”ワン・モア・タイム”『EDEN』


 フランス映画!


 1990年代、フランスではエレクトリックミュージックが急速な広がりを見せていた。才能を発揮しDJを始めたポールは友人とユニット「Cheers」を組み、大人気を博す。仲間と好きな音楽に囲まれ充実した日々。だが、いつしか生活は荒れ始め……。


 冒頭から大変オシャレな映像、オシャレな音楽、オシャレなクラブシーン……。なんだかクラクラするぞ……? DJ志望やらコミック作家志望やらキラキラと輝く大学生たちが登場し、勉強なんてそっちのけでそれぞれの夢に突き進んでいく……! ちょっと離れたところにはデビュー前のダフト・パンクなんかもいたりして、いかにも夢がこれから始まるんだ、ということを感じさせる。


 かの『やさしい人』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20150225/1424874067)のハゲ散らかしてた人ことヴァンサン・マケーニュさんがクラブを持っている。うーん、この人、俺より年下だったのだな……。今回はなかなか頼れるポジションでおいしい役。でも『ショーガール』を何回も見せて傑作と力説するとか、本当に面倒くさい人だからやめてほしい。
 彼のサポートも受けてDJを始める主人公ポール君。舞台はパリだからしてキラキラ感が延々と続き、ああ……まぶしい……その中で成功の階段を駆け上がりつつ、女もヤクも楽しんで……。ただ、彼本人としてはまだまだ発展途上のつもりなのだな。まだキャリアも積みたいし、海外でも活動したいし、彼女もいるけどまだ落ち着くつもりはない。
 そうこうしている内に月日は流れ、音楽シーンも移り変わっていく。店ではより重要なポジションになり、彼女も代わり、ついにアメリカに行ってプレイし……。まあ投資やら借金も多いけど、まだまだ充実している! これからこれから。ただ、コミック作家志望の友人は自殺したり、微妙に影が落ちる場面も……。
 この辺りから、人生の分かれ目みたいなものが知らない間に来ているんだよな。いつだったのかもわからない内にピークは過ぎ去っていて、その時その時の何気ない選択が後からずっしりと響く。死んだ友人、去った彼女……。クラブシーン、そして自分の人生からいなくなった人たちを脱落者のように捉えていたが、実はそうではなかった。


 相変わらずクラブやってるやさしい人だが、同じスタイルだと段々うまくいかなくなってくる。後半はDJ残酷物語的様相を呈する……。時間経過が早くて数年単位でポンと飛ぶのだが、ずーっと同じジャンルに固執する主人公のスタイルが全然通用しなくなってきて、まったく売れなくなってくるのが描かれる。その間もヒット曲を飛ばすダフト・パンク……!


 船借り切ってパーティしても人が集まらず、隣のサルサに負けたり散々な展開に。さらに借金も膨らみ、ヤクもやめられず、彼女は別の男と子供作ってて……。序盤のキラキラ展開は正直かなり退屈だったのだが、煌びやかな楽園はいつしか平凡さに堕し、人生は夢で輝いてたはずが、いつの間にかそれに食いつぶされている。


 終盤は完全にライフゼロのところをさらに滅多打ちにされている感じで、小説講座にになんか通い出してる。それも元カノが小説家デビューしてそれに影響されただけっぽいが……。で、同じ小説講座に通う女に、


「ああ、オレ、昔はDJやってたんだよ。ガラージって知ってる? 知らないよね、アハハ……」


のくだりは涙なしには見られない。入れあげてたクラブの客の女には「寝るほどの男じゃない」と思われ、昔の彼女が離婚したのをきっかけによりを戻そうとする最低展開もバッサリ!
 クラブ行ったら女がMacbookで曲流してて、もう完全にお呼びでない自分……。そしてまたも現れるダフト・パンク! 有名な割に顔はあまり知られてないというギャグはありつつ、どうしてこんなに差がついてしまったのだろう……泣けるね!


 主人公のむせび泣きがまた印象的なあたり『やさしい人』とも似てましたね。いい感じに心を抉ってくれる映画でありました。

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