”鍵泥棒のプロット”『LUCK-KEY ラッキー』


『LUCK-KEY/ラッキー』予告編

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 ユ・ヘジン主演作!

 標的を完全に抹殺するプロの殺し屋として知られるヒョヌク。だが、仕事帰りに立ち寄った銭湯で転び、頭を打ってしまう。たまたまその場に居合わせた売れない役者ジェソンは、身なりのいい彼とロッカーの鍵を取り替えてしまう。記憶を失ったヒョヌクは自分がジェソンと思い込んでしまい……。

 邦画『鍵泥棒のメソッド』の韓国版リメイク(オリジナルは未見)。ラッキーがキーにかけてあるということで、やっぱり鍵泥棒から物語は始まる。

 オリジナルは堺雅人香川照之広末涼子の三人を主軸にした話だったが、今作では堺=イ・ジュン、香川=ユ・ヘジンの二人に焦点を絞ってお話を調整。すれ違う男二人を描いている。オリジナルは未見だが、まあこの構図を見るだけでもスッキリしたのは間違いないし、やっぱり広末の出番はこれぐらい必要だろ、ということで少々いびつなバランスにされていたんじゃないか、という気がするね。
 二人の男の関係を対照にするために、イ・ジュン側にもう一人ヒロインが登場するのだが、オリジナルはこちらも広末を目立たせるために影を薄くされているような気がするな。上映時間もトータルで15分ほど短くなっている。

 しかし、観たら観たでダブル主人公の構成になっていることはすぐわかるが、予告編やポスターなど宣伝は完全にユ・ヘジン推しで、イ・ジュンはまあまあ頑張っているが影が薄く、ほぼユ・ヘジンの面白演技を愛でる映画だった。
 殺し屋である男が記憶を失い、役者志望の男と入れ替わる。最初は演技に四苦八苦しているが、次第に妙な味わいと演技力を発揮するようになる……という展開を、ユ・ヘジンの元々の演技力と顔面力でどんどん盛り上げ、バイト先の料理店で人気者になり、俳優としてスターになり、やがては恋愛まで……。
 このパートが一番面白く、さらに見所なので、ずーっとここを観ていられたらそれでいいのではないか、という気がする。話の筋やオチは、割とどうでもいいというか。だが、段々とユ・ヘジンがスターになったり、あるいは記憶が戻ったりしていく展開で、救急隊のヒロインがそれを寂しく感じ出すあたりが肝で、中盤の楽しい展開がある種のユートピアであることもわかってくる。しかし、やがて現実が、本当の人生が追いかけてくるのだ……。まあ解決も結局は緩いので、別にハードボイルドにはならないんだが。

 総じて面白かったことは面白かったのだが、クライマックス付近の処理には疑問が。いや、あの金で人の命を奪い証拠を握りつぶそうとする悪党どもは、成敗しなくていいの? USBコピーしてどこぞのマスコミに送りつけた、みたいなワンシーン入れるだけで片付くと思うんだが、あれは放置しちゃうのか……。そもそも顔をあいつらにめっちゃ見られてたんだから、これからも映画に出るためにも成敗しておかないといかんと思うのだが……?

 オリジナルを刈り込む過程で少々詰めを誤った感じで、もう少しソリッドな切れ味を得られそうだったところが、結局印象に残るのはユ・ヘジンの活躍だけなので、ぬるいコメディに止まっちゃったかな。惜しい。