネタ出ししてください、と言われて勢い余って十二本も書いたような代物で、90年代の価値観ってこんなだったっけ、と思いつつも、名匠の技巧が楽しめる。
読了日:08月19日 著者:連城三紀彦
新ロードス島戦記 序章 炎を継ぐ者 新装版 (角川スニーカー文庫)新ロードス島戦記 序章 炎を継ぐ者 新装版 (角川スニーカー文庫)感想
新章がスタートする、という事なので、読んでいなかったこの「新」に手をつけてみることに。これはその中でも序章で、物語の前段に当たる部分。蛇足なんじゃないの?という危惧は読む前から抱いているわけだが、果たして……?
読了日:08月25日 著者:水野 良
あなたに贈る×(キス) (PHP文芸文庫)あなたに贈る×(キス) (PHP文芸文庫)
読了日:08月27日 著者:近藤 史恵
溺れる女 (角川ホラー文庫)溺れる女 (角川ホラー文庫)
読了日:08月30日 著者:大石 圭
アルスラーン戦記11魔軍襲来 (らいとすたっふ文庫)アルスラーン戦記11魔軍襲来 (らいとすたっふ文庫)感想
10巻読んだのが20年前だが、全く気にせずに読む(そもそもこの巻が出たのも14年前とか……)。対魔物戦とか、ここだけ読めば割合面白くなりそうな気がするのだが、今後の展開やいかに……。
読了日:09月14日 著者:田中芳樹
アルスラーン戦記12暗黒神殿 (らいとすたっふ文庫)アルスラーン戦記12暗黒神殿 (らいとすたっふ文庫)
読了日:09月14日 著者:田中芳樹
5分でわかる10年後の自分 2030年のハローワーク5分でわかる10年後の自分 2030年のハローワーク感想
書かれた趣旨とは全く違うかもしれないが、来年に転職(というほど大げさなものでもない)を控えたおっさんとしても、大変示唆的で勇気づけられる内容を含んだ一冊。fuck失業!
読了日:09月17日 著者:図子 慧
新ロードス島戦記1 闇の森の魔獣 新装版 (角川スニーカー文庫)新ロードス島戦記1 闇の森の魔獣 新装版 (角川スニーカー文庫)
読了日:09月23日 著者:水野 良
新ロードス島戦記2 新生の魔帝国 (角川スニーカー文庫)新ロードス島戦記2 新生の魔帝国 (角川スニーカー文庫)
読了日:09月23日 著者:水野 良
新ロードス島戦記3 黒翼の邪竜 (角川スニーカー文庫)新ロードス島戦記3 黒翼の邪竜 (角川スニーカー文庫)
読了日:09月23日 著者:水野 良
新ロードス島戦記4 運命の魔船 (角川スニーカー文庫)新ロードス島戦記4 運命の魔船 (角川スニーカー文庫)
読了日:09月23日 著者:水野 良
新ロードス島戦記5 終末の邪教(上) (角川スニーカー文庫)新ロードス島戦記5 終末の邪教(上) (角川スニーカー文庫)
読了日:09月23日 著者:水野 良
新ロードス島戦記6 終末の邪教(下) (角川スニーカー文庫)新ロードス島戦記6 終末の邪教(下) (角川スニーカー文庫)
読了日:09月23日 著者:水野 良
アルスラーン戦記13蛇王再臨 (らいとすたっふ文庫)アルスラーン戦記13蛇王再臨 (らいとすたっふ文庫)
読了日:09月27日 著者:田中芳樹
アルスラーン戦記14天鳴地動 (らいとすたっふ文庫)アルスラーン戦記14天鳴地動 (らいとすたっふ文庫)
読了日:09月27日 著者:田中芳樹
屍人荘の殺人 屍人荘の殺人シリーズ (創元推理文庫)屍人荘の殺人 屍人荘の殺人シリーズ (創元推理文庫)感想
大変面白かったが、映画版はビジュアルが寒いことになりそうだ。ラストの決め所の呼吸も小説ならでは、と言う気がするね。脳内で補完が効くからな。
読了日:10月04日 著者:今村 昌弘
皆殺し映画通信 骨までしゃぶれ皆殺し映画通信 骨までしゃぶれ
読了日:10月04日 著者:柳下 毅一郎
ボーダー 二つの世界 (ハヤカワ文庫NV)ボーダー 二つの世界 (ハヤカワ文庫NV)感想
老夫婦モチーフが多いな! ちょっとびっくりしてしまうぐらいロマンチックで、吐きそうなぐらいに甘くて、とてもとても気障で……それゆえに恐ろしい話ですね。
『モールス』の続編である短編も、マジかよ!と思ったね。映画『ボーダー』ももちろんオススメ!
読了日:10月19日 著者:ヨン アイヴィデ リンドクヴィスト
ノスタルジア (双葉文庫)ノスタルジア (双葉文庫)
読了日:11月12日 著者:小池真理子
ゴースト・スナイパー 上 (文春文庫)ゴースト・スナイパー 上 (文春文庫)
読了日:12月08日 著者:ジェフリー・ディーヴァー
ゴースト・スナイパー 下 (文春文庫)ゴースト・スナイパー 下 (文春文庫)感想
ハイテクを恐れず作品に取り込んでくるシリーズで、狙撃者の古臭いイメージもあっという間に今は昔……。しかし医療技術も最新のものを描かんといかんせいか、右腕が動きエアロバイクまで漕ぐようになってしまったリンカーン・ライム先生。次は左腕か、と思われたが、これを回避する理屈の豪腕っぷりにもなかなかびびらされたわ。
読了日:12月08日 著者:ジェフリー・ディーヴァー
ゲーム・オブ・スローンズ:コンプリート・シリーズ公式ブック ~ウェスタロスとその向こうへ~ゲーム・オブ・スローンズ:コンプリート・シリーズ公式ブック ~ウェスタロスとその向こうへ~
読了日:12月15日 著者:マイルズ・マクナット
吸血鬼吸血鬼
読了日:12月31日 著者:佐藤亜紀

