”あの海を越えて”『人生はシネマティック!』(ネタバレ)


ジェマ・アータートン、サム・クラフリン、ビル・ナイ出演!映画『人生はシネマティック!』予告編

 『ダンケルク』の後日譚!

 大戦中のロンドン。情報省映画局特別顧問の脚本家バックリーは、ふと見た新聞のコピーに目を留め、書いたライターであるカトリンをスカウトする。ダイナモ作戦の最中、兵士を救助した双子の姉妹の物語を映画化するために脚本家を探していたのだ。紆余曲折ありつつ映画作りはスタートするが……。

 ノーランの『ダンケルク』で描かれた脱出作戦直後のロンドンを舞台に、漁船を操り兵士たちを救った双子の姉妹を主人公にした映画を撮ろう!という企画がぶち上げられる。製作会社の脚本家サム・クラフリンは、コピーライターのジェマ・アータートンをスカウトし、共同で脚本を書きはじめる。
 戦時中で、ジェマ・アータートン演ずるコピーライターも、男のライターが徴兵でいないから代わりに書いてたという設定。まったくの偶然で起用されるが、落ち目の大物俳優ビル・ナイといきなり衝突したり、トラブル続き。双子の姉妹の船はエンストしてダンケルクにはたどり着いてない、という衝撃の事実も発覚。こんな状態でまともな脚本は書けるのか……?

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 もちろん、監督ほか、撮影チームに段々と一体感が生まれてきて、困難を乗り越えていくのが見どころであります。最初は過去の栄光にしがみついてたビル・ナイもエージェントの死をきっかけにこの映画を作ることの意義に目覚め、演技も本領を発揮。ジェマ・アータートンの脚本もますます冴え渡ってきて、チーフのサム・クラフリンも驚くほどに。

 ジェマ・アータートンは、戦争で負傷した元絵描きの夫を食わせるために物書きをしている、という設定。実は結婚していなくて、芸術家だった彼に憧れて追っかけ&押しかけ妻になり、指輪も自分で買った……という設定が明らかに。グルーピーというやつですな。この人、若干軽薄そうに見えるところがあって、『ボヴァリー夫人とパン屋』でもそうだったが、こういう色ボケしたような設定が似合う。が、文章を書き始め、映画づくりに関わるようになって、男次第で自意識に欠けるところがあったのが、物書きとしてのアイデンティティに目覚めるようになる。これもまた『ビザンチウム』あたりの主演作にも通じるところで、この人の定番キャラですね。表情も序盤は若干ぼんやりして見えるのだが、中盤以降、意志を強く持ち出したように変化していくあたり、演技も上手いですよ。
 しかし、まあ時代が時代なので地味な格好をしているわけだが、それでも隠しようもない乳のでかさよ……。こんな胸のでかい脚本家がいていいのか!と理不尽な思いに囚われますよ。

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 夫が復帰のための個展を開くことになり、撮影現場を抜け出して最終日に駆けつけるも、夫の上に、かつての自分と同じような芸術家に憧れるグルーピー女がまたがっているのを目撃。駅で指輪を捨て、再び映画づくりの現場に舞い戻る。

 で、お互い気のあるのはわかっていたサム・クラフリンといい雰囲気に。この男、若く見えすぎなので、『あと1センチの恋』のリリー・コリンズや『世界一キライなあなたに』のエミリア・クラークなど、ロリ顔の相手役ばかりだったのだが、今作ではメガネと髭で童顔を上げ底。まあそうは言っても、ジェマ・アータートンの貫禄には全然敵わんと思ったが、まさかの同い年だった……。

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 まあ戦時中ということで、そりゃあ何があるのかわからんのだが、このサム・クラフリンが爆撃でセットの下敷きになって死んでしまう展開はさすがに泣かせをやりすぎだろ、とは思ってしまう。このシーン自体はまるで映画の中の出来事のように撮っていて、そこは工夫したところなのだろうが、よくある成長のための死という感じですな。

 愛は失えど、彼と築いた映画は完成させたい、という思いで再び脚本に取り組み続ける姿と、その後の完成した映画はどうしても見られない姿が悲愴だ! しかしここで美味しいところを持って行くのがビル・ナイと……!

 泣かせに若干のあざとさも感じつつ、総じて面白かったですね。ビル・ナイファンは必見だし、『ダンケルク』ファンにも見てほしいですね。ただ、作中の救出映画はルックもしょぼいんだけど、映画というのはそういうことではないんだ、というノーランへのアンチテーゼに結果的なってるような気もするな……。

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