”信義を賭けて”『グレートウォール』


マット・デイモンが「万里の長城」で大暴れ!『グレートウォール』予告編

 チャン・イーモウ監督作!

 シルクロード、中国国境近く……。部隊を率いてやって来た傭兵のウィリアムは、深夜に謎の生物の襲撃を受け、仲間を失いながらも辛くも撃退する。馬賊に追われたウィリアムと相棒のトバールは、やがて巨大な城壁へと追い込まれる。それこそが秦代から続く万里の長城であった。防衛に当たる禁軍に捕らえられた彼らは、やがてそこで未曾有の戦いが始まることを知る……。

 『金陵十三釵』の記憶も新しいですが(おまえだけだ!)、またまたチャン・イーモウの米中合作がやって参りました。今作は宋の時代、黒色火薬を求めて中国に密かに入ったマット・デイモンを始めとする欧米人たちが、万里の長城での戦いに巻き込まれるというお話。ちょっと常識はずれの物々しい軍備が敷かれる長城に襲いかかって来たのは、中国古来からの伝説の魔物「饕餮」!

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 まあバカな話なんだが、想像してたよりトンデモ感はなく、古式ゆかしい神話に基づいてたりして、意外にまとまっている。マット・デイモンウィレム・デフォーこそ出ているが、完全に中国映画テイストで、矢が飛べばチャン・イーモウとすぐわかる大袈裟さ。最近、中華映画祭りでCGのモンスターものがちょいちょい公開されているが、あれの何倍か金がかかっているだろうだけあって、CGの精度も比較にならない。
 また大仕掛け満載の万里の頂上も最高で、太鼓をヌンチャクで叩く意味不明シーンを皮切りに、多彩な武装で饕餮を迎え撃ち、死亡率高そうなバンジージャンプを敢行! 適当にグロいところもよし。長城は長いから長城なのに、迎え撃ってるのはどう見ても一部だけというあたりもいいですね。
 そして、そんな大攻防戦が無に帰す終盤の展開、無理やり繋げるクライマックスもいいぞ! 人の命が安い!

 相変わらず自意識が薄そうで、今作でも「幼い頃から戦場でゴミ拾いをしていて、なし崩しに傭兵になった。どこの陣営にでも構わずついて戦った」というボンヤリキャラなマット・デイモン。禁軍生え抜きの将校であるジン・ティエンと対比になっている。「おまえに大義はないのか」と言われ、「ないない、誰も信じてないよ」と言っている。『ディパーテッド』でもその空虚さゆえに邪悪であるところの『インファナル・アフェア』のアンディ・ラウのキャラを演じたが、いみじくもそのアンディ・ラウも軍師役で出ているのな。そのアンディ・ラウの前でマット・デイモンが過去を悔いるシーンは、まさに鏡に対してしゃべっているような含意がある。
 その反面、槍突きつけられて長城の上に連れて行かれた時に、思わず下の方を覗いちゃう呑気な感じがいかにもマット・デイモン的鈍さでいいなあ。

 ジン・ティエンは英語がしゃべれるキャラで、『キングコング』であまりに台詞がなかったからあまり上手くないのかと思ってたわ……。今回は普通に主役級で、「地元の星」ですね。コネで出てる女優と言われているが、今回は出演作の中では一番良かったんじゃないか。
 全然台詞のないエディ・ポンがいまいち勿体無いが、皿洗いやらされているルハンは意外に推されていたのかもな……。この辺り、役者の持つ政治力が垣間見えるところ。もちろん、最強はジン・ティエンちゃんなんですが……。

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 ヒットはしなかったようだが、こういうバカな映画には大コケさえも勲章じゃないか。マット・デイモンが本作をネタにアカデミー賞でもいじられていたし、何がしかの記憶には残ったんでは、という気がしますね。最初から最後まで楽しめた大作で、3D、IMAXにも耐える迫力。まあこれに懲りずにレジェンダリーにはまたやらかして欲しい。中国発の怪獣(応龍とかそういう奴な)がゴジラやコングと対決するのにも期待したいしな……。