”ヘラヘラしてるんじゃあない!”『マネー・ショート』
リーマンショックがやってくる!
元医者で、今は金融トレーダーという異色の経歴を持つマイケルは、サブプライムローンが数年以内に債務不履行に陥ることを不動産抵当証券を調べる中、予期。だが、彼の予測はウォール街からも政府からも全く相手にされない。逆張りである「クレジット・デフォルト・スワップ」を買うことで数年後の大儲けを考えたマイケルだが、顧客は彼を信用せず資金を引き上げようとして……。
全世界に激震を起こしたリーマンショックだが、ごくわずかだがこれの到来を予期していた者たちがいた……というお話。
結果論、後からなら何とでも言える、という話ではなく、崩壊は必然であり予測されて然るべきことだった、ということを積み重ねていく。元医者のクリスチャン・ベールの予測が業界の一部に出回り、それを信じたスティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング他のごく数名が動く。
業界の慣習として何となく当然のこと、と思っていたことが、結果として儲かるという前提を省くと、瞬時におぞましいものへと反転して見える。どこまでも続くならば許容されるものが、崩壊が迫っているという目で見ると、途端に許されないものへと変わる。
多くの人間を破滅へと送り出す行為が平然と繰り返され、それらは無知につけ込んだ虚構の上に成り立っている。
その中で同じく儲けようと思っていた人たちが、その虚構に気づき、気づいたがゆえに倫理的葛藤に揺れるまでも描かれる。浮かれ騒ぐ若手投資家たちを一喝するブラピ! 『それでも夜は明ける』に続いて、またプロデューサー様が美味しいとこ取り! あなたが神か!
登場人物がカメラの向こうのこちら側を見て語ってきたり、全然関係ないキャラクターが不意に登場して用語解説を入れてくれたり、ギャグを交えての親切設計なのだが、内容が内容なのでちっとも可笑しくない。ひたすらにブラック。
今回もアカデミー賞にノミネートされてるクリスチャン・ベールさんが短パンにサンダルで義眼演技して奇人キャラ演技。しかしせっかくドラム叩いてるのに、何一つ爽快感がない! どこまでもおぞましい話。「華麗なる大逆転」というサブタイトルがついているのだが、全然華麗じゃないよ。大逆転できるのはわかっているしその時が来たら大儲け……なんだけど、その瞬間が来て欲しいような来て欲しくないような……。
全然予習せずに用語とかほとんど知らずにいったのだが、スティーブ・カレルの醸し出すやるせない雰囲気に引っ張られて、ため息をつくしかない業界の内幕の中を彷徨いました。資本主義の行き着く先は……と暗澹たる気持ちになるが、これが終着点でもないのよね、と現在の日本や世界の不況を思いつつ……。
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