”ファーストクラスは落ち着かない?”『クレイジー・リッチ』
アジアの大金持ち映画!
ニューヨークで生まれ育ったレイチェルは、彼氏のニックが友人の結婚式に出席するのについていくことに。初めて彼の生家のあるシンガポールを訪ねるのだが、なぜかファーストクラスに乗せられ、彼が生まれについて言葉を濁し続けていたことに気づく……。実はニックは大富豪の一人息子だったのだ!
中国系アメリカ人から見たシンガポールのど金持ちを描いたロマコメ。大学で教鞭を取る主人公と、絵に描いたようなイケメンの彼。その彼に家族に紹介したいと言われ、結婚を意識しつつシンガポールへ……しかしなぜか人生初のファーストクラスに案内され、逆に不安に……えっ、この人って実は金持ちだったの?
『星の王子ニューヨークへ行く』というエディ・マーフィのコメディがありましたが、あのファンタジーでしかなかった映画が、逆にリアリティライン上がって来てるような印象さえ受ける。東南アジアの旧家の金持ちが経済発展によって、その由緒正しき家柄はそのままにとてつもない富豪になっているのだな。十数年まえからすでにホテル一個ポンと買うような金持ちで、その感覚がすげえ! で、庶民感覚全開の主人公はそれにまったくついていけない。
当然、見ているこっちも庶民なわけだから、いいなあと思いつつ圧倒されるようなついていけないような、うらやましいような居心地悪いようななんとも言えない気持ちを味わい続けることに。
彼氏は人間的にはなかなかいい奴なのは間違いないのだが、男って家族のことには気を回さないのだよな。友達や従姉妹が面倒見てくれるからって、ヒロインを放置する局面が長いのも困り者。まあ甘やかされている長男であるがゆえか……。
バチェラーパーティのクズっぷりも、金持ちであるがゆえに際立ってて、ヒロインはそこでベッドに生魚を放り込まれるという嫌がらせを受けて悶絶。彼氏は親友と共に静かなビーチにヘリで(……)エスケープしてなんとか面目を保ったか。
彼氏のお母さん役はミシェル・ヨーということで、さすがの貫禄。完全にこの家の流儀そのものとなりつつも、ふと外から来た者の苦労を垣間見せる内面描写も素晴らしいですね。で、こっちのお母さんが最初は厳しくて、祖母の方がまだ大らかなのかと思いきや、主人公の出生を知った途端にババアが手のひら返したぞ! FUCK!
彼氏はボンボンだけどそれほど骨のない奴ではなく、家を捨てると言うのだけれど、いやいやちょっと待ちなさい、ということに。
ミシェル・ヨーお母さんも「嫁」だからそもそも外の人なのに、今やすっかり「家」の理屈を内面化していてそこに縛られているのが悲しく、本人も馬鹿じゃないんで薄々それに気づいているのだけれど、そういう役割を演じるしかないと思い込んでいる。クライマックスは主人公との意見の対立を麻雀に託して表現するのだが、この互いの矜持がぶつかるところはしびれましたね。
人生におけるパートナーを選ぶ問題と、それぞれの家族の問題は、本来別の話なのに密接に絡まり合ってしまう。それまでの人生とこれからの人生を対比させ、時に変えることを要求してくる。パートナーを選ぶことと家族の流儀を受け入れることは一緒にはならないのだが、「家」を価値観とする人はそこを簡単に混同してくる。まあブッチすりゃあいいんだけど、婚約者ともミシェル・ヨーとも腹を割って話すところで問題の解決を図るあたりが、非常に現実的ですね。
エコノミー席での飛行機プロポーズもびっくりするぐらい感動的で、オレも妻に先日指輪をあげましたが、ちょっと影響されてるところもあったりなかったり……。
ところで、母親はこれでよかったとしても、ババアが一切納得してないと思うんだが……。まだ原作は続編があるらしいし、問題はまだまだ温存されているような気がするよ。これは前途多難だな……。まあ親友オークアフィーナさんが支えてくれるだろう!