読書メーター

エマ・ストーンよ、永遠に。『ゾンビランド:ダブルタップ』に寄せて

 その女優、エマ・ストーンとの出会いは『ゾンビランド』だった。荒廃しゾンビが彷徨う世界で、妹と共に生き抜く詐欺師姉妹の姉、ウィチタ役。のちに『EASY A』(小悪魔はなぜモテる?)、『スーパーバッド』と鑑賞。いつだったか、誰かがこう呼んでいるのを聞いた……。

ゾンビランド (字幕版)

ゾンビランド (字幕版)





「オレたちのエマ・ストーン



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ゾンビランド』より

 「オレたちのエマ・ストーン」とは何か? それは上記三作を観たところの印象によると、まあだいたいこんな感じだ。
 華のある美人なんだけど、親しみやすくて、「オレたち」つまり、しょーもないボンクラ男子の話も聞いて笑ってくれて、なぜだかいつも寄り添ってくれる存在。それでいてしっかり自己像を持っていて、自分の意志で一緒にいてくれる。ある意味、ファンタジーの具現化、善意の塊のような存在。ボンクラにとっての理想のパートナー像かもしれない。
 甘っちょろい設定だな、いねーよ、こんな女!とぶった切るのは簡単だが、彼女のキャラクターはそう言いたくない絶妙なところを突いてくる。『ゾンビランド』では男を騙す詐欺師役ということで、冷たい人間なのかと思わせるが、故郷が滅んだことを知ってショックを受ける主人公に、胸を突かれたような顔を見せる。ごくごく平凡な同情心、良心の表現だが……いや、この瞬間に欲しいものって、他にあるか? こんな平凡な優しさこそが、この世界で何より尊いんじゃあないか。このキャラクター性は、他作品にも共通する。


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ラ・ラ・ランド』より

 そんな定番とも言えるキャラになった「オレたちのエマ・ストーン」だが、その言わば最終回となったのがデイミアン・チャゼル監督の『ラ・ラ・ランド』だった。自分の店を持つとか、そんなわけのわからない誇大妄想を抱いたボンクラ男ライアン・ゴズリングを好きになって、並んで歩いてくれるエマ・ストーン
 しかし、悲しいかな、彼女には女優という夢があり、二人はそれぞれの夢のために道を違える。もうオレたちとは一緒にいてくれない。時は流れ、夢は夢でなくなり、ゴズリンは自分の店を持った。そこへ夫と共に訪れるエマ・ストーン。もしかしたら、二人が一緒にいられた未来があったかもしれない。だが、現実がつながっているのは、そうでないここだ。言葉をかわさず再び別れる二人。
 だけど、あそこで去り際に振り返ってくれるのが、やっぱりエマ・ストーンが「オレたちのエマ・ストーン」である所以なんだね。他の女優だったらシリーズを時々考えるが、あそこで振り返ってあの表情を見せる優しさ、甘さこそがエマ・ストーンなんですよ。例えばキャリー・マリガンだったら、振り返らずに店の外に出て、そこでやっと一粒涙を零すだろう。ガガ様だったらゴズリンの曲が終わった瞬間にはステージにいて、すかさず一曲決めるはずだ。ブリー・ラーソンなら……おっと話がずれた。思考実験は尽きないが、あのラストのあの味はエマ・ストーンでないと出せないんである。


