”陰謀はつらいよ”『修羅:黒衣の反逆』


『修羅:黒衣の反逆』予告

 チャン・チェン主演作! 中華映画祭り二本目。

 明の時代、皇帝が病に倒れた中、錦衣衛の沈煉は体制転覆を表す絵を描いた北斎という絵師を捕らえるように命ぜられる。北斎の絵を所持していた沈煉は悩みつつも任務を遂行しようとするが、絵師の正体はかつて山中で出会った美女であった。彼女を辱めようとした同輩を斬ってしまった沈煉は、その場を逃れる策を巡らすが……。

 『ミスター・ロン』は作家性バリバリの映画でしたが、今作は定番のエンタメ時代劇と言えるでしょう。帝位継承とか国家レベルの陰謀が渦巻く中、末端の役人や兵卒が使い捨てられる中、使い捨てられる側の剣士の悲哀を描く……。個人的には「陰謀チャンバラ」という風にジャンル分けしてますが、前作『ブレイドマスター』はその代表作でもあったな。チャン・チェンは金が欲しいだけなのに陰謀にいっちょかみしたことで、どんどん抜き差しならない事態に追い込まれて行く……。今作はその続編であり、前日譚であります。

chateaudif.hatenadiary.com
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 一応、同じキャラクターだし、今作中でも前作につなげようと色々苦慮しているのだが、大筋は関係ないし、ヒロインも別だし、もう少しぼんやりとパラレルワールド的にゆるいつながりにしておいても良かったんじゃないかな。
 キャラを引き継いで、相変わらず保身しか考えてない男なのだが、今作は保身か女かを天秤にかけて悩む、という話で、割合シンプルな筋なのな。相変わらず、上の方でやってる陰謀には全然迫れず、じきに追われる身になって追い回されるのだが、彼を追いかけてた役人とも組むことになる展開がちょっとバディものっぽくなっていいですね。

 錦衣衛時代は、己を殺してお仕事に励む中、絵を買い集めるのが趣味……なのだが、そこでお気に入りだった「北斎」という絵師が、王朝批判の絵を描いたせいで、別の絵を持ってる自分も疑いを持たれることに。じゃあ嫌だけど北斎を自分で逮捕して身の潔白を立てるぜ……と思ったが、名前からして日本人の年寄りみたいな北斎の正体は超美女であった……。一緒に来てた同輩が、逮捕するまでもない斬り殺そう、その前に楽しませてもらおうと外道全開。ブチ切れたチャン・チェンはこれを斬り殺してしまうのであった……。
 しばらくこれを隠そうとして右往左往するが、北斎と通じてる反乱者一派に証拠を掴まれて脅されることに……。
 北斎役はヤン・ミーで、チャンバラやカンフーもよくやってる人だが、今回はアクションなし。その代わり、まもなく公開の長江映画に謎の女役で出るシン・ジーレイが倭刀の達人として出ているので、いい予習になったな。

 チャン・チェンは錦衣衛なのでそれなりに強いが、このシン・ジーレイには一回負けたりして、無敵というわけではないのだな。今作はワイヤーワークも使ってはいるが、前作同様、塀は飛び越えられないリアル寄りのバランスで、殺陣も地に足をつけて捌き合うしっかりした作りで良し。

 2本目ということでこなれたか、演出も話運びも手際よくまとまってて、なかなか良かったですね。話繋げるのはしんどくなってきたが、もう一本ぐらいあるのだろうか?
 音楽が川井憲次なので、いつものドンドコした勇壮なスコアなのだが、今作はエンディングの歌曲もやってます。川井憲次の中国語歌曲というのはレアだな……。

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