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キャンペーンでタダでもらってしまった。『ビガイルド』はパッとしなかったが……。
”そして神話へ”『イコライザー2』(ネタバレ)
デンゼル初の続編!
元CIAの暗殺者で、死を装って姿を消していたロバート・マッコール。タクシー運転手をしながら、世に蠢く悪を密かに打ち倒している。そんな彼の元上官である親友でもあったスーザンが何者かに殺害される。スーザンの追っていた事件を調べたマッコールは、その手口の特殊性に気づき……。
今年、イベントで一作目を見直したところだったので、記憶も新しいままに続編に。冒頭、中東でヒゲつけて変装して列車に乗っているマッコールさん。母親から娘を無理やり引き離した父親を、部下をぶちのめした上で脅しつける! 普通に英語しゃべってて、なんでこのヒゲの変装してるのか謎だな……。まあアクション映画にはありがちな景気づけの冒頭アクションという奴ですな。
地元に帰って、取り返してきた娘を送り届けたマッコールさん、現在はタクシー運転手として仕事中。アプリで呼び出され多彩な人々の人生を聞きつつ送り届ける、なかなか充実した感じね。しかし、ある夜、レイプされた若い女を乗せることに。彼女を病院に送り届けた後、車まで連れてきた男の部屋に「カードが通らなかったんですが……」とかなんとか言って侵入。輪姦した金持ち男どもをまとめて成敗! えーっ、まさかの顔見せアクション二発目!? 古巣のCIAの情報をもらって海外に行ったり、国内で地道に「仕事」したり何かと忙しいという表現であろうか……。
続編ということで過剰なサービス精神が盛り込まれていて、デンゼルのキメ顔&死んだ目にもますます磨きがかかる。近所に住む絵で生計を立てたい青年に優しく説教を決め、良いデンゼルと悪いデンゼルがここに来て融合したような狂気感……それでいて危うさはなく、どこまでも骨太な……。
老人ホームの送迎では、収容所時代に亡くした姉の肖像画を探すおじいさんに協力。前作から引き続き登場のメリッサ・レオさんのコネを使いますよ。しかし、その彼女が何者かに殺されてしまう。強盗らしき二人組がホテルの彼女の部屋に殴り込んで大格闘になり、やがて死体が発見される……。刺殺痕は「プロの手口」と言われ、何か映像と齟齬があるな、と思ったらトリックが……ここの処理は割と好き。
現地でメリッサ・レオと共同で動いている捜査官がペドロ・パスカルで、彼女亡き後マッコールさんも彼に接触。マッコール生存を知らなかったので超驚いていたが、元々「マック」と呼ぶ仲だった。
中盤を過ぎ、彼の家を訪ねていくマッコールさん。妻に挨拶して娘とハイタッチ……。まあキャスト的には薄々この人が悪者なんでしょ、ということが想像ついてるわけだが、ご家庭に異物のごとく入り込んでるマッコールさんがひたすら怖い。
ペドロ・パスカルもかつてはマッコールさんと同じく、暗殺者だったわけだが、部門解体によって冷や飯食いに。同じチームのメンバーと共に、裏稼業に手を染めるようになっている。
今回は敵キャラが同業者ということもあって、前作の犯罪組織よりは物量的にはスケールダウン。しかし、個々の技量は高いという面ももちろんあるわけで、お互い宣戦布告しあってから殺しにかかるという、どこかしらスポーツライクなクライマックスを迎える。この4対1というパワーバランスも絶妙で、まあこれでやっとマッコールさんに対して勝負になるかな、という印象。しかし、彼らに唯一勝つチャンスがあったとすれば、最初にその4対1で顔合わせした時、全員で仕掛けることだったと思うよ。そこでニヤニヤしながら娘と戯れてみせるマッコールさん、マジで最悪だな……。
この夏は地元も台風で散々やられましたが、この映画のクライマックスも大暴風が吹き荒れます! しかしこの悪天候で視界が悪い中、マッコールさんが地形を知り尽くしている地元にぞろぞろ乗り込むとか、自殺行為以外の何物でもないだろ……。
今回はホームセンター仕事人ではないので、普通に銃とナイフを使い、かつての暗殺者スキルを全開に。クライマックスはほぼ敵側視点になって、「姿なき敵」に一人また一人と仲間を失っていく緊張感、悲壮感が描かれ……どっちが悪者なんだ!