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バトル・オブ・ザ・セクシーズ』より

 そして続いてやってきたのが『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』、これは史実、設定からして、まったく「オレたちのエマ・ストーン」とは関係ないことがわかっていた。エマ・ストーンが演じるビリー・ジーン・キングは、自らのセクシャリティ、テニス・プレーヤーとしての矜持を賭けて戦う。彼女の選んだ彼女の人生だ。「オレたちのエマ・ストーン」は今、「エマ・ストーンエマ・ストーン」になって、初めて自分自身のために戦っている。その戦いに「オレたち」の介在する余地はない。
 ……だけど、それは本当に関係ないのか? 今までずっとエマ・ストーンに寄り添ってもらった「オレたち」だからこそ……今こそ応援すべきじゃないのか? オレたちは今こそ「エマ・ストーンのオレたち」となって、自分の戦いを始めた彼女を支えるべきじゃないのか? 襲いかかるのはスティーブ・カレル。この男もまた自らの誇りを賭けている。重い打球に苦戦するエマ・ストーン。映画館の客席、否、コートの観客席で、自然と応援する声が出る。

エマ・ストーン! エマ・ストーン! エマ・ストーン


 その声援に応えるかのように、急角度のダンクスマッシュが決まり始め、時代遅れの恐竜を圧倒する。この日のために走り込んできた、アスリートのスタミナが尽きることはない。いけ、いけ、エマ・ストーン
 作中では、あの後に別れる夫の人が、あるいはこの心情に最も近かったのかもしれない。彼もまた愛されることなく道を違えるが……それでも束の間、かけがえのない瞬間があったのだ。



 こういった後日談を経て、オレたちとエマ・ストーンの物語は、完全に終わったわけですよ。彼女は自分の道を歩き始め、きれいに終止符が打たれた。ちょっぴり物悲しくて、でも素晴らしいラストだった。いい関係だったんじゃないかな。

 しかしそこで『ゾンビランド:ダブルタップ』が来てしまうわけなんです。
 まさかの続編は、前作から10年、作中でも10年。もうアビちゃんとか言ってられないぐらい、アビゲイル・ブレスリンもすっかり大人になっている。もちろん、オレたちのエマ・ストーンも10年歳を取った。そしてオレたちの分身ことジェシー・アイゼンバーグもまた……。
 いや……なんか心配になっちゃうんですよ。これはつまり『ラ・ラ・ランド』では「夢」として描かれた、もう一つの未来なわけです。「オレたちのエマ・ストーン」と10年経ってもまだいっしょにいられる未来。でも10年経ってオレたちは、「オレたちのエマ・ストーン」と……果たしてそんなにうまくやれてるんだろうか? 関係は、始めるよりも続けて維持していく方がずっと難しいと言われます。10年という年月が経って、「オレたちのエマ・ストーン」もまた、変わってしまったんじゃないか。
 いや、「オレたちのエマ・ストーン」が変わらず「オレたちのエマ・ストーン」のままだったとしても、オレたちは今、その優しさに値する人間であるのかな。あれから、何か成長できているのかな。甘えるばかりのどうしようもない人間になってしまっているんじゃないかな。そんな結末を避けた『ラ・ラ・ランド』はどうしようもなく正しいんだけれど、でも、それとは違う未来もあったんじゃないか……その答えが、もしかしたらここにあるんじゃないか。

 そんなわけで観てきました『ダブルタップ』。
 いや……なんかすいません、ほんと。10年経っても相変わらずコロンバスことジェシー・アイゼンバーグは、口だけの頼りないヒョロヒョロモジャモジャした男で、目覚ましい成長なんてまったくしておりません。もちろん悪い奴じゃあないですが、意思も弱くて半端に傷つきやすい、ただの男です。10年経って、二人の関係もちょっとマンネリなんだが、そこで今さらプロポーズする外した感……。
 しかしそんな相変わらずの男に対し、たまにカリカリするんだけど、やっぱり帰って来てくれるエマ・ストーンの、10年経っても変わらぬ少しも気取らない感じな……。
 ああ……なんだろうな、「いつもありがとう」……これしか言葉が見つからない……。きみがいるから、この世界には価値があるんだ。これからもずっとずっといてください。フッ、これを手放すとは、やっぱりバカな野郎だったな、ゴズリンは……!

 エマ・ストーンありがとう、ありがとうエマ・ストーン! アカデミー賞も取って、役の幅も広がって、本当に素晴らしい女優になったけど、同時に定番キャラもアップデートされ、「オレたちのエマ・ストーン」は今作でも健在だった。10年経っても変わらないもの変わったものを、作り物じゃなく確かに見せてくれた。これはリンクレイターの『ビフォア』シリーズにも匹敵する表現ではないかね。こうなると、また10年後が見たいな。10年後も大して変わらずにウダウダ喧嘩してんのかもしれないけど……でも、やっぱりいっしょにいたいね。

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ゾンビランド:ダブルタップ』より