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”供物を捧げよ”『X-ミッション』


映画 『X-ミッション』オンライン限定予告【HD】2016年2月20日公開

 『ハートブルー』リメイク?

 FBI捜査官候補生のジョニー・ユタは、かつて命を賭けていたエクストリームスポーツを利用する犯罪者集団がいることに気づく。彼らの目的を探るため、上層部を説得し潜入捜査するユタ。だが、リーダー格のボーディという男の奇妙な魅力に彼は惹かれていき……。

 監督業に挫折し、脚本に活路を見出しながらも『ソルト』『完全なる報復』『トータル・リコール』リメイクと、腰がヘナヘナになるようなズンドコ脚本を連発し続けているかのカート・ウィマー大先生。今度はキアヌ・リーブス主演作品のリメイクにチャレンジ!

chateaudif.hatenadiary.com
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 主役のジョニー・ユタは全然知らない俳優、ボーディはジョニー・ヘンドリクスみたいなヒゲの人。

 リメイクや続編、リブートが作られた時、「かの傑作を期待しても無駄だろう、別物と割り切って見るのが吉」と口では言うものの、あまりにオリジナルへの冒涜が激しすぎて目眩がする、割り切れねえよ!と思うのは、まあよくあることである。が、今作に限って言うと、まったく別物になってるので、あんまり気になりません! 筋に『ハートブルー』の残り香はあるが、印象深いシーンはみんなオリジナルなので。

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 エクストリームスポーツの選手が撮影中に仲間を死なせ、失意のままFBI捜査官に転職するという発端からして無茶苦茶で、上司役のデルロイ・リンドさん(この人も息長いな……)も困惑気味。しかし、そのFBI入るのに普通関係ねえだろ、というキャリアがたまたま、あくまでたまたま役に立つチャンスがやってくる。目下捜査中の強盗事件の容疑者たちは、エクストリームスポーツの選手に違いない! 彼らは「オザキ8」に挑んでいるんだ!

……オザキ8ってなに……?

 説明しよう! オザキ8とはエクストリームスポーツ界の伝説オザキ・オノが考案した8つの究極の試練! オザキ自身も3つまでしかクリアしていないが、この容疑者たちはさらにその上を狙っている!

……うーん、なんだかよくわからないから、とりあえずおまえに任せる!

 そんな感じで、まだ研修生なのに単独で潜入捜査する主人公。こうやって設定の段階で物凄い大嘘をついて、それを前提として話を進める、というのは大いにあり。トンデモ設定だが、容疑者側はそれを信じているので、追う側もそれにある程度合わせざるを得ない。「そんなことがありえるのか?」とかいちいち言ってたら、全然話が進まないからな。

 エクストリームスポーツという形で大自然の神秘に挑み、もしクリアできたらそれは大自然の恩恵に他ならない。クリアの代償として、人類が自然から搾取している資源を自然に返さねばならない……。
 オザキを教祖とするカルト宗教と考えるとわかりやすい。これらが教義であり、その中には犠牲や供物が伴われ、教祖亡き後には新たな指導者が立つ。主人公はFBIとしてそれを捜査する側……なんだけど、やっぱりど新人だから、どんどんオザキ教に感化され絡め取られていくのだな。
 その一方で新教祖様であるヒゲの人は、「オザキは手ぬるかった!」と言い出しどんどん過激化していくのである。二代目が思想を先鋭化していく、というのもこれはあり得る話で、捕鯨船という暴力に散ったオザキの過ちを繰り返さぬよう、自らも暴力で対抗していく。先代オザキ教に感化されてる主人公も、さすがにこれにはついていけない。

 自然に恩返しする、というのに捕鯨反対や鉱山の閉鎖はまあわかるが、冒頭の札束をばらまくのはいったい自然とどう関係あるのかよくわからなかったりするあたり、どうも設定を詰めきれてないなという感じがするね。
 なんとなくだが、「オザキ8」に魅せられたエクストリーム・スポーツ選手二人のプロットがまずあって、それじゃ企画通らないから、無理やり『ハートブルー』の脚本にねじ込んだんじゃないかな。そう考えると、設定の無理さ加減にも説明がつくような気がする。オザキ4の波乗りに失敗したからラストにもう一回持ってくるあたりの強引さとかね……。
 オリジナルの超有名シーンである、「空に向かってバンバンバン」が律儀にあるのはいいんだが、そのあとで駅で電車の向こうに取り逃がしてしまうところがあるせいで、追っかけては逃がすシーンが2回もあってインパクト減。このあたりの齟齬も解消しきれてないあたりがもったいない。

 これでも脚本カート・ウィマーのズンドコぶりはいい方に作用してる方なんじゃないかと思うが、お話のトンデモっぷりが目について、エクストリームスポーツ自体の迫力や爽快さを見せる映画なのに、暗い情念や不気味な宗教観が紐つけされてしまった感は否めない。オリジナルの『ハートブルー』では、パトリック・スウェイジひとりのカリスマ性や生き急ぎっぷりが描かれ、サーフィン自体に悪いイメージは残らんからな。

 アクションは「実写を多用」して迫力あると思うのだが、まあやっぱり波とかエフェクトにCGを使ってることもあって、実際に人間がやってはいるんだろうが、リアルかと言われるとそうじゃない、という微妙なものに仕上がっている。

 異様に長いエンドロールも含めて、話題には事欠かない珍作で、笑いながら見るのがいいんじゃないでしょうか。

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