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”死の星を射て”『ローグ・ワン』


「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」予告 希望編

 スターウォーズのスピンオフ!

 十数年の時を経て、ついに完成せんとする帝国軍の最強兵器デス・スター。これが完成することで、帝国は星一つを一撃で破壊する力を手に入れ、その支配体制を確固たるものとするだろう。だが、その中枢から謎の信号が送られてくる。送り主は設計者である天才科学者ゲイレン・アーソ。デス・スターには弱点がある……。ゲイレンと接触するため、反乱軍は彼の娘ジン・アーソを探し出すのだが……。

 とりあえずドニー・イェン出演ということで要注目だったこの映画。ドニーさんのハリウッド進出と言えば、『ハイランダー 最終戦士』に『ブレイド2』と、存在感こそ残したもののキャラに恵まれず、という印象。今回はより大きな役になり、ようやく真のハリウッド進出を成し遂げたと言えそう。

chateaudif.hatenadiary.com
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 トータルした出番こそ控えめな分量ですが、座頭市を意識した盲目アクションでトルーパーをバッタバッタと薙ぎ倒す姿のシュールさと切れ味、作中の「フォース」への信仰を体現する役どころの重要性、登場シーンの画面外から声だけが聞こえてくるところのインパクトなど、今度こそ役に恵まれた感あり。
 キャリア的には、中国本土でのブレイク以降、表現者として完熟を迎えた感があっただけに、今作での活躍とハリウッドデビューは、嬉しいボーナスという風に感じたところ。仮に今作に出なかったとしても、ドニーさん自身の価値は小揺るぎもしないのだけど、スター・ウォーズに出たことでキャリアに大きな箔がついたようで嬉しい。
 相棒役のチアン・ウェンもいい味を出してましたね。この人は『関羽』などでドニーさんとも共演してますが、このちょっと暗いと言うか、独特の「素直になれない」感じが良くて、チアルートのまっすぐさといい対照になっている。

 ギャレス・エドワーズは『モンスターズ』に『ゴジラ』と、まあつまらなくはないけれどポテンヒット、一見打率は良く見えるけど内容は……という印象。今作も前半がかなりたどたどしく、間延びした顔アップのショットで邦画みたいな説明台詞がダラダラ続くあたりにはかなり辟易した。雰囲気暗めにまとめた中でスターウォーズの小道具がひしめく美術の凝りようが素晴らしい一方で、本当に人間ドラマ撮るのが下手なのか興味がないのか……?
 途中で本当に人間ドラマに飽きてきたのか、「あの……ちょっとだけ……タコ出していいですかね?」と『モンスターズ』からゲスト出演させたようなタコが登場し、しかし何の役にも立っていない! 出さないと間が持たなかったのだろうか……?

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 フォレスト・ウィテカーがかなり重要な役のはずなのだが、再登場した時にはヨレヨレになっているのはいいとして、過激なレジスタンス活動を行なっていた時代の話が一向に描かれず、冒頭の登場シーンとのギャップがないため、まったくキャラが立っていないのが苦しい。「戦いに傷つき疲れた男」をいくらその場で熱演しても、シナリオ上で表現されていないとインパクトがないし、マッツ父不在時の主人公の父親がわりとなったはずなのに、彼女にどういう影響を与えたのかも不明瞭で対比にならないのもつらい。
 彼に代表される急進派抵抗勢力が、帝国に対し力及ばなかったことが主人公たちにどう伝わり、果たして教訓を残したのか反面教師となったのか、終盤に示される「希望」をつなぐ一助になったのかそうでなかったのか、そもそも全然関係ないように見える。

 この後、デススターの試射が行われ、惑星を吹っ飛ばすほどの出力じゃなく威力を絞って発射し、ジェダの街が消し飛ばされる。で、その衝撃波が段々と伝わってきて地震と爆風によってフォレスト・ウィテカー砦も吹き飛ぶ……んだけど、まあタイムラグがあるのは理屈上はあり得るんだろうけど、その間に逃げる逃げないでモタモタしたり、ホログラムを持ち出し忘れたり、ヒマがあったようななかったような、感覚的に受け取りづらいシーンになっている。もうほんのちょい出力が高かったら一瞬で吹き飛んでたような気がするが、そうならなかったのは幸運だったのだろうけれど、単にフォレスト・ウィテカーとのお別れを盛り上げるためだけにこんなにモタモタしたような御都合主義。まるで『海猿』のような……。

 またマッツさん父と敵司令の関係は割合ネチネチと描かれ、相変わらずモテるなこの人は……と思わせるところ。デススターにわざと弱点を残した!というあたりが、実にグズグズと回りくどく自己弁護的で、やっぱり裏切ってるんじゃないの、父親が悪に染まってる方がスターウォーズらしいよな、と思ったのだが、普通にいい人のままだった。ここらへんのひねりのなさもなんかもったいないな……。

 終盤は宇宙で艦隊戦、地上で主人公たちが局地戦と、おなじみのスターウォーズのフォーマットが大々的に導入され、俄然面白さが増してくる。が、この終盤はギャレス抜きで追加撮影して編集し直したそうで、監督の立つ瀬のない感がすごい。さらにダース・ベイダーまでが大暴れするわけで、これだけ詰め込めば面白くないわけがないだろう、と言う気がすると同時に、前半とのチグハグ感もどんどん増してくる。同じキャラクターが出ている、別の映画を見ているような……。キャラが立ってる主要人物たちだけで乗り込むのではなく、急に死ぬためのモブキャラがどっと増え、「フォースと共に」が共有されてしまってるあたりも、少々マジックワード感があって首をひねる。
 ただまあ、最近EP3を見直したのだが、ジェダイってやはり限界を迎えて滅びるべくして滅びたもので、彼らの特権的な超能力ではなく、名もなき民衆の希望となってる方が、世界的人気シリーズの中の「フォース」という言葉の扱いとしては遥かに座りがいいように思う。

 後半の大爆発でどうにかお釣りが出たものの、どうにも評価しづらい映画でありました。何だろうね、砂浜を走るシーンでイウォークがいっしょに走ってれば、それで満足したような気もするんだが……。

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー  オリジナル・サウンドトラック

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー オリジナル・サウンドトラック