”二重螺旋の蛇”『プリデスティネーション』(ネタバレ)


 ハインライン原作!


 1970年、爆弾事件の頻発するニューヨーク。作家のジョンは、場末のバーで出会ったバーテンダーに自らの出自を語り始める。実は彼はかつてジェーンという名の女だったというのだ。だが、その数奇な人生を語り終えた時、バーテンダーはジョンの追う男の居場所を知っていると告げる。その男はかつてジェーンと恋に落ち、妊娠させ、どこへともなく不意に消えていた……。


 なんかSF映画見るの久しぶりのような気がするので、楽しみにしてましたよ。監督・主演が『デイブレイカー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20101211/1292031616)のコンビ。あれも吸血鬼になったと思ったら元に戻っちゃうマッチポンプみたいな話だったけれど、今回はそこを徹底的に突き詰めたような……。なんだ、円環構造みたいな話にこだわりでもあるのか?


 原作は未読だが、粗筋読んだ限りでは後の爆弾魔との対決は丸ごと映画の創作なのかな。登場する作家とバーテンダーが同一人物であり、かつて消えた男と女だった頃の作家も同一人物、生まれた子供が成長してまた自分になる……という、メインの全登場人物が実は自分であった、という設定。これだけで円環構造になっているのだけれど、さらに、そうして時間を駆けずり回って探していた爆弾魔も、未来の老いた自分であったということが明らかに。


 まあややこしおもしろいと言いますか、複雑な設定と展開を追いかけてるだけで退屈はしない。
 主人公の一人を演じたサラ・スヌーク、ニヒルで奇妙な存在感の持ち主で、まだまだこんな才能が隠れているんだな……。なんとなくエマ・ストーンみたいな顔に見えたが、いっしょに見てた妻は「エドワード・ファーロングみたい」と言ってて、見る人によって違う顔に見えるような……。
 この人が女性時代と男性時代の両方を演じ、さらに顔を火傷で失ってから整形でイーサン・ホークに変わる。「同じような細面」と言ってたが、さすがに顔が違いすぎるだろう。サラ・スヌークが全役やったら、絵面的にはすっきりしたと思うが、そうすると一瞬でオチが割れてしまうから、取捨選択の結果ですな。小説では想像するしかないのだが、顔をババンと出してしまう映画ならではの瑕疵という感じ。
 かつての二度にわたる自分との出会い(スヌークとスヌーク、スヌークとイーサン)が二度とも人生を変えるきっかけになり、タイムパラドックスの輪から抜け出してもなお、それを再現したいと願う気持ちが妄執へと変わっていく……というオチも、映画オリジナルの設定として面白かった。スヌーク同士の出会いのなんだかよく分からないロマンチックさに比べて、イーサン・ホーク同士のうらぶれた男同士の顔合わせの悲しさがまたいい対比になっているのだよね。顔違いすぎるから、同一人物である、という前提はちょっと感覚的にピンとこないのだが……。


 ファンタジーやラノベで、登場人物が身内ばかりだったり世界設定がマッチポンプだったりするのを「閉じた物語」なんていう風に言ったりするが、バッキャロー、本当に閉じた話ってのはこういうことを言うんだよ〜!
 『ミッション:8ミニッツ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111104/1320331717)あたりと合わせて観たいSF映画でありました。

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