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”もっとも長大な事件”『死霊館 エンフィールド事件』

映画


映画 『死霊館 エンフィールド事件』本予告【HD】2016年7月9日公開

 ジェームズ・ワン監督作!

 1977年、エンフィールド。シングルマザーの母と兄妹たちと暮らすジャネットの周辺で、謎の怪奇現象が頻発する。おかしな声、浮遊する家具や人体……。依頼を受けたウォーレン夫妻は、現地へ調査に向かう。だがその背後には恐るべき敵の存在が……。

 スピンオフの『アナベル』は論外として、前作は地味ながら端正で面白かった印象。前回を指して夫婦が遭遇した「もっとも邪悪な事件」と称していたが、今作はそれより格落ちなのか、それとも別の評価軸があるのか……。

chateaudif.hatenadiary.com
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 元々は実際の事件がベースで、2年以上に渡ってポルターガイスト現象が頻発したとのこと。ということは「もっとも長い事件」かな……。まあ映画内ではかなり端折って、あまり期間の長さは感じませんでした。
事件はポルターガイストから幕を開け、地味な動きはそこそこに、豪快に寝室をぶち壊すなどエスカレートが早い。こういう映画ではなかなか当事者以外の前では怪奇現象が起きずイライラさせて引っ張るのが常道だが、検分に来た警察の前でも椅子がスススッと動き、さっさと事実認定! もう手に負えないので霊能者投入……ということで、我らがパトリック・ウィルソンヴェラ・ファーミガ夫妻がやってくる。

 冒頭の事件で夫が死ぬ予知夢を見ていたヴェラ・ファーミガ、ちょっと事件から離れてのんびりしようぜと構えていた矢先だったので、あまり乗り気ではない。が、あまり本気にしていない夫は、いつもどおりやる気満々。妻がガチの超能力者なのは知っているのに、この警戒心の薄さ、自分の死だけは本気にしないというのはありそうな話ではあるが、若干アホの子にも見える。またヴェラ・ファーミガさんの方が貫禄あって、主役級としては何かが足りないパトリック・ウィルソンは、年下夫的に頼りない(実際はウィルソンの方が一個上)。でも、妻はそんな夫がかわいいのだ!

 発端はポルターガイストだったのだけど、家に憑いているおじいちゃんの幽霊が登場し、さらにクリーチャーも出現。もはやワンアイディアでは観客の退屈を止められない現代エンタメに合わせ、手数を出しまくるジェームズ・ワン。デジタルでもきっちり70年代風のムードを出しつつ、恐怖表現の連打連打連打。ジャブが来るかローキックが来るかタックルが来るか読めないMMAのようなもので、物が浮くのか爺さんが出るのか、はてまた恐怖の尼僧が出てくるのか読めない。

 そんな感じのスケールアップした盛り沢山さのせいで、前作にはほのかにあった文芸ものっぽさは吹っ飛んでいるのだが、恐怖に巻き込まれる家族の問題を夫婦が解決する、という構造は踏襲している。
 恐怖表現はしっかりしているようで、実は残酷描写は欠片もないように抑えられており、当然R指定などつかず、誰でも見られるようになっている。おかげで、小中高校生に囲まれて見る羽目になってうるさかったが、ノリとしては縁日のお化け屋敷に近い。子供だけでも家族でも観られる、クオリティ高くて怖いけど実はまったく人畜無害な虚仮威し。
 揺らぎかけた家族愛を夫婦愛が救う、誰も死なない、悪いのは悪魔で人間じゃない、キリスト教にも則った正しいファミリー向け映画でもある。

 幽霊の気持ち悪い雰囲気づけなど嫌な後味を残すかと思われる部分もあるが、後半にきっちり回収されて忘れ去れる作りで、ジェームズ・ワンはもはや娯楽映画の巨匠然とした手つきだな……。前作はちと端正すぎて、『インシディアス』と足して二で割ったらいいんじゃないか、と思ったが、そういうバランスである。
 上映時間も長めだが、見てる間はなかなか楽しめる快作ホラーでありました。もちろんお化け屋敷はお化け屋敷で、真の恐怖を云々できる映画ではまったくないのだが……。

死霊館(字幕版)

死霊館(字幕版)