“バリアーに乗れ”『ザ・プレデター』
プレデターシリーズ最新作!
ローリー少年が起動させた父親からの贈り物……それはプレデターの通信装置だった? 傭兵である父のクインは、戦地でプレデターと遭遇。ヘルメットや装備を手に入れていたのだ。だが、通信装置の起動により、新たなプレデターが地球に飛来する……。
これもわざわざ次世代レーザーIMAXで見てしまった案件。かの『エイリアン・コヴェナント』でさえIMAXではやらなかったのに、格落ちと思っていたこれはIMAXになるのは、単に番組編成による巡り合わせか。
プレデターの操縦する宇宙船が大気圏に突入してきて、居合わせた特殊部隊と地上で一戦交える下りから幕開け。ここで出てくるのは普通のプレデター。おなじみの光学迷彩で透明化……してない! 透明になっているシーンでも丸見えになっている! これは観客だけにこう見えているのか、それとも特殊部隊もこういう風に見えてるのか、後者なら結構きついものがあるな……。後半のバリヤーの上に乗っちゃったりするあたりはむしろ笑えるので、まあこういうテイストなのだろう。
世界設定は、過去のプレデター襲来事件を踏まえて、ある程度研究が進んでいる状態。捕まえたプレデターで実験する一方で、実際に遭遇した兵士は病気扱いにして隔離しようとしている。主人公のボイド・ホルブルックさんもそんな一人。冒頭で仲間を失って、手に入れたプレデターのヘルメットを元妻の私書箱に送って隠そうとしたが、金がなくて解約されてたので家に届けられ、息子の手に渡ってしまう。
ADHDっぽいが天才的頭脳を持つ息子役は、『ルーム』『ワンダー』のジェイコブ・トレンブレイ君。さすがは天才子役だ、といいたいところだが、監督のシェーン・ブラックは子役の演技指導なんてまったく興味がなかったようで、後半は別に普通の子供と変わらんがな、という感じになっている。
それよりも描きたかったのは、主人公を始めとするPTSDや精神病と診断されてお払い箱になる寸前の兵士たちの連帯と再起なのだな。かつてトム・ベレンジャー主演の『野獣教師』という映画が90年代にあって、教師になった主人公のために退役軍人仲間が集結し、学校をマフィアから守って戦うという話だった。その中にメンタルを病んでる兵士も混じってたがそれに似てるな……。
いい歳したオッさんが部活ノリで集まってるのだが、映画自体は80年代からタイムスリップしてきたような話なのに、麻酔で寝てたオリヴィア・マンが目覚めるシーンでまったくセクハラしないところが現代映画だな。『五福星』を思い出すシーンでもあるのだが。
パワーアップした新プレデターは、サイズが大型化しているあたりのインフレ感があまり面白さに結びついていないかな、という気がする。やっぱりエイリアンと同じくプレデターというクリーチャー自体の頭打ち感がある中で、大きくなったり硬くなったりしてもそれで強い、価値があるというわけじゃないんだ、ということを言っていきたいな……何の話をしてるんだ。
今日の買い物
『シェイプ・オブ・ウォーター』iTunes
今年のアカデミー賞!
『ゲット・アウト』iTunes
公開時の感想。
chateaudif.hatenadiary.com
”オレを食ってみろ!”『MEG ザ・モンスター』
ジェイソン・ステイサム主演作!
