”実は上海の恋”『シチリアの恋』(ネタバレ)


【Kstyle】イ・ジュンギ主演映画「シチリアの恋」予告

 チョウ・ドンユイ主演作!

 結婚を約束したジュンホとシャオヨウ。だが、突如ジュンホが別れを告げ、オペラの勉強のために故郷のイタリアに帰ると告げる。その後、連絡を絶って3ヶ月。孤独な日々に沈んでいたシャオヨウの元に、ジュンホの死の知らせが……。

 さて『七月と安生』ではちょっと度肝を抜かれたので、今作もちょっと気になっていたところ。韓流スターと台湾のイケメン俳優に囲まれ、三角関係映画か?と想像していたところ。
 まあしかし、正直出来には期待していなかったが……すごかったな……悪い意味で。

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 主演はイ・ジュンギ。二十代前半ぐらいの役だが、この人、結構昔から見るよな……。『王の男』ではほんとに若かったが、今や三十過ぎてるよ! 『御法度』に出てた松田龍平の今現在という感じね。今作でスクリーン復帰ということだが、去年に『バイオハザード ザ:ファイナル』で走らされてた方が記憶に新しいんですが……。

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 お話は建築事務所で共に働く二人が別れるところから始まり、一人、故郷のシチリアに帰ったイ・ジュンギが火山に落ちて死んだとの訃報が届く……。
 まず邦題から突っ込んでおくと、話の舞台は主に上海で、シチリアはスポット的に登場しますけどそこで恋愛はしませんからね。フラれてやさぐれていたチョウ・ドンユイ、訃報にますます荒れ狂い、葬式にも出ずにどんどんダメな人になっていく。建築事務所も、全然仕事できないのに彼氏の採用条件として無理やり採ってもらってたことが明らかになり、次の仕事をぶち壊しにして休養を申し渡される。
 「何で死んだのよ!」と家で荒れ狂い、窓から物を投げ捨て、湯を沸かしっぱなし、風呂を出しっぱなしで眠りこみ、下の階に引っ越して来たピアニスト、イーサン・ルアンのピアノを水浸しにして、自らもガスでおっ死ぬ寸前に……。
 職場でも同僚に憎まれ口を叩き続け、「あんた、私の彼のこと好きだったんでしょ!」と自らの執着心が怖い発言を……。さらに、彼が手がけていたバーの内装の仕事を無理やり引き継ぎ、溶接工も追い返して一人で作業。

 もうダメだ! この女、もうダメだよ! メンヘラすぎ! いやあ、すごい演技力なのは間違いないが、これは期待していなかったよ。共感度ゼロなのに、なぜか事務所の所長やイーサン・ルアンは厳しいこと言いつつこの女に甘いのだ……。が、まだ映画は半分弱で、この後、実は生きていたジュンギ再登場で、メンヘラが二乗になっていくのである。

 父親の再婚で涙目になっていたドンユイに一目惚れ……という恋愛の始まりからしてすでにしんどいのだが、ここから二人の大学時代が始まる。正直、このパートがまだ一番観られたんだけど、韓国語喋るイ・ジュンギと中国語のドンユイが、お互い両方理解できるから、という理由でそれぞれの言語を通し、全然ギャップ感がないのもすごいな。
 フラッシュモブでドンユイのハートをつかもうとするジュンギだが、あれだ、韓流スターにはダンスシーンを絶対入れなければならないという縛りでもあるのか……?

 なんだかんだで付き合い始めた二人(性的な匂いはゼロです)、しかし実はジュンギは父の遺伝で脳に腫瘍ができていたのであった……。やっと最初に別れたシーンにつながり、全ては狂言だったことが明らかに。葬式も生前葬で、すべてはドンユイに自分のことを忘れさせるためだったのだ……。まあそういうことなら、二度と会わずに大人しく死を迎えればいいと思うのだが、やっぱりまた上海に戻り、二人で暮らした部屋の上の階の部屋を借りてストーカーモード発動。きっちりイーサン・ルアンには見られてバレバレだったりする。

 別れずに死を看取ってもらうか、別れて本気で姿を消そうとするけど見つけ出されてしまうか、どっちかならいいと思うんだが、別れて姿を消したけど死ぬまでまだ時間があったので未練がましく周囲をちょろちょろし続けるこの展開、やばいな! で、このしわ寄せを全てを背負うのが建築事務所の所長……気の毒すぎだろ!
 全然溶接の進まないドンユイを助けるため、夜中に作業を進めるジュンギ、駆り出される所長……。ついに昏倒し鼻血を吹くジュンギを車に乗せて病院に搬送。ここで鼻血がカピカピの塊になって鼻にくっついてるメイクが、ものすごいリアリティだった! 客席で、むしりたくて思わず手が動いたからな。メイクさんの渾身の仕事じゃない? 展開には一ミリもリアリティないんだが!
 手術終わって縫い跡のある後頭部(ダブルの人)を見せた後、ニット帽をかぶる『恋空』方式で通すジュンギ。もみあげ見えてるぞ……。
 このあたり、韓流スターパワーが悪い意味で牙を剥きすぎという感じで、アイドル映画にせよもうちょいなんとかならんかったんか……。

 突っ込みどころを上げてるともうきりがない。韓流スターもそうだが、チョウ・ドンユイの『七月と安生』に続くふてぶてしいキャラもハマりすぎてて、逆に反感しか買わなくてすごいよ。脚本の時点ですでに正気の沙汰とは思えないのだが、キャスティングだけは妙に噛み合ってしまって逆効果。演技力を発揮すればするほど痛くなっていく……。関わり合いになりたくはないけど、これはこれで一つの人物だな、と認めざるを得ないレベルに到達……。
 ラストカットの涙で韓流スター力もねじ伏せて持っていくあたりはさすがだったが、もうちょい出る映画は選んでほしいものである。料理の仕方によって、トリックスターになるのか、わがままなモンスターになるのかで違ってくるのな……。チャン・ツィイーの『ソフィーの復讐』はもうちょい面白かったからな。
 今年のベスト級とワースト級をこれで見てしまったことになる。新作は金城武と共演らしいが、果たして日本上陸はあるかな……?

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