”それは父母の味"『祝宴!シェフ』


 台湾映画!


 父親に「神」と呼ばれた宴席料理人を持つシャオワン。料理を嫌い、モデルを夢見て家を飛び出したが、借金を背負って故郷に戻ることに。一方、父の亡き後、店は没落し、残った母も宴席で大失態をやらかして借金まみれになっていた。借金取りから逃げた先で、新しい店を始めた二人だったが……。


 監督の前作『ラブ・ゴーゴー』は昔、なんか評判が良かったよなあ……。もう十年以上前だが、それ以来の新作だそう。


 それぞれ多額の借金を背負った母娘が、伝説の料理人だった父の跡を継いで店を始める。娘は才能こそあるがモデル志望で料理はやる気なし、母はその気こそあれど才能はなくレシピがなければどうにもならず……。しかし、そんな二人の元にファンや借金取り、料理ドクターなどが集い、運命の巡り合わせによって少しずつかつての父のレシピが蘇っていく。
 借金返済のために、テレビにも放送される料理人対決に出演することになるのだが、かつて父のライバルであった料理人も登場。頂上決戦が幕を開ける。


 料理対決要素ありということで、観る前はもっとチャウ・シンチーの『食神』っぽいかな、と思ったが、似ているのは審査員のオーバーなリアクションぐらい。カンフー映画のパロディじゃないから当然だが。それゆえ、特訓シーンがないのがちょっと物足りない。特に練習した様子もなく、割となんとなく美味しい料理が出来てしまうからな。母親ももっと絶望的にダメかと思いきや、ビーフンは美味しく作ってしまうし。
 しかし、料理が皆美味しそうで、びっくりしてしまったね。終盤は木の枝に突き刺したようなトリッキーな代物も出てくるのだが、シンプルな料理こそ美しく撮ってあって、非常に画面に映える。一番大事なところを丁寧にやっている映画なのだよね。
 長めの上映時間ながら、家族関係と師弟関係を中心に人物描写もしっかりやっているし、伏線通りの展開になっていくのだが、飽きさせない。仇役も含めて憎めないし、料理ドクターが敵側についてしまう展開でも憎しみは生まれず、ただただスポーツマンシップ的にさわやかに……!


 トマトと卵炒めは、台湾では母の味だそうだが、うちでも母親が『喜劇王』で観て以来作るようになったよ。自分でも最近作ってます。そんなこんなもあって感動。料理が後半に進むに連れて地味な家庭料理になっていくあたりは、『美味しんぼ』でもよくある定番パターン。


 そしてその丁寧さと裏腹に、ギャグは不条理そのもので、母親の踊りも、召喚獣も、料理ドクターの変な歌も意味が全くわからない! しかしそれもまた良しだ……。主演の女の子の、確かにモデルやアイドルとして売れるには若干垢抜けない、人好きする雰囲気も絶妙。


 観たらお腹の減る映画だが、満足度高しでした。

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