”三人の命知らず”『スキップ・トレース』


『スキップ・トレース』予告編/シネマトクラス

 ジャッキー主演作!

 相棒であるユン刑事を目の前で失ったベニー・チャン刑事は、その後九年、マタドールと呼ばれる暗黒街の黒幕を追い続けていた。だが、上司の理解を得られない上に、捜査中に多数の家屋を倒壊させ停職処分に……。一方、ユンの娘であるサマンサは、マタドールを自ら追う中、コナーという詐欺師と出会う。

 レニー・ハーリンが監督、『ジャッカス』のジョニー・ノックスビルが共演ということで、思わず「三人の命知らずが集まった……!」みたいなコピーをつけたくなる。いや、ハーリンは危ないことをやらせる方だが……。

 開始30秒足らずで画面上から姿を消すのがエリック・ツァン。ジャッキーの相棒の刑事役なのだが、登場した瞬間から、残り時間30秒の爆弾を身体にくくりつけられており、外そうとするジャッキーに娘と腕時計を託し、海へと身を投げる!
 それから九年。ジャッキー刑事は相棒と共に追っていた犯罪組織の黒幕、通称「マタドール」と睨む大金持ちを、相変わらず追い続けてきたが、何の証拠も上げられずにいた上に、大捕物の末に多数の家屋を倒壊させる大失態で停職に。ここは『ポリスストーリー』でも似たような展開がありまして、刑事ジャッキーのお約束ですね。ところで役名はベニー・チャンだが、これは同名の監督からいただいたのであろうか?
 一方で、詐欺師ジョニー・ノックスビルがその手がかりをひょんなことからつかんでしまう、というのが二人が出会う発端。大金持ちの経営するカジノで働くファン・ビンビンもそこに絡む……。
 さて、エリック・ツァンに託された娘というのは、いったいどんな年頃なのか、とか全然情報がなかったのだが、やっぱりというか何というか、このファン・ビンビンが娘だったのでしたあ! いやいやいや、似てないを通り越してありえないから! ジャッキーの部下の刑事で、地味だがまあまあ可愛い子がいるので、こっちにしておけばまだわかったかな……。

 マカオで殺害現場に居合わせたノックスビルさんが、前から因縁のあったロシアンマフィアにさらわれてロシアに連れていかれ、ジャッキーが彼が証拠を持っていることを知ってロシアに行く……という展開もなかなか強引だが、端折りっぷりがすごくて観ている間は突っ込む暇がないのよね。で、中国に戻りたくないノックスビルはジャッキーのパスポートを燃やしちゃって、結局モンゴルを通って陸路で中国に向かうというロードムービーに。

 ここから二人の間にバディ感覚が芽生えて行く……というお約束。しかしジャッキーも歳だし、そこまで激しいスタントをしているわけではないが、そのジャッキーにゴミバケツに突っ込まれても平然と転がされているノックスビルのおかげで、なかなかいい絵が撮れているんじゃないか。さすがはスタントを恐れない男だ……。さらに大自然の中で危ないことを撮らせたら天下一のレニー・ハーリンが、ダイナミックかつ手際よい演出で締める。このケミカルっぷりが意外にハマって、なかなか観やすく楽しい映画になりました。
 『ウェイバック』と同じルートを辿りつつ、各所の観光映画としても機能し、中国文化もさらっと紹介してみせる商業主義もナイスですね。

chateaudif.hatenadiary.com

 最後のどんでん返しも、無理ありすぎだけどあるかもな、と思ってたらやっぱりあったので、笑っちゃったよ。この辺りの感覚は香港映画っぽくもあるし、中華映画っぽいウェットさもある。何か不思議だな……。