続編ということで、新コンセプトもありつつ縮小再生産感は否めなかったが、マッコールさんの大活躍を見る分には最高の映画でしたね。あまり説明的になりすぎず主人公の如き無口な「粋さ」を目指してるような演出も作風にマッチしていてよし。最後はおじいさんのところに連絡が来て、ああ肖像画が見つかったのねと思ったら、死んだと思ってた姉貴本人が出てきたのには、流石にやりすぎ感があってびっくりしました。だがこれもこれでよしだな……マッコールさんが行くところ、悪人にも善人にも、その人生に応じた報いが訪れるのだ。そして神話(スーパーヒーロー)へ……。
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”どこまでも上を目指せ”『スカイスクレイパー』
ロック様映画!
高さ1000mを超える地上最大のビル、「ザ・パール」が完成した。元FBIだったが、事故により片脚を失ったウィルは、経営するセキュリティ会社の業務の一環として、家族とともにそのビルに住むことに。入念なチェックを終えて安全宣言を出したウィル。だが、何者かの陰謀が忍び寄り……。
相変わらず売れっ子だなあ、というドウェイン・ジョンソンが、今度は高いところに登るというお話。これも中国資本で舞台は香港。元FBIだったが、爆弾によって片足を失ったロック様、今はセキュリティチェックの会社を経営中。FBI時代の仲間の誘いで、超高層ハイテクビルのチェックという大きな仕事を任され、家族を連れて香港に滞在中。
かつて爆弾に吹っ飛ばされた時の担当医が今の妻である、という、どんだけモテるんだって設定は今作でも健在。妻役はネーヴ・キャンベルさん。おお……『スクリーム4』以来じゃないか? 医者なんだけど元軍医ということもあって喧嘩も強い、というキャラがいいですね。この人は頭も切れるし生き物として強い感があって、中年になって余計にタフそうになっているな。
もともと強いロック様がちょうどいいハンデぐらいの感じで義足をつけているが、もうすっかり馴染んでて、別に歯がゆさを感じているような描写はなし。元マッチョのアイデンティティの揺らぎなんて微塵もなく、単にテクニカルなハンディキャップでしかない印象。実は裏切っている元同僚など、ちょいちょい過去のトラウマに絡みそうなところもあるんだが、あまり掘り下げない。
正直、敵もあまり強そうじゃないので、やっぱり最大の難関は高いビルということになる。『ダイ・ハード』と言うよりも、雪山なんかの災害もの、ロック様だと『カリフォルニア・ダウン』的な定番芸という感じね。
今作は普通のスクリーンで観たのだが、とにかく高いところが恐ろしい! 問題のビルに飛び移るために隣のクレーンをよじ登る。火事になってる中層階より上に行かなければならないために、たまたまそこより高いクレーンがあって良かった……という超御都合主義。しかし高さは本物で、ケツの穴が縮み上がるぜ! 誤解を受けて香港の警察に追われてるせいで、背後から追跡もくるし、大慌てでジャンプしなければならない。
その後も義足使ってビルの壁面に張り付いたり、たっぷり高さは堪能できます。中に入ったら入ったでバカみたいな吹き抜けがあってまた高い!