マリアナ海溝のさらに下、高い水温を保つ未知の領域が発見される。しかし、侵入した探査船が何者かに襲われ、身動きが取れなくなる事態が起きる。探査船に乗った元妻を救うために呼び出されたのは深海救助活動のプロ、テイラー。だが、彼の脳裏をかつての苦い記憶が過ぎる……。
わざわざIMAX3Dでサメ映画なんか見ちゃった、というぐらいの、何だか高い金払ってしまったなあ感があったのだが、さすがは中華資本、あからさまなB級企画にも関わらずめちゃくちゃ金がかかっている。舞台は中国沖だし、ヒロインはリーの方のビンビンさん。クライマックスも中国の海水浴場で、ほぼ中華映画。
割と理屈っぽく、古代生物の生存を語る序盤から、メガロドン登場の中盤、復活とどんでん返しと最後の決戦まで、割とそつなく、わかりやすすぎるぐらいにわかりやすい三幕構成になっている。
過去の因縁を背負ってブツブツ言うもののあっさり助けに来てくれるステイサム、ツンデレなリー・ビンビン、反目するも非を認めてすぐ謝る脇役など、キャラもわかりやすい上に、基本的に誰も憎めない。一応、まったく金持ちに見えない大金持ちレイン・ウィルソンが黒幕的な存在なのだが、こちらも対して悪人ではないし、海に飛び込むステイサムに対して思わず「カッコいい」と呟いてしまう観客の気持ちを代弁するくだりがあるので、むしろ共感させられてしまうというか。
そもそもG指定になるぐらいなので『ピラニア』みたいな殺戮シーンがないのも分かりきっているし、サイズ的に普通のサメより人間を食べるシーンが面白くなるか、というとそれも微妙なのだよな。
しかしつまらないかと言うとそうではなく、『ナショナル・トレジャー』という炭酸の抜けた『ダヴィンチ・コード』みたいな映画を撮ったジョン・タートルトーブの、分かりやすく当たり障りなくショーン・ビーンさえ殺さずに誰も嫌な気分にならないようにまとめ切る力は最大限に発揮されていて、見ている間はまあまあ楽しい。
実際に水泳選手でもあったというステイサムの飛び込む姿は美しく、水中でメガロドンとタイマンという設定にもそれなりの説得力を与え……与え……与えてるかは個人の判断に任せたい。この人のえらぶって見えない個性は、流石にスターだな、という気がしたものであるが……。
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”テニスの話をしよう”『ボルグ/マッケンロー』
【公式】 『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』 8.31公開/本予告
今年2本目のテニス映画!
1980年ウィンブルドン。20歳から実に4連覇を達成した若き王者ビヨン・ボルグは、絶大なプレッシャーの中で5連覇を狙っていた。だが、アメリカから来た天才プレーヤー、ジョン・マッケンローがそれを阻まんと立ちはだかる。対照的な立ち居振る舞いで氷と炎と称される二人のスター、世紀の激突が始まる……。
『バトル・オブ・セクシーズ』に続いての2本目。まあ『跡部vs手塚』もOVAの特別上映やってたけどな。
ウィンブルドン五連覇を狙う北欧の伝説的プレーヤー、ビヨン・ボルグと、台頭するアメリカの悪童ジョン・マッケンローの宿命の対決を描いた映画。割合は7割ボルグ3割マッケンローぐらいのバランス。
この二人が試合した、ぐらいのことは知っていて、最終的にはマッケンローがランキング1位になったこともわかっていたのだが、今作の舞台となるウィンブルドンでどっちが勝ったのかは知らずに見た。
わけがわからないぐらいの人気で、うかつに街も歩けないボルグさん。毎日プレッシャーに悩まされていて、コーチのステラン・スカルスガルドにも「五連覇しなきゃ忘れられる!ゴミだ!」と言うのだが、たぶんこの調子だと、二連覇目以降、毎年ずーっと言ってるんだろうね……。しかし今回、特にプレッシャーがきついのは、連覇を阻まんとする相手の存在もある。氷の皇帝ボルグに迫る、歯に絹着せぬ言動と激しいプレースタイルで知られる、炎の男、ジョン・マッケンロー……。
