“TOKYO決戦!”『パシフィック・リム アップライジング』(ネタバレ)


『パシフィック・リム:アップライジング』日本版本予告

 怪獣映画続編!

 「裂け目」が閉じてから十年の月日が流れた……。かつての英雄ペントコストの息子ジェイクは、裏稼業に手を染めていたが、再びイエーガーパイロットとして呼び戻される。かつてのジプシー・デンジャーの後継機であるジプシー・アベンジャーを駆る彼の前に立ちはだかったのは、未登録の黒いイエーガーだった……。

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 監督が交代し、世界観は引き継いで作られた新作。前作のキャラも3人ほど登場しますよ。前作は淀みなく世界観設定を説明するオープニングが秀逸だったが、今作は裂け目が閉じた後から始まるので、怪獣がもう登場しない世界ということであまり緊張感のない出足。その中で英雄の息子ながら出奔して遊び呆けていたペントコストJr.ことボイエガ君が、自作イエーガーに乗る少女と出会う。

 このオープニングと、次のオブシディアン・フューリー襲撃シーンのイエーガーVSイエーガーのシーンは秀逸で、仰角視点による都市破壊は前作になかった展開でまことに素晴らしい。が、ビジュアルと裏腹に、前作から引き続き登場のマコさんこと菊地凛子が突然殉職したりと、妙にあっさり片付けてしまう薄味感がいささか物足りないのである。
 ドリフトのルールなど前作で語り尽くしてるから、まあそこは当然端折るのだが、心情描写をビジュアルで見せる便利な装置のようになっていて、いや、そういうことじゃないんじゃないか、となるのである。

 前作はデル・トロらしくないとも言われたが、やっぱりビジュアルから語り口まで細部にまでこだわったデル・トロ印だったわけで、同じ題材で別のやつに作らせるとこうも違うのか、と思わされる。
 凛子の他には二人の博士が再登板で、JJ似の方が怪獣とのドリフトにすっかりハマっていて、それは単なるドラッグとしてではなく、「あちら側」との交信と洗脳になってしまっている。これが中盤でサプライズとなり、彼が雇われている中国系企業が作った量産機に施されたある仕掛けが発動するのである。

 この中国企業のトップが、出た! ジン・ティエン!『グレートウォール』で主演、『キングコング』でいる意味があるのかわからない役、と、なぜか怪獣映画に立て続けに進出し、出資の中国企業のゴリ押しとも囁かれている彼女。いかにもツンツンした女社長役で、裏で何か企んでると容易く疑わせる設定の持ち主。各国で作られているイエーガーに変わり、規格化された量産機を一斉配備しようとしているのである。

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 怪獣は出てこないけど、イエーガーはまた作ってて量産計画まで始動してるというのは、いささかピンと来ない。あれだけ予算削減的なことを言ってたのに、また経済が調子よく回り出したのであろうか?
 この量産型のデザイン、ビジュアルはエヴァ量産機を意識しているのだろうが、大企業のシェア争いという設定はパトレイバーっぽいですね。

 今回も再登場してくる「あちら側」の住人は異次元人=プリカーサーという名前がついている。何となく名前がつくと陳腐化するし、ビジュアルも見えるようになって会話も出来たりするので、話の通じない不気味さは随分と薄れたな。ヤプール的凄味を追求するのはなかなか難しい。

 中盤のサプライズから、クライマックスの第2新東京〜富士山決戦と合体怪獣など、見せ場はしっかり用意されていて、不良少女の成長物語としてもまずまず見られる。終盤ではジン・ティエンのゴリ押し伝説がまたも更新される大活躍も見られて唖然とさせられたが、別に悪い映画ではないし、続編が段々と薄味になるのもまあやむを得ないところではある。ただまあ、良くも悪くもこだわりと作家性の映画だった前作と比べると、どうにも薄味かつ大味になったし、どっかで見たような引きもいただけないな。