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”あれは分身に過ぎない、フハハハハ”『ターミネーター:新起動』


 シリーズ再起動!


 1984年、ロサンゼルスの片隅。そこで人類最後の戦いが繰り広げられる……はずだった。2039年、スカイネットを打倒し人類の勝利が告げられたその日、指導者ジョン・コナーは彼の母親サラを殺すためにタイムスリップしたターミネーターを阻止するため、志願兵カイル・リースを送り込む。ウエイトレスであるサラをカイルが救う、本来の歴史ではそうなっていたが……。


 またリブートか……ということですが、今回は『3』以来のシュワ復帰。オリジナルである1〜2作目をなぞって、別の時間軸の物語を構築する……まあ平たく言えば公式のパロディみたいなもんですね。しかも流行りの三部作構成の一作目だそうで、大コケしたから続編は作れるか怪しいというよくあるパターンに陥りそうな代物。もうこの時点で内容は推して知るべしか……。


 『4』は未来世界が中心だったので割合頑張っていたと思うのだが、今作の冒頭、CGで派手派手なのは結構だが、登場人物がいかにも健康的につやつやつやつや……。悪環境の中で絶望的な戦いをくぐり抜けてきたようにまったく見えない。
 当然、カイル・リースもつやつやむちむち、いかにも健康的に。『ダイハード5』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130222/1361502514)でジョン・マクレーンの息子、今作ではジョン・コナーの父親という役のジェイ・コートニー。なんだろう、この優遇されっぷりと、シリーズの新作を破滅に追い込む持ってなさは……?


 T800転移シーンから、カイル・リースがやってくるところまでは完全にオリジナルをなぞっていて、しかしここで衝撃の急展開が! T800を襲ったもう一人のT800、さらにカイルを襲うT1000、それを救ったのはサラ・コナーであった……。
 靴のサイズを合わせるシーンなど、小ネタも仕込んであってこのあたりの再現ぶりはなかなか面白い。ただまあ、こうしてオリジナルを踏襲したくすぐりは、ある程度の面白さが担保されてるに決まっているわけで、ここからどう展開させるか、というところが問われる。


 しかしまあ、未来からはバンバンやってきて、こちらからもドンドン未来に行けるぞ!という設定では、歴史の改変がし放題になって軸がないため、キャラクターが定まらない。縛りがなくなって何を描いてもよくなっているのが致命的。
 一作目ではマイケル・ビーンがムキムキマッチョのシュワちゃんに比べていかにも貧相で、不健康そうで頼りなくて、何でジョン・コナーはこんな男を寄越したの?という見方が成立するから面白かったのだけれど、これだけパロディ、メタ要素が突っ込まれると、もはやそんな設定さえも意味をなさなくなるということか。
 健康かつ頭悪そうなジェイ・コートニーと、サラ・コナー役のエミリア・クラークが、なんだか高校生みたいなやりとりをしてるのを見ていると頭が痛くなる。なんだ、この知能指数の低下ぶりは……。ただ、エミリア・クラークはメイクでちょっとリンダ・ハミルトンに似せている感じがあって、意外に雰囲気ありましたね。


 さて、一作目の時代から次は二作目の時代に行くのか……と思わせといて、「別の時間軸の記憶」なるものが突然飛び出し、舞台は現代へ。カルチャーギャップネタはそこそこ、せっかく女子が裸になってるのに高校生カップルみたいなことやってるエロスのなさなど、映画自体のセンスのなさをさらけ出しつつ、今作最大のサプライズが……。


 予告でも堂々とネタばらしされていた、ジョン・コナーは実はターミネーターだった!というシーンも、元は人間だったけど後からナノマシンで乗っ取られた、ということだから、実はサプライズでもなんでもなかったのだな。
 親子三人が揃う、というシリーズ初の絵面が、こんなことで消費されてしまうのにも仰天するが、揃ってる三人がいかにも華がないのが救いか。パロディだからいいんですよ、うん。ジェイソン・クラークのカリスマ性のなさも異常。いや、この人は部下に一人いればそりゃあ有能だろう、という気がするのだが、リーダー、ましてやキリストとしては弱いよね。
 ジョン・コナーがT3000に乗っ取られるという展開は、キリストがアンチ・キリストになる、ぐらいの話のはずだが、この華のなさに加えて「スカイネット」がベラベラベラベラと良くしゃべるようになったもんだな……。たしか『4』でもやってたが、ウルトロンじゃないんだから、神秘性も何もなくなる。最もやってはいけないことだろう。


 一作目では何もしてなかったシュワちゃんが、同じことを今度は演技して見せているのは何かと感慨深い。彼も今作のご都合主義の極みのようなキャラで、もうないかもしれない続編にネタを残すために正体不明の部分を残していたり、最後もあっさり復活したり、看板スターだから美味しいところ取り。彼がいるから何とか成立しているのだから当然だが、ゆえに浮いている感覚もあり。


 「審判の日」がズルズル先送りになる、というのは『3』から登場した設定で、まあこれが許される限り、今回の企画が頓挫してもまた懲りずに作り続けられるのだろうな。
 クライマックスの退屈さもちょっと異常で、最後の方で寝そうになったのはひさしぶり。もう少し脚本と演出と役者がどうにかなれば……って全部か。もう続編はなんとか作られても観ないような気がする。

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