決勝で当たるだろう、と予想しつつもウィンブルドンは長丁場。一回戦から苦戦を強いられながら、ボルグは己とも戦い続ける。毎晩、全ラケットのガットの張りを踏んで確かめ、同じテニス選手の婚約者にカバンを寸分たがわず詰めてもらい、同じ車で会場に通い、シートが変わっているとイライラ……。ここまで来ると、もはやメンタルが強いのか弱いのかよくわからなくなってくる。
テレビに出ているマッケンローは悪口ばかり話題にされ、テニス自体のことが一向に話題にされないとこちらもイライラ。「テニスの話をしろ!」本人はボルグを倒す気満々だが、あまりに雑音が大きい。試合でも初戦からずーっと審判や観客に吠えまくり。
しかし、その映像を見るボルグ。恋人の「マッケンローは集中できてない」との評に「……いや、違う……」と否定。天才は天才を知ると言うが、逆に驚異的な集中力を嗅ぎとる。
一方のマッケンローも、共通の知人を通じてボルグが「冷静な男と言われてるが氷山の中身は活火山」と評されるのを聞いて、なんだかシンパシーが止まらなくなる。
炎と氷、と対照的なキャラクターとして認知された二人だが、実は多分に似た要素があり、凄まじい集中力と勝負への執念はもとより、内に秘めた怒りのコントロールなどメンタル面でもどっちも「炎」なんじゃね?という熱さを持っている。さらにトップ選手としてのプレッシャーや、先行し続けたイメージと自分自身のギャップにも悩まされているところも共通……。
テニスに限らず、全てのスポーツにおけるトップアスリートが抱える普遍的な問題だろうが、お互い段々と共感しかなくなってくる。
準々決勝で、マッケンローはダブルスのパートナーでもあったピーター・フレミングと対戦。同じ米国人で友人でもあるのだが……マッケンローの方は全然眼中になし! 最初からボルグしか見てないのは誰の目にも明らかで、フレミングも自分との対戦を忘れるな、とアピールしてきたのだが……相手にもならねえ! 試合前に愛用の踵のサポーターが見つからず、マッケンローが隠したと疑うフレミング、試合後にバッグから出てきたのを見て、マッケンローもさすがに呆れ顔。「そんなこすい真似するかよ、お前ごとき最初から敵じゃねえんだから」……とまあはっきりは言わないけど、露骨に態度で示しすぎ。「おまえはクソだ! 絶対にボルグみたいな偉大な選手にはなれない!」と捨て台詞を吐いて去るフレミング。彼がいなくなってから、一人で謝るマッケンロー……なんなんだ、この「素直になれなくて」劇場……。
一方、ボルグさんは初戦からヨレヨレしてて、コーチとも揉め、地力が違いすぎるので勝ってはいるものの、いまいち調子が上がらない。若い頃はそれこそ怒りをコントロールできない少年だったが、そのポテンシャルをコーチに見出され、あまりに若いまま勝ち続けてきた。負けられないと言うプレッシャーから一度も解放されることがないまま……。
下馬評は覆されることなく、1980年決勝はまさに頂上決戦に。やはり調子の上がらないボルグに襲いかかる悪童! しかし動かざること氷山の如し、1セット目こそ失ったものの、皇帝の鉄壁の防壁が機能し始め、2、3セットを取り返す。決勝に来てようやく本領発揮だが、このトーナメントの長丁場の最後の最後にこの底力を残しているのが、最強の絶対条件でもあるのだな……。
4セット目も攻めが空回りするマッケンロー、ここで終幕かと思いきや、コートチェンジ時にボルグが声をかける。「素晴らしい試合だ。君のテニスをしろ」と。この日のマッケンローは理不尽な判定や野次も相手にせず、ひたすら攻め続けていて、いつもの悪口ぶりは影も形もなし。あるのはテニスをすること、それのみ。かつて会見でも「テニスの話をしろ」と言い続けてきたわけだが、このウィンブルドンで初めてそのテニスの話をしてくれたのは、他ならぬボルグだったのだ。「テニスって楽しいじゃん」。
吹っ切れたようにさらに凄まじい集中力で、ボルグの猛攻をしのぎ続けるマッケンロー。タイブレークまで行き、7度のチャンピオンシップポイントを跳ね返し、逆転で取ったこの第4セットは今も語り草になる。
そしてファイナルセットも死闘は続き、観客の誰かはこうつぶやいたかもしれない。「この試合、いつまでも見ていたいな」。
