”神の手をなくした男”『ドクター・ストレンジ』


映画『ドクター・ストレンジ』日本版予告編2

 マーベルヒーロー映画!

 天才脳外科医のスティーブン・ストレンジは、交通事故によって両手の機能を失う。成功を重ね傲慢を極めていた彼のプライドは粉々になり、手の回復のために治療を試すうちに財産をも失う。だが、かつて脊椎を損傷したはずの男が歩いている、との噂を聞いた彼は、その裏に潜む魔術の存在を知り……。

 『フッテージ』『NY心霊捜査官』のスコット・デリクソンが監督に起用。主演はベネディクト・カンバーバッチ! 悪役はマッツ・ミケルセン! と、欧州感漂うキャスト。ヒロインはレイチェル・マクアダムス

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 さて、カンバーバッチ、天才外科医という設定で、腕はピカイチだが性格は物質主義で嫌な奴。まさにハマり役で、傲慢な言動を付き合ってるレイチェルにたしなめられても、のらりくらりとかわして聞く耳持たず。今日もオレ様の天才的技術でオペだ……!
 この医者パートが面白くて、これをもうしばらく見ていたい。何なら、マッツさんがライバルの医者として転院してきてもいいんじゃないかな。最初からその企画で一本映画観たいな……。

 が、無情にも、割としようもない理由で交通事故が起き、カンバーバッジは両手を激しく損傷してしまうのであった。まあ原型はとどめているものの、もはや神の手と称された天才的テクニックは戻らず、荒れていたらレイチェルにも愛想をつかされる。あらゆる外科医に見放され、藁をもつかむ思いでスピリチュアルに手を出す……。
 現実なら金を巻き上げられるパターンだが、これはコミック原作なので「魔術」は実在するのである。こうして現世で行き場を無くした男の魔術世界巡りが始まった……!

 悪役のマッツさんが傀儡感バリバリで、正直全然存在感がなかったのだが、代わりにティルダ様が気を吐きまくる。最初は貫禄なく見えてカンバンにバカにされるのだが、師匠然としたオーラをどんどん発揮して来て、そのルックスも相俟って神秘性の塊のようだ。それゆえに後半、ある「痛いところ」を突かれたところで、不意に俗人に戻っちゃったような後ろめたさが浮かぶあたりが圧巻。
 うーん、この人をラスボスにしちゃった方が面白かったんじゃないの、という気がするんだが、ここらへん、原作付きの不自由なところだな。

 定期的にCGに食傷気味になる時期があって、一時は波などの自然現象のCGが嘘っぽく見えていたのが、最近はあまり気にならなくなってきた。今、苦しいなあと思うのは、CGでホログラフみたいになってる悪役だな……。いくら凄い悪なんです、と言われても安っぽくしか見えないんだよな。だいたい顔があって英語をしゃべるわけだし……。

 さすがに都市が裏返る映像には驚かされたが、まあ最初だけなのよね。段々慣れてしまって、刺激に乏しくなってくる。後半は代わりに時間が巻き戻る描写が入って来て、そちらの方が面白かった。

 科学と対立する魔術の描写がいかにも曖昧で、そこにかつて科学の信奉者だったストレンジさんが加わることで換骨奪胎される、というあたりがビジュアル頼みであり過ぎ、お話上で盛り上がらなかったあたり、いまいちぱっとせず、小ささを突き詰めた『アントマン』よりも一枚二枚落ちる印象。

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 もうちょっと期待していたんだが、マーベルの中じゃかなり下の部類、オリジンストーリーやCGに飽きてることを割り引いても、かなりしんどかった。『スパイダーマン』はわりと楽しみにしてるが……?