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”虚ろなる虜囚”『ファンタスティック・フォー』(ネタバレ)


 あの四人がリブート!


 小学校から物質転送装置を発明しようとしていたリード・リチャーズ。7年後、同級生だったベン・グリムと共に研究を続けていた彼は、ついに転送を成功させる。同じ研究をしていたストーム博士にスカウトされた彼らは、ついに大型の装置を完成させ、博士の息子ジョニーと、研究者のビクターと共に異世界へと飛ぶのだが……。


 とにかく製作のごたつき、監督と20世紀FOXの大揉めなど、裏事情の危機的状況ばかりが事前に伝わってきた本作。さあ『クロニクル』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20131027/1382868073)のジョシュ・トランクの最新作やいかに……?と言いたいところだが、後半は本人のタッチできないところで編集されているとかなんとか……。いったいどうなっているのだろう?


 主人公の子供時代、学生時代から始まり、後のMr.ファンタスティックとなるマイルズ・テラーとザ・シングとなるジェイミー・ベルの幼馴染が、物体転送装置の開発に取り組んでいるところが描かれる。同じ装置を開発しようとしながら彼らより一歩遅れていた博士とその娘ケイト・マーラにスカウトされて共同プロジェクトに加わり、とうとう異世界へとテレポートする装置が完成に近づく……。
 なんか……長いな……いつになったらヒーローになるんだ……? もうそろそろ一時間ぐらいになるんですけど……? 異世界は火山帯で溶岩の代わりにエネルギーが流れているような世界で、そこに行って戻ってきたマイルズ・テラーたちと帰還に居合わせたケイト・マーラがようやくのことで謎のエネルギーを浴びて変身を遂げる。
 人体の発火や、手足が伸びる、透明になる、肌が岩石になる……これが最新技術でいかにもおぞましげに処理してあって、ここは『クロニクル』の監督らしい、望まなかった力を背負い「フリーク」となってしまった悲哀を感じさせたところ。さて、登場人物たちはこれをいかに消化していくのか……?


 キング・クリムゾン! 我以外のすべての時間は消し飛ぶ! 結果だけだ! 結果だけが残るのだ!



 突然一年ぐらい経過して、知らない間に全員が能力を使いこなし、軍隊にもめちゃ馴染んでいるぞ! ゴム人間になったあとで仲間を見捨ててトンズラしたマイルズ・テラーを連れ戻し、再びチームは揃った……!
 前半、せっかく丁寧に描いたところが、突然端折ったことであっというまに形骸化してしまった感あり。この一年のキャラクターの感情の流れが見えないので、突然感情移入しづらくなる。文脈が見えないと、よりによって全員が無表情キャラにしか見えないのだよな。マイケル・B・ジョーダンがやたら飛びたがり好戦的になってるのも頭が悪そうに見えるし、ジェイミー・ベルはそもそもメイクで顔が見えないし、マイルズ・テラーもマッドサイエンティスト系で目が死んでるし……。そしてケイト・マーラは姉のルーニーの三分の一も演技力がないのではないか……?
 ここらあたりから、全員が無表情に台本を読んでるだけに見えてきて本当につらい。映画というのも生き物なので、前半分だけが肥大していたらそれは歪に見えるし、心臓が血液を送り出しても、後半に流れ込み一作品の中で循環しなければ死んでしまう。
 まさにこの後半は、血液も流れず脳波も止まり、ただ用意されているだけの展開をなぞり台詞を読み上げているような……ゾンビのようなものになっている。その象徴がドゥームというキャラクターで、同じく顔が変形して表情もなく、「破壊に取り憑かれている」という悪役によくある設定で登場する。そのまま破壊の限りを尽くすのかと思いきや、異次元世界に戻ってそこから地球を破壊しようとし、もはや役者が参加しているのかさえわからないCG空間でピョンピョコ飛ぶバトルが繰り広げられ、事態はさらに腰砕けに……。
 だいたいケイト・マーラの透明化がどうでもよくてあのエネルギーフィールドばかりが便利すぎ。簡単に異次元と往復してしまうので、今までの研究は何だったんだと思えてしまう。戦いは予定通りなんとなく終わり、異次元からあっさり戻ってきたら基地のあったところは大穴が空いていたのだった。


 エピローグもひどかったな。偉い人に「君たちが世界を救ったのは知っている」と言われるのだが、なんでそれがわかったのか知りたい。自己申告か? そもそも誰もが異次元行くとかいう余計な研究をしなければこんなことにならなかったのだし、威張るような話ではないのでは……。で、新しい施設をもらって、これからオレたちが世界を守るぜ、って、その動機やモチベーションはいったいどこから生まれてきたの?という……。


 『クロニクル』はヒーロー誕生秘話としても読み取れる映画だったのだが、ジョシュ・トランクのテイストだと、全然ヒーロー然としてない人が主役なので、後半に向けてそれなりの説得力が必要……なのだが、このぶった切りっぷりではどうしようもなかったね。
 たぶん、やりようによってはもう少しまともになり、カットされたシーンが復活すれば後半の血肉の通わぬ展開も観られるものになっていたのかもしれない。が、結局映画は公開されたものが全てで、クレジットを引き揚げなければ、それは監督の名声に直結する。そういえば、アラン・スミシーって最近見かけないな。


 後半の、取って付けたようにクライマックスでっち上げてなんとか体裁を作った感じが、まさにゾンビか今作のドゥームであると書いたが、もういっそのこと殺してやれよ、という気になる。中途半端に生きて世に出るより、その方が幸せじゃないのかな、と思うのだが、形骸となった映画でもこうして公開しなければならない、最後は爆死するとわかっていてもある地点までは歩かせないといけない、そんな理由が作った大手にはあるのだな……。

クロニクル (字幕版)

クロニクル (字幕版)