"俺のインターセプター"『奪還者』


 ガイ・ピアース主演作!


 世界経済の崩壊から10年、エリックもまた全てを失った男であった。強盗団に車を奪われた彼は、執拗な追跡を開始。その途中、強盗のリーダーであるヘンリーの弟・レイと出会う。レイは強盗の最中に撃たれ、仲間に見捨てられていた……。


 『アニマル・キングダム』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120313/1331644645)の監督の映画をまたもタランティーノが絶賛!ということで、今回はオーストラリアの荒野が舞台。経済が崩壊して10年後、ということで、『マッドマックス』フォロワーっぽいイメージ。
 荒野を車ですっ飛ばしていたガイ・ピアースさん、途中の店で飯を食ってる時、強盗らしい三人組に車を盗まれてしまう。ガイ・ピアースは強盗が事故って乗り捨てた車に乗って「奪還者」となって追跡を開始する……。


 むむっ、何でそんなに必死になって追いかけるんだ。そんなに車が大事なのか? 俺のインターセプターがっ!とそういうことかな? 愛車にやたらと執着してるんだな、この人は……。代わりに手に入ったこれもまあまあ便利そうじゃないか、別にいいじゃん、と思ったら、その執着の理由が後々明らかになる、という話。
 ただ、ある方向にミスディレクションしているわけではなく、映像としても台詞としてもそのことをまったく説明しないので、まあそういうものか、と納得せざるを得なくなる。ゆえに、オチでそうでないことが明らかになっても、えっ、そうだったの?と驚くというよりはポカーンとなってしまった。まあ狂人のやることなのだが、車への執着でも充分狂ってるので、実はこれでしたと言われても同じレベルの話じゃないかとなってしまう。


 まあ表面の筋だけ追うとそんな感じなのだが、途中の医者のところに立ち寄るシーンなどで、一応手がかりは示されているよね。さらに、途中で強盗三人組から捨てられた男、ロバート・パティンソンを拾い、案内役として道連れに。このパティンソン、いかにも足りない感じで言葉もたどたどしく、撃たれたから見捨てられたというのもむべなるかな……という演技でなかなかいい。この彼の演技が何を思い出させるかと言うと、そこがオチにつながってくるのかな。


 法と秩序が崩壊した世界では、誰もが生存を図るだけで精一杯になり、人と人のつながりもまたどんどん希薄になっていく。その寂寞さと、そこでか細い人間性を求めて彷徨し続ける主人公の悲哀と空回りっぷりが見どころで、そのあたりの演技はさすがガイ・ピアースと思いましたよ。とにかく雰囲気勝負の映画で、悪くはないが面白くもないところであったな……。