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”ボンゴじゃないよ、コンガだよ”『ディーン、君がいた永遠』(ネタバレ)

映画


 ジェームズ・ディーンのあの写真に迫る!


 若手写真家のデニス・ストックは、個展を開けるような写真家に脱皮したいと目論むが、糸口をつかめない日々を送っていた。そんなある日、パーティで無名の新人俳優ジェームズ・ディーンと出会った彼は、JDのカリスマ性に目をつけ、LIFE誌で特集記事を組んでもらおうとする。早速、JDに密着しようとするストックだが……。


 デイン・デハーンジェームズ・ディーン役で、写真家デニス・ストック役をトワイライト野郎ことロバート・パティンソン。最近、ホーキング(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20150324/1427198475)やらサン=ローラン(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20151221/1450703031)やら、カリスマ性が異常な人たちの映画を観ていたので、さてJDは如何なる人物であったのか……と、ちょっとドキドキしていたのだが、良くも悪くも素朴な人柄がうかがえるキャラクターとして描かれていて、ホッとしたのでありました。


 登場シーンからして普段のデハーンより太ってて、眠そう、めんどくさそう、かったるさそうな感じ。職業カメラマンからの脱却を図るパティンソンは、そんな彼のスター性に「これはイケるぜ!」というものを感じて、LIFE誌に特集を組んでもらおうとする。が、当のJDはスター気取りがなくて友達を大事にする感じのいい男……なんだけど、なかなか写真は撮らせてくれない。
 このパティンソンの演ずるデニス・ストックさんのキャラ、若い頃の妻子とはすでに離婚しているが、子供には会いに行ってるものの全然コミュニケーションが取れず。子供にゲロをぶっかける珍シーンまである。パティンソンのまったく父親然としない風貌に加え、『マップ・トゥ・ザ・スターズ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20150119/1421671128)の、ハリウッドスターの回りを衛星のように回る脇役兼運転手役を思い出させてくれ、まさにはまり役だ。功名心ばかり先走っていて、それがちょうど大ブレイクして急激にスター扱いされるようになったのをめんどうくさがっているJDに見透かされてしまっている。


 JDさんは「職業:スター」になり切れなかった男で、社長はうるさいしマネージャーもやかましいしゴシップを漁られるのも嫌だし……そういうものを有名税とはまだ割り切れないでいた人。それよりも演技に集中したいんだよ……マスコミに作られたイメージなんてさ……。ただまあ、あまり雄弁な人ではなく、また謙虚な人なんでお説教のようなことも言わないのだね。パティに友情を感じつつも、なかなかそれがわかってもらえず、映画の宣伝をほったらかしての故郷への旅へと誘う。愛用のコンガをかついで旅立つJD。


 映画の最初の方で、美容室やらバーで写真を撮るのだが、それは編集部にダメ出しされて採用されず。後に有名になったタイムズスクエアの写真は、カメラマン的には晴れた日に華々しく撮りたかったのだが、半ば諦めモードで雨だけど何気なく撮った一枚なのだな。後にそれが歴史に残ることなど知りもせず……。


 最後となったその旅の中でも、「ここであっち向いて……」とか、いらん指示出して「君にはガッカリだ」「典型的な都会人だな」とdisられるカメラマン・パティ! しかし、JDの謎めいた魅力の根源であるアイデンティティが、彼の故郷と家族とにある、ということを発見し、ついにそれを写真で切り取ってみせる。その旅は、自らを見つめ直す旅でもあるわけだ。
 ただ、JDは故郷と家族が大好きなんだけど、迎えに来てくれたおじさんに「ボンゴをかつぐのは初めてだ!」と言われて「いや、コンガなんだけど……」とぼやいたり、無神論者のカメラマンが食前のお祈りをしないことを田舎の価値観ではありえないけれど面白がったり、地元の人間とはずれた感性の持ち主でもあるのだな。だから、役者なんてやっているのかもしれない。


 故郷で高校のバレンタインパーティーにゲストで招かれたシーンが素晴らしく、ここはデハーンならでは。『クロニクル』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20131027/1382868073)の時、高校の学園祭では童貞を捨て損ねた男が、まがりなりにも立派になって帰ってきた、その等身大の姿よ……。そして相変わらずコンガを叩くJD。気さくではあるけれどどこかシャイかつ謙虚な雰囲気を放つ、唯一無二の存在よ……。


 ラスト、相変わらずプレミアまですっぽかしちゃうJDは、またカメラマンを旅に誘う……。でも、成功してちょっと大人になっちゃったパティの方が断ってしまう。誘いにきたJDを、上の階の窓からパティが見下ろすという構図で、ちょっとした逆転を表現している。ささいなすれ違いだけれど、それが今生の別れとなった。あとは皆さん、ご存知の通り……。


 予想通りと言うか、エンドロールでは現存する写真が映画のシーン順に続々登場。作中で一枚だけ撮られたカメラマンと二人で映ってる写真も。
 後からじわじわ良くなってくる映画で、これもまた実話力ですね。堪能しました。

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