”あの大空へ”『私たちが飛べる日』(ネタバレ)


『私たちが飛べる日/SHE REMEMBERS, HE FORGETS[哪一天我們會飛]』 予告編 Trailer

 アジアン映画祭七本目!

 高校の同級生だったセンワー、フォンジー、ボックマン。センワーとフォンジーは結婚して10年以上が過ぎ、倦怠期を迎えていた。同窓会で話題に出たボックマンの消息を知るものは誰もおらず、フォンジーは彼の思い出をたどり始めるのだが……。

 『狂舞派』のアダム・ウォン監督作ということで、今回一番楽しみにしていた映画……だったのだが、どうにもこうにも低調な仕上がりで、ガックリしてしまった。

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 美人だけど常に疲れて不満を抱えているようなミリアム・ヨンと、高校時代から付き合い続けているその夫はすでに夫婦関係が壊れかけ。でも、高校時代にはもう一人の友人と三人共に輝いていた時代があったのだよ……。
 舞台は1992年、高校時代へ。もう一人の友人であり、飛行機作りに邁進するメガネ君が紙飛行機に託して手紙をヒロインに渡そうとするが、うっかりスルーされてしまう……。

 かなりこまめに現代と92年を行き来する構成で、それにつれて過去が少しずつ明らかになっていく。目の下のクマが目立つミリアム・ヨンと夫の夫婦関係はほぼ終わっており、夫も隠れて浮気中。同窓会をきっかけに、「あいつ、どうしたっけ?」という話になり、メガネ君を探す旅に出る。
 まあ現在が行き詰まっているから、過去に救いを求めるような話になっているのだが、うらぶれた大人時代がくすみ過ぎなせいか、高校時代もどうも魅力がない。いや、絵面はなんとなく仲よさそう、さわやかげな雰囲気だけど、時系列いじりすぎでぼんやりしているし、冒頭にさらっと始まる学園祭が実は運命の日であったにもかかわらず、端折ったり切り刻んだりでそこに戻る構成がいまいち機能していないのだな。

 ヒロインが後に夫になる男と付き合いだした日が、実は自分もヒロインのことが好きだったメガネ君と離れ離れになる運命の分かれ目だったわけだが、そこまで仲良かったのにまったく会わなくなって、当時はおかしいと思わなかったのであろうか。過去の友情描写が雰囲気だけなのと、現在のローテンションが相まって、そもそもこいつら昔からろくな奴じゃなかったんじゃないの、という風に見えてくる。
 さらに、メガネ君が失恋し、卒業後には視力のせいでパイロットの夢破れて失意の内に死んだという救いのない結末が明らかになるのに、自分たちは模型の飛行機を飛ばして見せて何やら良い話げに気持ちよくなって終わり、というあんまりなラスト。
 現在はくすんでるけど、過去には輝いていた瞬間もあった。あの頃の気持ちを少しでも取り戻そう、ということなのだろうが、あまりに死んだメガネを当時も今も置いてきぼりにしすぎていて、今更自分らだけなにやってんの、という話にしかならない。

 前々回の私的ベスト映画を撮った監督が、今年のワーストになってしまった。大ショック! 帰りも打ちひしがれてしまったよ。

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