”繰り返す朝の向こうに”『ハウンター』


 未体験ゾーンの映画たち2014、六本目!


 15歳の少女リサは、自分が幾度も同じ朝を繰り返していることに気づいた。何度も繰り返される会話、同じ朝食……。だが、両親と弟はそのことをまったく疑問に思っていない。一人、謎を解き明かそうとする彼女に突きつけられる、不気味な警告。そして、家の中に現れる幻の少女の正体とは……。


 『スプライス』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110118/1295315427)以来の、ヴィンチェンゾ・ナタリ監督の新作。監督の映画は『ナッシング』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110604/1307158310)以外は傑作だと思っているのだが、今回はどうかと言うと……。


 舞台は80年代……ということで、うわっ、いきなり得意の未来的ガジェットを捨ててきたのか……と驚き。主人公アビゲイル・ブレスリン(以下アビちゃん)とその家族は、同じ一日を何度も繰り返している……これもSFじゃなくて、オカルト設定だそうである。彼女らはみな幽霊で、かつて殺人鬼によって殺され、その魂だけが囚われて、殺された同じ日を繰り返し続けているのだ。なぜアビちゃんだけが目覚めたかというと、それは現代で今まさに起きようとしている次の殺人に関係していて……。


 SFにしてたら『ミッション8ミニッツ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111104/1320331717)みたいな話になってたかな。ほどほどにトリッキーで、どっかで見たような話で、監督の得意な閉鎖状況ものでもあるけど、決して得意ではないオカルトでもある……ということで、色々と悪条件が揃っていた感じ。
 デジタルで撮影した80年代の幽霊たちはいかにもCGでござい!という霧に囲まれて、それ以前の年代の人らも含めてちーとも古い感じがない。その点では『死霊館』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20131102/1383390814)あたりの方が上だな。舞台が現代に戻ってipadなんか出てきたらちょっとホッとしてしまった……。


 殺人犯はちょっと若いランス・ヘンリクセンのような顔をしていて、ロリコン気味で少女とその家族を狙って殺しているあたり、『エルム街の悪夢』にも似てる……と思ったら、ラストの決着の付け方がオマージュっぽかったですね。その前に見た『チェインド』と合わせて、殺人が趣味の豚野郎の映画を立て続けに観てしまったよ。


 悪くはないのだけれど少々締まりのない映画で、アビちゃんの活躍でもっていた感あり。ただシナリオ的には、唯一彼女だけが犯人に対抗出来る存在、すなわち主役であるということが貫徹されていたので、彼女ありきの企画だったのかもね。


 さてさて、今年の「未体験ゾーンの映画たち」、結局六本観て、二勝二敗二引き分けで決着しました。まあまあのアベレージじゃないかね。バーホーベンもそもそも企画自体が苦しかっただけだし……。


『MUD』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140219/1392725316)……◯
『悪魔の秘め事』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140305/1394022990)……×
『母なる復讐』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140307/1394166193)……△
『トリック』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140404/1396604594)……×
『チェインド』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140421/1398003197)……◯
『ハウンター』……△


 クリスチャン・スレーターやドルフさんも観たかったなあ。

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