”いや、親友は私だから"『あと1センチの恋』(ネタバレ)


 リリー・コリンズ主演作!


 6歳から幼馴染だったロージーとアレックス。友達以上の関係でありながら、高校最後のパーティーは互いに違う相手と行った。それでも、卒業後は二人ともそれぞれの夢を叶えるためにボストンの大学に行くことを約束していたのだが、ロージーは妊娠によって進学を断念することに……。別々の人生を歩むことになった二人は、やがてすれ違うようになる。


 2014年最後の鑑賞……昨年の映画締めが『ゴールデン・スパイ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140108/1389182072)で何とも言えないラストになったので、今年はもう少し手堅く行こうということでチョイス。


 全然予習せずに行ったが、想像してたより長いスパンの物語でした。高校生だった主人公が、出産と結婚を経る11年に渡るお話。男と出会うシーンは子供時代なので、それも含めたら24年ぐらいか。


 主演のリリー・コリンズ、太眉で、ルーニー・マーラをちょいと寸詰まりにしたようなルック。美人だが完璧ではない、何だか親しみが持てる雰囲気。さてさて、演じるキャラクターも全然完璧ではなく、むしろ欠点だらけ。気は短いし思い込みも激しいし、やらかしては幼馴染や親に助けられる。アメリカの大学に行ってホテル経営の勉強をする……という計画がむしろイレギュラーだったかのように、バカな男のせいで妊娠、あっという間にシングルマザーに……。
 親がカトリックだから中絶は嫌だし、里子に出すか……と思ったが、産んだら母性が芽生えて……というあたりはいささか古臭く、これはイギリスらしい価値観だな、と思いましたね。とはいえ、この娘の存在は後々効いてくる。


 幼馴染の男の方はサム・クラフトン。えーっと……『スノーホワイト』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120715/1342353043)で……なんか出てたっけ? 王子役? イケメンではあるが、いまいち押しが弱そうで頼りない。映画の始まる高3では童貞という設定なのだが、それも何となくうなずけるルックス。こちらは後にモデルになる同級生の美女ベサミーと初体験を済ませ、医者になるためアメリカに……。リリコリが子供産んでたのも後から知り気にかけつつも、イケメンのおかげで順風満帆、すぐに金髪美女にもモテて不自由なし。それを見てリリコリは祝福しながらも、距離が離れていったり彼だけ先に行ってしまったように感じてしまう……のだけれども、実は彼は心の中に空虚さを抱えていたのだった……。


 ストーリーテリングが優れていると言うより、基本的にバンバンとイベント事が起きて退屈しないような作りになっている。そのまま行けばなんとかなってたかもしれないのに、思いもかけぬハプニングが……!という展開の連発。波乱万丈とまでは言わないが、人生において起きてもおかしくないトラブルが集中的に起きる。それによってことごとく二人の進展は阻まれ……。見てると段々、「またかよ!」「やっぱり!」とツッコミを入れたくなる。あとちょっとでチューしたのに……!
 後半も畳み掛けるようにすれ違いが加速度を増していき、とうとう自分の想いを認めざるを得なくなったリリコリが、その理不尽さに気づくあたりも笑った。「なんで私たちばっかりこういうことに!?」と、神の見えざる手の存在に気づいたような、ややメタな視点が唐突に持ち込まれる。もう自分たちはこうなるしかないのか……!?
 友達になる薬局の女が、「彼は親友だったのに」と嘆くリリコリに対し、「いや、親友は私」(だから、あれは「男」であるからして、そこらへん区別するように)と言うところも面白かったところ。


 邦題「あと1センチ」の通り、チューしそうになってはどっちかが思いとどまって寸止めするのだが、実はすでにオープニングで、リリコリの方は泥酔状態でだったけどキスしてしまっており、それが伏線になっている。主人公のトラブルを招く向こう見ずさの表現であり、男の方の煮え切らない態度の原因でもある。
 リリコリも完璧には程遠いのだが、この男の方も実に優柔不断で自信なさげで、アメリカで自分の生活を誇ってみせるあたりも、内心自分で全然信じてないあたりが丸見えになっている。要は「男」になっていない。何不自由ないように見えるがなぜなんだ、理屈で考えたら確かにそうなのだが、他人からは完璧には見えても幸せとは限らないのだ。


 葬式にぬいぐるみ持って来るセンスも、人によってはどうかと思うところだが、リリコリ的には最高!であるのだな。これはもう長い時間を過ごしてきた者同士の通じ合いで、いい悪いの問題では全くない。
 初恋や初体験、通じ合っていたはずの人、最も愛していた女性に対し悔いを残すと、その後、誰と何回関係しようとも、その男は成熟しきれず、こじらせた童貞同然なのである。リリコリの娘に初めてチューした男の子の心情を熱く代弁するのに爆笑。
 最後は、「男らしく君をダンスに誘うんだ」と言うセリフの通り、やっとあの日失敗した通過儀礼の事も懐かしく思い返せるようになった……というオチですね。


 ラストは別に結ばれずに物悲しく終わっても、映画としての出来にはまったく影響しなかったと思うが、そこを「んあ〜、離婚してきちゃったよ」と、いい加減にハッピーエンドに持っていくこの緩さが最高ですね!


 その裏で、最大の敵だと思っていたモデルの女ベサミーが、実は理解者の一人であったというオチはわりと面白かった。こういうライバルポジションのキャラって、高慢で嫌な人物として描かれることが多いのだが、この人はそういう嫌さが全然なくて、単に大雑把で鈍感な人に思える。むしろ主人公の、全然気づいてない彼女に対する敵意とイラつきっぷり、コンプレックスの方が理不尽。ただ、いらんプライドのせいでそれを表に出していなかったので、全然その嫉妬も伝わっていなかったのだな。
 結婚式後の別れのシーンで、「えっ、私って場違い!? そういうことやったん!? もしかして高校の頃からずっと!? あーっ……! なんかごめん……!」という感じか、(観客からしたら今更)ものすごく驚いているのが面白い。


 いやはや、やっぱり年末はこんな感じの緩くて楽しい映画でいい気分になるのが理想ですね。その中にもそれなりに尖った問題に触れるセンスがありつつ、男女の心情の機微にも切り込んでいる。バタバタして、イチャイチャして、キュンキュンするのよ。ハッピーエンド万歳。

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