2ゲーム差をつけなければ勝てない地獄のルールで、8ー6で制したのはボルグ。見事にウィンブルドン五連覇を成し遂げる。
試合が進めば進むほど、余計なものは脱ぎ捨てられ、純化されていき、最終的には二人の強者さえも一つになったかのような錯覚さえ生まれる。余計な言葉も遺恨もなく、もう清々しさしか残らない。
またその後の空港のシーンが素晴らしくてな。ボルグを見て一秒もためらわずに駆け寄ってくるマッケンローの素直な表情は、シャイア・ラブーフのベスト・アクトじゃないかね。舌禍でスピやんに見放されたラブーフがこのキャラクターを演じるというのが、またシンクロ感を生んだのか。
記録だけ見れば、マッケンローがウィンブルドンでボルグを倒して世界ランキング1位を取ったのは翌年で、歴史的にはそちらが重要なのかもしれないが、この年にすでにボルグは肩の荷を降ろす準備を始めていたのだな、ということもわかる。全ては自分次第なのだから。
まあ近年稀に見るさわやかな後味で、感動しましたね。他に何もないけど、澄み切った美味い水を飲んだような清々しさ。いい映画じゃった。
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“塵も積もれば”『アントマン&ワスプ』
シリーズ第二弾!
キャプテンとアイアンマンの戦いから2年……自宅謹慎になっていたスコットは、不思議な夢を見る。夢の中で見たこともない初老の女性になっていた彼だが、その彼の前に再びピム親子が現れる。かつて聞かされたハンクの妻の話に夢が関係あると言う。謹慎を破って密かに外出するスコットだが、その前に謎の敵が立ちはだかる……。
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『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』より少し前に戻り、出番がなかったアントマンが何をしていたか、を描く。司法取引して2年も自宅謹慎になっている彼はもはやスーツもないし、時々くる娘と遊びつつダラダラしている。
が、マイケル・ダグラス博士と今や新ヒーロー「ワスプ」となった娘が厄介ごとを持ち込んできたせいで、GPSをこっそり外して監視の目を逃れつつ、二人に協力することに……。
最近のMCUの中では急にスケールが小さくなったな、という感じで、劇場版ドラえもんにも及んでいないぐらい。すこしふしぎ感を漂わせつつ、一作目ラストに登場した量子世界にまつわる冒険が始まる。そもそも30年前に量子世界へと消えた前ワスプことミシェル・ファイファーが生きているかも!という設定にまずびっくり。えーっ、何を食って生きているんだろ? 逆に小さくなりすぎると、人間ご飯を食べる心配もしなくてよくなるのだろうか? まあ作中で延々活動してるのに一食も取ってない映画もよくあるので、何かしら設定だけはあるのかもしれないが、でかい疑問を放置された感は否めず。
今回のヴィランは「ゴースト」で、マイケル・ダグラス博士と仲悪かったローレンス・フィッシュバーン博士とつながっていて、身体が消える消えないという問題に悩まされている、ということで、アントマンチームと表裏一体のバリエーション。目的は似たようなものだが共闘は決してしない。
この2チームにマフィアもからんで、マイケル・ダグラス博士の「研究所」を奪い合ってドタバタを延々繰り広げる。外で活躍しながらも、家にいるふりをし続けないといけないポール・ラッドは倍ぐらい大変な苦労を……。
まったく世界の危機とか関係なくて、延々と個人的問題、家族の話でドタバタしてるので、かえって面白い。小さいヒーローはやってることも小さい!
めでたくMCU入りしたミシェル・ファイファーさんの妙な神々しさと、ポール・ラッドの女性演技だけで結構元が取れた気分になる、なかなか面白い映画でありました。最後はまた「サノス、あのやろう!」となって終わるがな!
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”英雄はどっちだ”『SPL 狼たちの処刑台』
シリーズ最新作!
