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”奴らを許さない”『インターセプション 盗聴戦』


 シリーズ三作目!


 香港郊外、新界。開発問題が続く中、土地開発に反対する地主が交通事故で死ぬ。5年後、彼を轢き殺したザウが出所し、幼馴染のカウキョンとその兄弟たちを訪ねてくる。実はザウは事故を装って地主を殺し、仲間に利益をあげさせていたのだった。鉄砲玉となったザウを歓迎するカウキョン。だが、その時すでに二人の心は遠く離れ……。


 前作は二本まとめて公開だったのだが、続編という触れ込みなのに死んだはずの人が全然違う役で出てきてクラクラしたものである。


『盗聴犯 死のインサイダー取引』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120811/1344655574
『盗聴犯 狙われたブローカー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120812/1344749492


 今回もラウ・チンワン、ルイス・クー、ダニエル・ウーの三人が主役で、例によって全然違うキャラクター。
 ラウ・チンワン、ラム・カートン他の四兄弟と、その幼馴染であるルイス・クーの関係が発端。土地買収の障害となる地主チン・カーロッを事故を装って殺す鉄砲玉を、ルイス・クーが買って出る。一人だけ血縁がなくまだ若いがゆえに、ある意味善意でやったことだったが、出所後に疎まれることとなる。なんだろうね、秘密を知り負い目を握った人間は、もうかつてのような関係には戻れないのであろうか。で、出所前からそうなるであろうことを薄々察知していたらしいルイス・クーは、四人を盗聴して出し抜こうとしていた……。


 この流れ、出所した→裏切られた!もう信じられねえ!→盗聴して弱味を握ってやる!じゃないんだな。あくまで最初から、後々切り捨てられるであろうことを予見して先手を取っている。情の部分で鉄砲玉を買って出たものの、理の部分ではこいつら信用できねえわあ、いずれ裏切られるわあ、というのがわかっていたわけだな。それでも彼らのために人を殺して、自らは片脚まで失ったわけで、いやあ、物凄い屈折というしかない。まさにルイス・クーにぴったりの役だ!
 そして、そんな屈折を四人は絶対に理解できないのである。唯一、ラウ・チンワンだけが、わからないなりに、彼をあっさり切り捨てることに罪悪感と危機感を抱いている。
 ダニエル・ウーは元ムショ仲間の盗撮のプロとしてルイス・クーに手を貸す役回り。この人は当初は割合フラットな立場で、「あー、うん、頼まれてるからやってるだけだよ」というだけに見える。が、たぶん何とはなしにだが、鉄砲玉して貧乏くじ引いたルイス・クーへの同情や共感があるのだな。実は人情家なんだ。それに引っ張られて、少しずつ渦中に巻き込まれていく。


 冒頭で説明される「丁権」が非常に独特なのでややこしいが、買い手側からすると売買の契約成立のために土地の権利とは別にもう一つ買っておかねばならないもの、というところか。
 設定や人間関係が非常に錯綜して思えるのだが、ルイス・クーのキャラがすでに葛藤を終えているせいで出所後の立ち位置を変えないため、地上げを仕掛けているラウ・チンワン側と、それを裏で潰そうとするルイス・クー&ダニエル・ウー側に分かれて対立構造が明快。実はシリーズでは一番わかりやすいのではなかろうか。
 盗聴はもちろんだが、このシリーズのもう一つのファクターである金の話もたっぷりである。ただ、金に翻弄されるのは地元の庶民で、メインキャラは皆それを操作し操る側にいるため、前作のような見ているこちらが揺さぶられ深淵に引き込まれていくような没入感は薄い。その中でジョウ・シュンがなかなか逞しくて美味しい役で、土地を金蔓にしか見ないことへのアンチテーゼを他のモブキャラと共にぶち上げ、ダニエル・ウーをいつしか引っ張っていく。そしてまたも彼女のことが好きなのにそれを全く理解できないチンワン……。


 チンワンは今作で主演男優賞を獲得しているが、人情家で頭も切れるはずなのに価値観の点ですっかりずれてしまった男の微妙な心情を熱演。気がつけば全てを失っているのだが、なぜそうなったのかはまったくわからないのだ……。


 少々今までとテイストが違っていましたが、シリーズの名を冠するに相応しい一本で面白かった。あ、ラム・カートンもまた最高のキャラですよ!

盗聴犯 狙われたブローカー (字幕版)

盗聴犯 狙われたブローカー (字幕版)