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”遠い山の呼び声"『ビッグゲーム』

映画


 サミュエル・L・ジャクソンが大統領に!


 ヘルシンキの会談に向かうアメリカ大統領専用機エアフォースワン。だが、シークレット・サービスの裏切りにより警備システムが狂わされ、ミサイルが撃ち込まれる。フィンランドに墜落した飛行機から単身脱出した大統領を助けたのは、13歳の誕生日を迎え初めて単身で狩りに入った少年オスカリだった……。


 サミュエルと猟師の子供が糸電話で喋ってる予告編だけで バカバカしさ満開ですが、本編もなかなかいい感じにバカな映画で最高。


 フィンランドの猟師たちの習わしとして、13歳になったら成人の通過儀礼として、一人で森に入り1日かけて獲物を仕留める、というものがある、という設定。主人公は13歳になり、かつて熊を仕留めた伝説のハンターである父の息子として、山に入ることに。……が、やっぱり現代っ子は体力が低下しているのか、まず弓が引けなかったりするのである。猟師のボスは心配顔で、やっぱりやめといた方がいいんじゃないの……と言うのだが、親父はここは強硬に譲らない。食料やキャンプ用の装備、弓矢などをカートに積み込み、さらに獲物が出やすいという場所までの地図を渡して段取りは万全。しかし弓が引けないのではそもそも……と不安いっぱいながら出発。主人公は主人公で、鹿の鳴き真似なんかして、それなりに緊張してるもののどこかずれているな……。


 その一方で、ヘルシンキを目指す大統領専用機エアフォースワンの機上。支持率絶賛低下中のサミュエル・L・ジャクソン大統領、信頼するシークレット・サービスに愚痴りつつ、妻に止められているクッキーを食べる……。この本来なら絶対に結びつかないはずだった地上と空のギャップが急激に埋まることに……。


 冒頭から『エンド・オブ・ホワイトハウス』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130618/1371462092)のジェラルド・バトラーみたいにキメキメに出てきたシークレット・サービスはレイ・スティーブンソン。三人組で出てきたら一番脳みそ筋肉の男……というぐらいのイメージだったのだが、今回はそれなりに賢そうに見えるぞ!(所詮考えの浅い悪党だが……)。彼の裏切りによってサミュエル大統領は森の中に落下。目的地を目指していた少年と出会うことに。


 中盤まで、音楽こそ勇壮だが尻すぼみで盛り上がらない展開が続くんだよなあ。自分が期待されていないミソッカスであることを薄々感じている二人が行動を共にし、なかなか殻を破るまでには至らない。きっかけは目の前にあるのに、それに気づかないふりをしているかのような……。
 が、その盛り上がりそうで盛り上がらない展開はすべて計算で、しっかり大爆発が待っているのである。


 負け犬になりかけていた大統領の復活譚が、あるべき少年の通過儀礼を助ける。主人公はお父さんに渡された、鹿の集まるという盆地にたどり着く。しかし鹿が出てもろくに矢も飛ばないしどうするんだ……と思ってたら、盆地にはなぜか冷凍庫がぽつねんと置いてあるのである。開けた中には、矢の刺さった鹿の頭が……。メッセージが添えられ、「誕生日おめでとう、息子よ」との父の言葉……。


「僕は頼りないダメな息子なんだ〜! ハンター失格なんだ〜!」


と、絶望する主人公! せっかくの通過儀礼なのに、おまえは永遠に子供だよ、と言われてるようなもので辛い。……が、作中ではっきり明言されるわけではないのだが、あの親父の仕留めたという熊、あれも祖父さんの仕込みなんじゃないかなあ。主人公はやたら絶望していたが、お父さんには全然悪気はなくて、単に自分のしてもらったことをしてやったに過ぎないような気がする。あるいは、他の猟師たちの間でも公然の秘密になっているのかもね……。


 そんな彼を励ますのがサミュエル大統領なのである。君は私を助けてくれた、立派な男だ。獲物は獲れなかったかもしれないが、大統領を助けた勇気ある人物だ……! ついに追っ手が迫り、ボコボコにされながら連れ去られる大統領。なぜか冷凍庫に詰め込まれる。


 全ては終わりかと思われたその時……英雄は立ち上がるのだ。


 アメリカじゃ副大統領他がこの遥かフィンランドで起きていることを衛星で丸ごとモニターしていて、起きることにいちいち驚いてくれるから面白い。大統領曰く「地上最強の軍」は全然間に合わず、たった二人の反撃が始まる。


 それなりに人死には出るが、主人公が子供だからバイオレンスさもほどほどで、シンプルな設定や裏の陰謀も含め、やや子供向きか。だが、後半はそんな馬鹿なという力技を連発して盛り上げに盛り上げる。脱出シーンでアレを使ったのは『ダイハード2』以来じゃないか……。


 安っぽさとお約束のバランス、ベタさとオリジナリティの融合を巧みに成し遂げ、思いの外面白く仕上げた逸品。非常に楽しく見られましたよ。

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