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”個性とはなんぞや”『砂上の法廷』(ネタバレ)

映画


2016年3月公開 映画『砂上の法廷』予告篇

 キアヌ・リーブスが法廷ものに!

 大物弁護士ブーンが殺害され、逮捕されたのは17歳の息子だった。ブーンや彼の妻とも親しかった弁護士のラムゼイは息子の弁護を引き受けるが、彼は完全黙秘を貫く。事件の裏に隠されたものとは? 証言に潜む嘘を看破しようとするラムゼイだが……。

 さすがに少し年取って、若干くたびれてきた感じのキアヌさん。なんかハリソン・フォードに近い雰囲気だな……。演技してるのかしてないのか、何考えてるのかわからないと言うより何も考えてなさそうに見える、そんなつかみどころのない感じ。で、今作はまさに彼のそう言った持ち味をフルに発揮した一本であったという……。

 今作のキアヌさんは、実は何か考えています。他の役者がやっていれば、いかにも怪しいと思える伏線がやたらとある。その怪しさ、ストーリー的な意外性を考えたら、あらゆる手がかりはキアヌさんを指している。
 が、あまりに彼がボーッとしすぎなので、本来意味ありげに見えるはずのシーンがまったくそう見えない。殺人直後の現場にヒョコッと現れたり、死んだ男の妻と言葉を交わしていたりするシーンが、何も考えていない偶然に見える。ハリソン・フォードで言うと『ホワット・ライズ・ビニース』みたいな感じね。

 法廷シーン、裁判の方向性はそもそも彼のコントロールが効かない面が大きいので、キアヌさんもある意味では何も考えずに実直にやっている。法廷では裏がなく、殺人に関してはある、という二重の構造も真相を覆い隠すギミックになっているのが今作の肝であると言えるし、それプラス、キアヌさんのパーソナリティの希薄さがいい塩梅に溶け込んでいて、観てる間は果たして真相は?と首をひねりつつ楽しめるサスペンスになっている。

 ……が、まあそんなことはどうでもよくて、今作の最大のサスペンス&サプライズは、キャストをあらかじめ知って観に行った人は、レニー・ゼルウィガーがどこに出ているかわからないこと。キャストを知らずに観に行った人は、エンドロールでレニー・ゼルウィガーが出ていたのを初めて知って驚くことですね。
 冗談はさておき、あの整形っぷりは危険だな……。言われないと誰だかわからない。痩せてヌードも見せてて、役柄は「美しき薄幸の人妻」で、近所の若い男の子にも憧れられているという……。いや……こういう役を一回やってみたかったのかな……個性を捨ててまで……。そうは言ってもこの後に『ブリジット・ジョーンズ3』が控えてるそうで、別に本人的には良かったのかもしれないな。
 誰かわからんと言えば、なかなかの悪辣っぷりを発揮している殺され役の弁護士も、ジム・べルーシが太りすぎつつ演じてて、往年のカリスマ性はどこへやらという感じでしたね。

 まあ余計なことが気になりすぎて、本編に集中できなかった感じでしたが、それもまた今作の隠し味であったのかもしれない。役者の「今」を考えさせられる貴重な映画でありました。