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”妹の恋人”『愚行録』

映画


映画 『愚行録』予告編【HD】2017年2月18日公開

 貫井徳郎原作!

 理想の夫婦と言われた田向家で起きた一家惨殺事件。容疑者の目星もつかないまま一年が経ち、事件は風化しようとしていた。幼児虐待で収監された妹を抱える週刊誌記者の田中は、田向家事件を再び追い始める。だが、関係者を訪ね歩くうちに浮かび上がってきたのは、夫婦の意外な素顔だった……。

 まあまあ人気はあると思うんだが、叙述トリックが多い作家なので、映像化はあまり多くない。ドラマは何本かあったが、劇場映画化は今作が初ということになる。今作は直木賞候補にもなった一本で、『修羅の終わり』やら『空白の叫び』ほどのボリュームもなく、さらっと読めた。

 育児放棄し娘を瀕死にさせて収監された妹・満島ひかりを持つ兄・妻夫木(職業:週刊誌記者)が、一年前に起きて犯人の挙がっていない、ある一家惨殺事件を追うというお話。関係者へのインタビューの連続で構成され、ドキュメンタリーを作る過程を追っているかのようにも見える。

 原作はすべて語りで構成されているので、そのまま映像化するとすべて台詞で説明するような格好になるのだが、映画は脚色して第三者的な登場人物を増やし、映像で見せていく。なかなかスマートに映画化されているな、と思ったが、いじり過ぎて不自然になっているところも……。また、大学時代と30代半ばを同じ役者が演じてるのも、さすがに無理があったな。まあ演出を考えるとやむを得ないわけだが……。

 『ユージュアル・サスペクツ』のパロディで賢さと底意地の悪さをアピールするオープニングから登場するブッキー。『怒り』のウェットな役柄とは正反対に、笑み一つ浮かべない何を考えているかつかめないキャラクターを好演。妹役の満島ひかりも、少々やりすぎなんじゃないかというぐらいの演技と存在感で、このキャラクターの悲哀を表現してみせる。
 対して他のキャラは良くも悪くも「ミステリ」的というか、役割分担でしかないキャラ付けが肝。小出恵介の人間のクズ演技も含め、浅いと言えば浅いのだが、そのキャラ設定の浅さを逆手にとって「あまりに愚かしく悲しい人間たち」としちゃうところがなかなかアクロバティックだな、と思う。
 が、なんで貫井徳郎を読まなくなったかと言うと、web日記やもうなくなったTwitterアカを見ていたら、どうもこれを何か本当に深いことを書いているつもりらしい、と気づいてしまったからなのだがな……。それが露骨に出て本当に気持ち悪かったのが『乱反射』である。

 さて、じゃあ嫌いな映画かと言うとまったくそんなことはなく、このブッキーのキャラクターには好感しか抱けない。責任感の塊のような性格で、凄まじいまでの「暗黒の行動力」の持ち主。過ぎ去ったことを過去のことだからと得意げにペラペラとしゃべっていたら、いつの間にか彼奴が忍び寄っているのだ……。

愚行録 (創元推理文庫)

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慟哭 (創元推理文庫)

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