”お帰りなさい”『ホビット 決戦のゆくえ』


 ついにシリーズ完結!


 一作目(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20121220/1355930271)。
 二作目(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140312/1394616869)。


 怒りに燃え、ついに邪竜スマウグは飛び立ち、湖畔の街へと襲いかかった。なす術もなく見送るビルボたちだったが、トーリンはついにはなれ山を取り戻して王の座につき、その巨万の財宝を取り戻すことになる。王の証、アーケン石を血眼になって探すトーリンに異常なものを感じたビルボは……。


 結局、『ロード・オブ・ザ・リング』一作目から、十数年間か……。なんという大作シリーズだったのか。二つ目の三部作が、とうとう完結。
 しかし、さすがに色々とネタが尽きていたか、ひたすら戦うばかりの完結編になっておったのは否めない。二時間の映画のラスト30分を引き延ばしているような感覚が、どうしても残ってしまったね。原作でも、ほんのわずかの分量しか割かれていない部分にアクションをひたすら盛ったような歪な構成でもあった。
 まあその辺りは、もはやおなじみキャラの活躍を見ればそれでよし、としておくべきなのだろう。


 何だかんだ言って、クリストファー・リー御大の殺陣が見られるとは思っていなかったよ……。『ロード・オブ・ザ・リング』でもガンダルフとの杖の取り合いバトルに勝っていたが、その実力がついに発揮されました! このシーン、ガラドリエル様とエージェント・スミスも出てきて、ゲスト出演の方々の出番を一回で済ませました、という大人の事情も感じさせたところではあったが。
 スマウグさんがわりとあっさりやられてしまうのもわかっていただけに、決着は前回のラストに入れても良かったんじゃないかとも思うが、そうすると前半に見せ場がなさすぎるか。


 ビルボやトーリン、レゴラスやエルフの王様など、キャラクターはそれぞれにかなり複雑な感情や葛藤を抱いているのだが、大筋とあまり結びついていないので、一気に収束する感覚に欠けるのも物足りないところ。シリーズ完結編ではあるが、壮大なクライマックスと言うよりは消化試合的になってしまった。まあ全体の中では中盤の小見せ場という位置付けだからな。
 その中でも、王冠と財宝に取り憑かれてしまうトーリン(しかも目玉とも言えるアーケン石さえないのに!)と、全然欲のないビルボの対比と、その二人の間の友情がメインとして描かれる。これも恋愛としては(笑)、一作目のラストがピークで、今回は元の鞘に収まれるか否かの話という話のようであった。


 本当にガス欠を起こしながら今までの慣性でなんとか走り抜けたかのような内容で、レゴラス階段ジャンプもお約束だわね。
 最後はトーリンvsアゾグの因縁の対決で締めたが、せっかくの五軍の戦いの結末がいい加減なのも気になった。オークが二軍、人間、エルフ、ドワーフ合わせて三軍で、結局エルフ軍は撤退したのか否か、いかにも少なそうだった人間軍の被害状況はどうだったのか、などなど……。最後も鷲のおかげで勝ったように見えたが、そこまで強かったか。塔やら何やらから脱出するための存在かと思いきや、戦っても強かった。これは完全に「五軍」に入ってないな……。


 こう書くと全然面白くなかったかのようだが、基本的にこちらも過去作の貯金があるので、「おっ、またあいつやってるよ」「今回は大活躍してるよ」などとニヤニヤしながら観ておった。このあたり、シリーズものの強みですね。『ブレイキング・ドーン Part 2』でやっとちょっと面白くなったけど、その頃には面白くなさの貯金が積み上がり過ぎていた『トワイライト』シリーズとは全く逆のパターンですが……。


 ラスト、やっとこさホビット庄へと帰り、役者もバトンタッチ。財宝はいくら取られてもいいけど、家具や調度品は大事にしたい、というこの感覚こそがホビットであり、やがては世界を救うのだ……。この予定調和感を経て、また『指輪物語』を見直したくなるのであった。