”終わるのは貴様らの方だ”『エンド・オブ・キングダム』


「エンド・オブ・キングダム」予告編

 『エンド・オブ・ホワイトハウス』続編!

 イギリス首相の急死に伴い、アメリカ大統領ベンジャミン・アッシャーも急遽、国葬に赴くことになる。二年前のホワイトハウス陥落も記憶に新しいシークレット・サービスたちは警備体制の手薄さを危惧しつつもロンドンへ。マイク・バニングらが身辺を固める中、未曾有のテロが巻き起こる……!

 予算は少なかったのに『ホワイトハウス・ダウン』よりヒットしホワイトハウス対決を制した前作から3年、続編が登場。今回の舞台はロンドン! 急逝したイギリス首相の国葬のため、各国首脳が急遽渡英。おなじみアーロン・エッカート大統領も最強シークレット・サービスを伴いロンドンへ。
 オープニングで、武器商人一家の娘の結婚式に米軍のドローンがミサイルを叩き込む、嫌な発端が語られる。首謀者は当然その生き残りだ! 妻の出産を控え、引退を考えつつもやってきたジェラルド・バトラーだが、行く先はまたしても地獄絵図に……!

chateaudif.hatenadiary.com
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 「急な話だし、警備体制が心配だ」と話していたジェラルド・バトラー他シークレット・サービスの面々。ロンドンにはあの長いお帽子の制服警官他、多数の警察官が配備されていて、少なくとも人数だけは揃ってるな……と思ってたら、道路沿いで警備に立ってた警官や消防士がどこからともなく重火器を持ち出し、一斉に撃ちまくり始める! なんというザル警備、警官が偽物だったのか裏切ったのかまあそんなことはどうでもいい、細かいことはいいんだよと言わんばかりに銃弾の嵐。さらに会場に集まりつつあった各国首脳も、それぞれスケジュールと経路がバレていて、ピンポイントで爆殺されていく! もちろん貫禄のない日本の総理もタワーブリッジから車ごと落下!
 予定を早めて先に会場についてたアーロン・エッカート大統領以外はあっという間にやられてしまい、ロンドンは壊滅状態。しかし敵が何者かわからなくてもとりあえず射殺していくジェラルド・バトラーがついている限り大丈夫だ!

 テロリストの火器はRPGにスティンガーとどんどんエスカレートしていくが、正確な射撃と長回しアクションで対抗だ! やっとこさヘリに乗って脱出かと思われた大統領、ついに撃墜の憂き目に……。ここまでで脇役や他の護衛はどんどん振り落とされ、結局ジェラルド・バトラーとエッカート大統領の二人きりに!

 このシリーズのお約束なのか、相変わらずCGの精度は粗く、安っぽいのだが、カット割りで細かく切ってあまり粗が目立たないようにするテクニックは冴えている。しかし前作がヒットしたのに、なぜか今回はまた製作費が下がっているのな。景気のいい爆発もつかの間、ここから映画は「飛行機が落ちた後の『WWZ』」のごとく、急速にテンションが低下していくのである。予算配分を間違えたか……?

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 ジェラルド・バトラーが今作では最初から最後までシークレット・サービスなので、前作のサブプロットであった、「ミスにより天職を手放した男が未曾有の危機に再起する」という部分がごっそりなくなっているので、後半は単なる追いかけっこ化していく。さらに、通信が絶たれて限定的ながらも、シークレット・サービスは米国他の支援やコネを使い放題なので、国家組織vsテロ組織の構図が頭から離れない。前回は孤軍奮闘! 今回は大統領とバディ!という設定にしたかったのだろうが、逆境度が大幅に低下しているし、平然と特殊部隊が援護に来てしまうので、絵面の派手さに対して緊張感に欠ける。こうなると大統領が一回捕まっても、わざわざ見せ場を作りに来てるな、としか思えない。
 せっかく「捕まったら私を殺せ」と大統領が言い残しているのに、そこの葛藤はかけらもなくあっさり助けてしまうあたりも何だかなあ。
 やたらと敵を殺すわけだが、前作ではアメリカの心臓部を非道の自爆テロによってあわや抉られる寸前まで追い込まれた結果の怒りを、たった一人の男が体現するというあたりで上がったものが、今回は大国がバックについてるから単なる弱いものいじめにしか見えないあたりもマイナス。モーガン・フリーマン他、安全なところでボタン押すだけの奴がドヤ顔しすぎなのもしようもない。

 途中の長回しアクションが見所と言えば見所だったが、後半の緊迫感のなさが響いて印象が薄くなってしまった。もうちょっとストーリーを詰めるか、二番煎じを徹底してもう一回ジェラルド・バトラーをクビにすればよかったかも?

 かなり楽しみにしてたんだが、一見スケールこそアップしているけど、いろんなところが雑になってる続編の定番みたいな映画でした。次はどこがエンド・オブしても、もう観ないと思う。あ、東京だったらちょっと考えるかも……。