娘のウィンチーが誘拐され行方不明になったタイに、単身訪れた刑事のリー。地元パタヤ警察のチュイに同行し、娘の行方を探すことに。だが、捜査が進むにつれて思わぬ闇が浮かび上がり、リーはチュイ共々、大きな危機に晒される……。
最初にリリースされた予告編で「ノワール・アクションの英雄」としてラム・カートンが紹介されたのだが、画面上に映ってアクションしてるのはウー・ユエさんで、その後web上ではしれっと名前もウー・ユエに差し替えられていた。間違えたな……劇場で流れてる予告はそのままだったけど。
警察官のルイス・クー、妻とは死別。娘の誕生日に存在も知らなかった彼氏が突然現れる。「カフェでバイトしてます」と言う男に内心イラッとしつつも「二人で出かける時は知らせるように」と渋々交際を認める。だが、「結婚したいと思ってます」「この子を産みたいの」と続いて、忍耐の糸はあっさり切れた……。
娘ちゃんがもうちょい大人っぽく見えるのだが15歳設定なのな。で、またこの彼氏に関する情報が何もなくて、とりあえず「まだ若く経済力はない」のだけが確定している状態。人間性に関してはどうにも判断しようがないが、「未成年者にファックした」のは間違いないから、通報して警官に逮捕させてしまうルイクー! 急展開に急展開で返す父に爆笑したが、父娘のコミニュケーションが取れていない時期だったのが災いした感あり。母親がいればもう少し違った展開もあり得たかもしれないが……。
しかしここで多分顔見知りの警官呼んで逮捕させてるあたり、このパパの逃避的な感情を表現してて上手い。ルイス・クー自ら「パパが逮捕してやる!」と手錠かけてたら相当面白かったろうがギャグになってしまうからな。
その後は赤ん坊を中絶させて、傷心の娘は友達を頼ってタイに旅行に行き、誘拐の憂き目に……。結局、親はもはやこの年頃の娘をコントロールできないので、全てが裏目裏目に出ることに。
この発端になる事件が、一人親の悔恨を刺激しまくる構造がやるせなくて、実にいいですねえ。で、むっつりと黙り込んで一人後悔に苛まれてるルイクーには、さらなる報いが……まだ来世も迎えてないのにガンガンに因果応報が訪れて痛い痛い。パパのしたこと一つ一つは、法的にも倫理的にも間違ってはいないはずなのに、それら全てが悪い結果になって跳ね返ってくる。
『ドラゴン×マッハ』のタイ組ことトニー・ジャーとロー・ワイコンだが、どんな大活躍をするのかと思ったトニー・ジャーが実は今回はゲスト出演なので途中で退場(ただ、ちょっと風格のようなものを見せる演技をしていてそこはよかった)、ロー・ワイコンは同じようなキャラかと思いきや腐れ外道なので、前作のイメージを逆手にとっている。
タイが舞台で、地元の空気がよく出てはいるが、ちょっと地元香港では「警官の汚職」という題材は描きづらくなっているのだろうか、と勘ぐりたくなるところ。
サモハン指導のアクションも相変わらず痛そうで素晴らしいのだが、ウー・ユエさんもキレッキレで、本職じゃないけどハードコアに攻めてるルイス・クーとは、また一味違いますね。ルイクーはアクションよりも、狂気じみた表情や佇まいが良くて、こういうお父さんは確かに息苦しいと思ってしまうだろう……そこがまた悲しい!
第1作の不幸展開に回帰し、SPLシリーズとしては2作目よりこっちが本流かな、という悲しさと虚しさと心弱さに満ちたお話になっていて面白かった。非常に手堅い完成度だが、個人的にはこの娘周りの葛藤の話が気になって、アクションに集中しづらかった面もあり、そっちは抑えめで役者の演技で見せる作りにしても良かったような気がする。もっともそうされると物足りない気持ちになったかもしれないな。やっぱり盛ってこその香港映画ですから……。
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