クライマックスは最上階のペントハウスで、悪者と大決戦。冒頭にカッコよさげな映像ユニットを見せてたが、それを鏡がわりにして『燃えよドラゴン』のパロディをやるような映像。これは何でも映せる感があって、イマイチ面白くなかったな……。
香港が舞台で、アジア系のど金持ちが建てたビルということで、これもまた『クレイジー・リッチ・アジアンズ』的な話なんだが、これだけ高いところで苦労したにも関わらず「また建てるよ」で締めるラストは、まあ金持ちならさもありなんと思いつつも、その懲りなさには感覚的に違和感も覚えましたね。ここは「早く地面に降りたい」「もう高いところはこりごりよ」的な台詞でワッハッハと締めるべきかと思ったが……。
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トマトが大暴れ! 伝説のカルト映画がついにBD化!
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まさかの10年後の続編は、ジョージ・クルーニーの黒歴史! 多幸感溢れるラストは必見!
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初のBD化で、日本版ではカットされた鬱エンディングも収録!
“バリアーに乗れ”『ザ・プレデター』
プレデターシリーズ最新作!
ローリー少年が起動させた父親からの贈り物……それはプレデターの通信装置だった? 傭兵である父のクインは、戦地でプレデターと遭遇。ヘルメットや装備を手に入れていたのだ。だが、通信装置の起動により、新たなプレデターが地球に飛来する……。
これもわざわざ次世代レーザーIMAXで見てしまった案件。かの『エイリアン・コヴェナント』でさえIMAXではやらなかったのに、格落ちと思っていたこれはIMAXになるのは、単に番組編成による巡り合わせか。
プレデターの操縦する宇宙船が大気圏に突入してきて、居合わせた特殊部隊と地上で一戦交える下りから幕開け。ここで出てくるのは普通のプレデター。おなじみの光学迷彩で透明化……してない! 透明になっているシーンでも丸見えになっている! これは観客だけにこう見えているのか、それとも特殊部隊もこういう風に見えてるのか、後者なら結構きついものがあるな……。後半のバリヤーの上に乗っちゃったりするあたりはむしろ笑えるので、まあこういうテイストなのだろう。
世界設定は、過去のプレデター襲来事件を踏まえて、ある程度研究が進んでいる状態。捕まえたプレデターで実験する一方で、実際に遭遇した兵士は病気扱いにして隔離しようとしている。主人公のボイド・ホルブルックさんもそんな一人。冒頭で仲間を失って、手に入れたプレデターのヘルメットを元妻の私書箱に送って隠そうとしたが、金がなくて解約されてたので家に届けられ、息子の手に渡ってしまう。
ADHDっぽいが天才的頭脳を持つ息子役は、『ルーム』『ワンダー』のジェイコブ・トレンブレイ君。さすがは天才子役だ、といいたいところだが、監督のシェーン・ブラックは子役の演技指導なんてまったく興味がなかったようで、後半は別に普通の子供と変わらんがな、という感じになっている。
それよりも描きたかったのは、主人公を始めとするPTSDや精神病と診断されてお払い箱になる寸前の兵士たちの連帯と再起なのだな。かつてトム・ベレンジャー主演の『野獣教師』という映画が90年代にあって、教師になった主人公のために退役軍人仲間が集結し、学校をマフィアから守って戦うという話だった。その中にメンタルを病んでる兵士も混じってたがそれに似てるな……。
いい歳したオッさんが部活ノリで集まってるのだが、映画自体は80年代からタイムスリップしてきたような話なのに、麻酔で寝てたオリヴィア・マンが目覚めるシーンでまったくセクハラしないところが現代映画だな。『五福星』を思い出すシーンでもあるのだが。
パワーアップした新プレデターは、サイズが大型化しているあたりのインフレ感があまり面白さに結びついていないかな、という気がする。やっぱりエイリアンと同じくプレデターというクリーチャー自体の頭打ち感がある中で、大きくなったり硬くなったりしてもそれで強い、価値があるというわけじゃないんだ、ということを言っていきたいな……何の話をしてるんだ。