”王の名の下に”『ブラックパンサー』


「ブラックパンサー」予告編

 マーベル映画!

 アフリカの小国家ワカンダは、ヴィヴラニウムという宇宙から飛来した超金属によって、世界を遥かに凌ぐ文明を密かに発展させていた。前王の急死により、息子ティ・チャラは急遽即位。ブラックパンサーと国王を継ぐ。だが、かつて父王が犯した過ちが暴かれ、王家の血を引くもう一人の男が舞い戻ってくる……。

 『アベンジャーズ3』を目前に空前の大ヒットだそうで、果たしてその内容は? 監督はライアン・クーグラーで、ここまで『フルートベール駅で』『クリード』とマイケル・B・ジョーダン主演で二本撮り、今作でもキルモンガー役で起用。ブラック・パンサーは『シビル・ウォー』から引き続きチャドウィック・ボーズマン

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 主人公はこれから王になる儀式をやる、ということになっていて、単に形式的なもののつもりだった儀式にまさかの挑戦者が登場したりとハプニングはあったものの、どうやら王座へ。晴れて王様一年生になった彼だが……。まあまあ腕も立つし人柄も悪くないし、なんとなくいい王になるんじゃないでしょうか、という漠然としたイメージ。しかしどうも頼りないな。『シビル・ウォー』ではクールなイメージが強かった主人公だが、あれは単にキャラが定まっていなかっただけだったのか。ついでにマーティン・フリーマンもこんなキャラだっけ?ということになっている。

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 ライバルであるキルモンガーが台頭してくるにつけ、この頼りなさがどんどん際立ってくる。裏には、先代の父王が甥にした仕打ち、事なかれ主義ゆえの悲劇が……。ここはぼんやりと人がいいだけに、父親のしたことに悩むという展開。決断を下したがそれが誤っていた父に対し、ちょっと優柔不断なぐらいの方が仁君足り得るのかもだが、ファザコン気味だったのか父親信仰が強すぎたのかアワワワワとなってしまう。
 ブラックパンサー同士の対決よりも、『クリード』のボクサー体型と全然違う怪物的マッチョになったマイケル・B・ジョーダン君との王座決定戦がやたらと面白く、負い目だらけの王様は必然的に完敗。賢いのは妹で、強いのは親衛隊の人で……ということで、王様は人がいいだけで目立った取り柄がなく、積年の恨みパワーに全然叶わないという展開に。

 ライアン・クーグラーという人は、あるいは本人の人柄がいいからなのか、主人公を普通の人間としてしか描けないのかな、という気がする。あの全然尖ったところのないクリード君が好例だが、今作でも見事に凡人として王様を描き切る。いや、そういう庶民的優しさを持った者こそがこの時代の王にふさわしいのだ、ということかもしれないが、それなら民主化でもすればいいのにな。

 完敗して崖から落とされたけど、死んでもないしギブアップもしてないから負けてはいない!と言い張る展開には目が点になったし、崖から遥か下に落ちて行って、それはまさに失墜を意味するのだろうが、拾われて瀕死の状態で山の上までわざわざ運ばれてました、という展開も都合良すぎて気持ち悪いな。
 『ゲット・アウト』の人が今作では池内博之に見えてしょうがなかったのだが、やっぱり裏切ったよ。こんな内乱やってる国は、もう長くないんじゃなかろうか、という気がするラストバトルもイマイチでしたね。

 ラストの「農業国は……」のくだりは、未開国とか思われてるオレたち実はすげえ!と普通に読めばそうなるが、この国に始めて足を踏み入れた白人マーティン・フリーマンからしてみると、こりゃあ『猿の惑星』なんじゃないの、とも思いましたね。見下していた種族が実は自分たちより遥かに進んでいた、という優越感と裏返しのコンプレックス。映画はそういう「反転」を起こさないように気を使ってる感もある。

 しかし色々とハイテクが出てきて、これで『アベンジャーズ』でトニー・スタークがお払い箱になっても、代わりにメカを提供するめども立ったな。まあ御都合主義が進みすぎない程度にやって欲しいですね。

S.H.Figuarts ブラックパンサー

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