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”何も考えずに走れ!”『ヴィクトリア』

映画


映画『ヴィクトリア』予告

 133分長回し映画!

 深夜、地下クラブで踊っていたヴィクトリアは、退店間際に四人の男たちと出会う。スペインから来て三ヶ月、まだドイツ語も話せないヴィクトリアは、四人と酒を飲んで過ごしたが、彼らは訳ありの仕事を抱えていた。リーダー格のゾンネに好意を抱いたヴィクトリアだったが……。

 ヴィクトリアは主人公の名前。いわゆる美人ではないが人好きのする顔をしたスペイン人。クラブで踊り狂い、翌朝の仕事に備えて帰ろうとしたところで、四人組の男と出会う。陽気で人当たりも悪くないが、どこかアンダーグラウンドの匂いがする男たち。ドイツに来てまだ三ヶ月のヴィクトリアは、彼らとお互いの境遇を語り合い、リーダー格の男に人生の悩みを打ち明け……。
 だいたい、ことが動き出すまで語り合い続けるのが約一時間。いや……さすがに長い……あまり前情報を仕入れずに観に行くのも考えもので、ここから後半一時間は銀行強盗と逃走劇があると知ってたら、もうちょっと我慢しようという気になるかもしれない。

 じぇんじぇん友達のいないヴィクトリアちゃん、四人のボンクラと仲良くなったのはいいが、うかうかと彼らの頼みを聞いてしまうことに……。大事な仕事が控えているというのに酒を飲み過ぎていた四人、一人が完全にへべれけになり、残りの三人でやらなければならなくなるが、運転役がいなくて困る、と言う……。大丈夫、簡単な仕事、行って帰るだけ、犯罪じゃないとは言わないけど……とまあ、完全に危ない奴なんだが、首を突っ込んでしまうヴィクトリア。いや……もう少し身の危険を考えようじゃないか……。

 どこかの地下駐車場に連れて行かれ、そこに待っていたのはマフィア! ボスがマジに冷血動物のようなルックスで血も涙もなく超怖い。さすがここまで70分だから、NG出さずにここまで撮るのにどれだけかかったのか。すごく怖く見えるが、待たされていらついていたのかもしれない。
 メンバーの一人が刑務所からの出所のために彼から借金をしていて、返済のために銀行強盗をしてこいと言われる。地下駐車場で予行演習、はいオッケー、行ってこい! 展開はええな! 一回は渋ってみせるのだが、一週間後に金返すと言ったら、じゃあその間はヴィクトリアちゃんを預かっておく、と言われてぐうの音も出ないメンバー。さあ強盗だ……!

 正直、筋だけ追っていると全然面白くない話で、後半はやたら展開が早くなるけど誰も何も考えていないように見える。やはりこれは長回しという技法ありきで、カットを割らないことで緊張感を持続させ、登場人物の追い詰められていく感覚を体感させることが狙いなのだろうが、逆に彼らがそのテクニックの都合に合わせて動いているように見える。
 リアルタイムで133分間に見せ場と急展開を入れ込むためには、その急展開に合わせて動くように、登場人物を考えなしに直情的に設定せねばならず、さすがに思慮が浅過ぎに感じられる。そうは言っても、ちょっと家に帰って二時間ほど考えよう、とか言われたら映画が終わってしまうからな。あるいは、車で五時間ぐらい走って遠くに逃げようぜ、と言われたら終わらない!

 冒頭のクラブに犯行後また戻ってくるあたりなど、絵的には面白いし、メンバーが裸になってるあたりにハラハラする、まさにバカの二重の極み。しかしまあ酒も飲み過ぎ、ヤクも吸いすぎで、なんでこの連中に銀行強盗なんてやらせようとしたのかわからない。
 そんな何も考えていないキャラクターたちにイライラしつつ、やっぱり長回しテクは随所に工夫が凝らされていて見ごたえあり。車内にカメラが入って全員を順番に撮るあたり、どこにカメラマンがいるのかわからんぐらいの自然さでしたね。
 オープニングがスモーク焚いた中で顔も見えない人が踊り狂うシーンで、ここもいきなりとちっても大丈夫なようにガチな演技は必要ないようにしてるのかな。細かい配慮が効いてますね。

 長回しが面白いと同時にノイズでもあり、映画として楽しめるかというと苦しいが一見の価値はあり。まあたまにはいいか、という一本でありました。

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