”あの子をお願い”『20センチュリー・ウーマン』


「20センチュリー・ウーマン」予告編

 マイク・ミルズ監督作。

 1979年、サンタバーバラ。15歳の息子ジェイミーを育てるシングルマザーのドロシアは、思春期真っ只中の息子の教育に頭を悩ませていた。下宿人である写真家のアビーと、ジェイミーの幼馴染のジュリーに彼を導いてやって欲しいと頼むドロシアだったが……。

 一昔前なら「20世紀女」とか邦題つけられそうだった映画。表題の主人公はアネット・ベニングが演じ、舞台は1979年。後に後日談的に2000年までが語られる格好で、主人公がまさに20世紀を生きた女性であることがわかる。

 下宿の管理人でありシングルマザーであるアネット・ベニングと、その長男。グレタ・ガーウィグ演ずる売れてなさそうな写真家、ヒッピーの大工ビリー・クラダップが同居し、時折長男の幼馴染であるエル・ファニングが訪ねて来る……というのが主要登場人物。

 全員世代がバラバラで、血縁があるのは主人公親子の二人だけ。擬似家族と言うには内部で恋愛が絡みすぎて複雑化する一方、皆どことなく人に対して繊細であったり臆病であったりドライであったりと、一筋縄では語れない距離感がある。そこが何ともリアルであり、決して閉鎖的にはなりはすまいとお互いに思いながらすれ違いを繰り返す原因なのかな。

 15歳を迎えた長男と、最近話が合わなくなってきたお母さんベニングが、グレタ&エルちゃんに彼を導いてやって欲しい、と頼むところが面白くて(話がつまらないと言われてる大工さんは除外)、えっなんで私らが……?と困惑気味なところを押し切ってしまう。息子を導くのは父親!みたいな価値観とは真逆の道を行くわけだが、さてこの人選は正解なのか否か? とりあえず二人が自分のことを頼まれた、と聞いた息子ちゃんは結構イラっと来てしまうのであった。この年頃の少年の自意識よ……。

 何かしたいんだけど過干渉もしたくない、そんなおかん。自分が自由人であるだけに束縛されるのはいやだけど、息子に対して放任主義にもなれないという……。大変面倒くさいのであるが、頼んだ二人も息子ちゃんも全然制御できず、明後日の方向へ突っ走っていくのであった。

 近所に住んでて夜だけ息子ちゃんの部屋に泊まりにくるエル・ファニングちゃん、ただしセックスはなし。若いうちは人の気持ちも考えず、こう都合のいいことをしたがるもので、息子ちゃんの悶々っぷりが悲しくも可笑しいですね。

 おおむね落ち着いた登場人物たちなんだが、解決できない問題が人生には多々あり、常に悲喜こもごもがある。それもまた人生であり、20世紀を生き抜いた母の一生なのであった。なかなか丁寧な映画で、大変良かったですね。